“過去最高”だった駒沢の一戦。世界的プレーヤーに挑んだ大卒ルーキー

埼玉パナソニックワイルドナイツ 萩原選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】

リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)と埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)の一戦は、ニュージーランド代表“オールブラックス”で89キャップのレジェンドであるTJ・ペレナラと、初先発のルーキー萩原周という9番同士のマッチアップとなった。

明治大学から2024年に加入した萩原にとっては想定外の初先発デビューだった。埼玉WKは、第2節までスタメンを張った小山大輝が欠場となるスクランブル。いくつかの選択肢がある中で、ロビー・ディーンズ監督は萩原を指名した。

「プロでの初先発がいきなりやってくるとは思わなかった。オフ明けに先発と言われて、この1週間、23年間の人生で最大の緊張を味わった」

しかも、マッチアップしたのは、萩原自身の憧れだったニュージーランド代表の“TJ”。「TJ・ペレナラ選手は、自分が学生時代から目標として挙げていたプレーヤー。仕掛け、キック、パスのすべてが一流。誰もが知っている選手とプレーすることに緊張した。ファーストプレーで自分のパスがとおったときに緊張はほぐれたが、細かいミスも多く、反省点も多かった」。

ゲームはBR東京がペナルティゴールで先制したが、埼玉WKが竹山晃暉のトライで逆転すると得点を積み上げていく。それでも、9対20で迎えた後半7分に見せ場を作ったのは“TJ”だった。一瞬のスキを突いてボールを持ち出すと、迫り来る相手をハンドオフでいなして華麗なパス。技ありのプレーで池田悠希のトライをアシストしてみせた。「フォワードがモメンタムを生み出してくれたので、自分にスペースが生まれた。あのようなシーンを多く作ることができればチームは成長していく」(ペレナラ)。

7点を加えたBR東京は4点差まで迫ったが、終盤に突き放されて最終的には16対39で敗戦となった。試合後、取材陣に囲まれたペレナラは「萩原選手は初先発と聞いていたが素晴らしいプレーをしていた。日本のスクラムハーフの選手たちは、世界的にも評価が高い。プレーを通じて、自分が経験してきたことを彼らに伝えていきたい。そして自分自身も彼らから学ぶことができる」とうなずいた。

この日の駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場にはリーグワンでのBR東京ホストゲーム過去最高の8,403人が来場。世界的プレーヤーと大卒ルーキーの競演は、結果以上に見ごたえのあるゲームとなった。

「日本のメディアやファンは、温かみがあって本当にリスペクトしている。日本のラグビー文化は素晴らしいと思う」(ペレナラ)。オールブラックスの名手は、スタジアム出口で待ち構えていたファンに対して笑顔でファンサービスに応じて会場を後にした。彼のピッチ内外での振る舞いは、まさにラグビーの伝道師の姿だった。

(伊藤寿学)

【©ジャパンラグビーリーグワン】

リコーブラックラムズ東京
タンバイ・マットソン ヘッドコーチ
「今日は、一部を切り取って見れば、非常に良いところがあったと思います。フィジカリティーのところは一貫性を見せてほしいと伝えていて、そこはできていました。埼玉パナソニックワイルドナイツ(以下、埼玉WK)さんが終盤に素晴らしいパフォーマンスを見せていて、彼らがなぜ成功してきているのかが分かりました。自分たちがチャンスをプレゼントするような形になり、それをしっかりと形(得点)にしたと思います。埼玉WKさんから学ぶことがたくさんありますし、そこをチームの成長につなげていきたいと思います」

──中楠一期選手を前節に引き続き10番で起用した意図はなんでしょうか?
「10番はチーム全体をコントロールするポジションです。(中楠は)まだ若い選手なのでできるだけプレー機会を与えていきたいです。彼は戦術眼もスキルも高いですが、足りないのが経験です。今季は、彼にとって非常に重要なシーズンになるでしょう。TJ(・ペレナラ)や池田(悠希)など周囲に能力の高い選手がいるので、(中楠を継続的に起用することで)シーズン終盤に向けてチームがどんどん良くなっていくと感じています。それが一番です」

──リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)が駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場でのリーグワンホストゲーム開催において過去最高8,403人の入場者数となりました。世田谷のチームとしての存在感が増しているように感じるが、いかがでしょうか?
「世田谷を代表したいという思いが強いです。私自身は、東京の中で一番良い区だと思っています。東京でベストなラグビーチームになりたいと思います。世田谷にはプロフェッショナルスポーツがあまりないですよね。私たちが、区民にとって一番好きなプロチームになれるチャンスがあると思います。コミュニティーとの関係性が強いほうが良いパフォーマンスを発揮できる。世田谷は素晴らしい街ですし、世田谷を代表するチームになりたいと思います」

リコーブラックラムズ東京
武井日向キャプテン
「ハードワークやフィジカリティーのところで一貫性は見えてきていると思います。ただ、埼玉WKさんにチャンスを与え過ぎてしまって、相手はそこできっちりと得点につなげていったと思います。そういう部分はチーム全体でレビューしていきたいと思います」

──後半まで食らいついていた中で足りなかったものは何だと思いますか?
「いろいろな要因があると思いますが、23人全員で、誰が入っても同じプレーをしなければいけない。チームとして全体のレベルを上げていく必要があると思います。マインドセットのところで、食らい付いていこう、我慢しようというよりも、自分たちが倒しにいこうという気持ちで臨んでいたので、そのマインドセットを80分間、もつべきだったと思いました」

【©ジャパンラグビーリーグワン】

埼玉パナソニックワイルドナイツ
金沢篤バックスコーチ
「ロビー・ディーンズ監督が家族の都合でいないので私が会見を務めさせていただきます。リーグワンの3節目になってタフなゲームがずっと続くというのは分かっていますし、やはりそういうゲームだったと思います。後半に自分たちの流れを引き寄せたのは、選手たちの力であると感じています」

──ロビー・ディーンズ監督とはどんな準備をしてきましたか?
「週の始めはロビーさんが(練習に)いまして、途中からチームを離れました。木曜日からは、選手の時間(キャプテンズランなど選手主導で準備を進めることが多い)になっていくので、坂手(淳史)を筆頭に良い準備ができていましたし、それもチームの成熟だと感じています」

──ハーフタイムの指示はどういうものでしたか?
「相手ではなく、自分たちのプレーにフォーカスしていくことに集中しました。ブレイクダウンのところで、自分たちからフラストレーションを感じるのではなく、自分たちで打開していくことを伝えました」

埼玉パナソニックワイルドナイツ
坂手淳史キャプテン
「前半は自分たちにフォーカスし切れずにフラストレーションが溜まってしまいました。もっと自分たちのプレーや、やりたいことに対してフォーカスすることが必要でした。後半はそこが改善できたと思います。次に向けて、またみんなで良い準備をしていきたいと思います」

──今季、接戦になることが多い要因について、どう感じていますか?
「ゲームによって異なると思いますが、ブレイクダウンの寄り(のスピードが原因)かなと思います。前半はそれが遅かったですし、自分たちらしくないところがあって、レフリーがゲームに対して入ってきて、ペナルティを重ねてしまいました。ブレイクダウンはBR東京さんの強みであるというメンタリティーを感じましたし、しつこさがありました。チームそれぞれに強みがありますし、自分たちにも強みがあります。いろいろなチームがカラーを出し合っていくのがリーグワンだと思うので、その意味ではこれからもっと各チームの色が出てくると思います」

──9番で萩原周選手が初先発しましたが、どんな声を掛けたのでしょうか?
「思いも寄らない先発だったと思うので、1週間を通じてむちゃくちゃ緊張していました。ただ、しっかりとトレーニングで準備をしていましたし、チームに慣れていって、今日のゲームを迎えました。彼の準備は良かったと思います。9番ということで10番の(山沢)京平と一緒にゲームをコントロールする立場になるのですが、僕からは『自信をもって、思い切ってプレーしてくれ』と伝えました」
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