箱根駅伝を主催する関東学連に、戸塚中継所を提供するトヨタの販売店 「箱根駅伝」知られざる当日の舞台裏に迫る

柴山高宏(スリーライト)
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提供:トヨタ自動車

「箱根駅伝を経て成長するのは、選手だけではない」

ウエインズトヨタ神奈川の松本俊一 【提供写真】

 優勝争いとシード権をめぐる争いが熱を帯びてくる8区。21.4kmのコースのラスト5km付近で選手を待ち受けているのが、「遊行寺の坂」だ。標高差30m、約800mに及ぶ上りの急坂は復路屈指の難所と言われ、さまざまなドラマを生み出してきた。

 8区を駆け抜けた選手が9区のランナーにたすきをつなぐ「戸塚中継所」の場所を提供しているのが、神奈川県内で161店舗を運営するトヨタ自動車の販売会社・ウエインズトヨタ神奈川だ。戸塚中継所の場所を提供する店舗では、大会関係者の休憩所兼事務拠点として、例年開放している。

「子どもの頃から家族で観ていた箱根駅伝に裏方として携わることができるなんて、思ってもみなかった。学生スポーツ屈指の人気を誇る大会をサポートできることに喜びを感じるし、箱根駅伝が好きな私にとっては趣味の延長でもある。仕事という意識はなく、楽しくやらせてもらっていた」

 こう語るのは、箱根駅伝当日に戸塚中継所の場所を提供する店舗で準備に携わってきた松本俊一だ。

 箱根駅伝当日の、ウエインズトヨタ神奈川の社員の動きを紹介しよう。選手が往路を走る1月2日は、11時頃に店舗を開放している。日本テレビと文化放送の中継に携わるスタッフが、撮影用に足場を組むためだ。かつては8時頃に店舗に入って、沿道の観客に応援グッズを配布していた。「大量に用意していたグッズが10分程度でなくなってしまうほど人気」(松本)だったが、現在は休止している。

 選手が復路を走る1月3日は、6時頃に店舗を開放。関東学連の学連幹事が、8区と9区の中継地点になる「戸塚中継所」を開設するための準備を進めていく。選手の控え場所となる敷地内の工場にはコンクリートパネルを敷き、その上にダンボールとシートを重ねている。松本らウエインズトヨタ神奈川の社員は直前まで付近の清掃活動を行い、11時頃に通り過ぎる選手と、選手を支えるチームスタッフを見守っている。

店舗内の工場を選手の控え場所として開放している 【提供写真】

「箱根駅伝を経て成長するのは、出場する選手だけではない。私は戸塚中継所を担当する関東学連の学連幹事が、学年を重ねるごとに成長していく様を目の当たりにしてきた。最初は先輩の陰に隠れていた学生が、上級生になってリーダーとなり、戸塚中継所を仕切る姿を見ると、『あの子、立派になったな』と親心にも近い思いを抱き、感慨深くなる」(松本)

 松本とともに第91回大会から戸塚中継所の準備に携わり、今年も携わる予定の石綿藤義は、「この仕事は総務である私にとって、使命に近いものを感じている。いつまでも箱根駅伝が変わることなく開催されるよう、沿道のトヨタの販売店の社員として協力していきたい。定年を迎えるまでやり続けたいが、いつか箱根駅伝が好きな社員にこの仕事を引き継ぎたいと思っている」という。

ウエインズトヨタ神奈川の石綿藤義 【提供写真】

箱根駅伝に抱く、社員の思い

「箱根駅伝が近付くと『今年も“あれ”、配るんだよね?』とお客様から寄せられる問い合わせの声が、販売店から本社にいる私まであがってくる」

 そう語るのは、第97回大会から箱根駅伝の応援グッズの配布に携わる、福永加奈子だ。

ウエインズトヨタ神奈川の福永加奈子 【提供写真】

 箱根駅伝のコース沿いにあるウエインズトヨタ神奈川の7つの店舗では、「私たちは『第101回箱根駅伝』を応援しています。」と書かれた横断幕に応援メッセージを書いた方に先着で、応援グッズ(タオル)を無料で配布している。コロナ禍の影響で2022年から中止していたが、前回の第100回大会を機に復活。「お客様の反響から、箱根駅伝に対する熱い思いが伝わってくる」という。

「昔、往路の沿道にある店舗で、朝からお客様に飲み物を配布していたことがある。そのとき、はじめて見た、店舗の前を駆け抜ける選手のあまりのスピードに、驚いてしまった。そして、真剣なまなざしで前を見据えて走る姿に、私はこれまで箱根駅伝にあまり関心がなかったはずなのに、思わず涙がこみ上げ、感動したことを覚えている」(福永)

 長年、戸塚中継所の開設に向けた準備に携わってきた石綿と松本に、応援グッズの配布に携わる福永。ウエインズトヨタ神奈川の社員が、今年も箱根駅伝を影ながら支えている。

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