【UFC】UFC月間レポート:2024年11月

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【UFC】

サンクスギビングの週末にはオクタゴンでのアクションがなかったにもかかわらず、11月のカレンダーを振り返れば、4回のイベントがあった。その中にはエドモントンやマカオへの再訪や、年に1回、マディソン・スクエア・ガーデンで実施するペイ・パー・ビューイベントが含まれている。

そして、そのすべてのイベントで、アスリートたちが魅せてくれた。

11月のベストパフォーマンスに挙げられた下記の4件は、4回のイベントからひとつずつ選ばれている。それはつまり、UFCでは1年を通して毎週のように興奮のパフォーマンスが展開されることの現れであり、1年の最後に選定される栄誉の賞に向けて、また新たな候補が生まれたということでもある。

11月を彩った傑出したパフォーマンスは以下の通りだ。

ブレイクアウト・パフォーマンス:カルロス・プラチス
カルロス・プラチスは今11月初めに自身初のメインイベントに挑む前から、すでにUFC新人賞の有力候補として注目を集めていた。それもそのはず、これまでオクタゴンに3度足を踏み入れ、いずれもテクニカルノックアウトで相手を圧倒してきたからだ。

そして、11月に開催された2つ目のイベントに出場したプラチスは、メインカードでニール・マグニーと対戦。キャリアを測るリトマス試験紙とも言えるこの試合で、“Fighting Nerds(ファイティング・ナーズ)”の顔でもあるプラチスは見事なパフォーマンスを披露し、新人賞争いのトップランナーとして名を刻むとともに、ウェルター級のトップ15入りを果たした。

試合の大半でプラチスはマグニーをフェンス際に追い詰め、抜群の破壊力を誇る左手を放つ絶好のタイミングを伺っていた。一方、デンバーを拠点とするベテランのマグニーは、巧みな動きでブラジル出身のプラチスを守勢に立たせ、試合を拮抗させる粘り強い戦いを見せた。しかし、試合終盤にプラチスがマグニーを捕らえ、再びフェンス際に追い詰め始る。

強烈な左フックがマグニーのこめかみに直撃し、ベテランファイターは顔からマットに崩れ落ちた。この一撃で、“ザ・ナイトメア”ことプラチスは、ウェルター級戦線における危険な存在としての地位を強烈に印象付けた。

スポーツや芸術の世界には、際立った「何か」を持つ者がいる。集団から頭一つ抜け出し、その存在が特別であることを感じさせる、言葉では表しきれない資質を備えた人間だ。プラチスはまさにその1人と言える。彼はカリスマ性と飄々(ひょうひょう)とした佇まいを兼ね備え、オクタゴン内では計り知れない危険性を秘めながらも、どこか余裕を漂わせている。その理由は明白だ。プラチスは、自身のロケットランチャーのような左手が一度でも相手を捉えれば、それだけで勝利を手にできるという揺るぎない信念を持っている。

これまでのUFCキャリアで、プラチスの信念はすでに4度も証明されている。たとえば、右側腹部を狙った膝蹴りでチャールズ・ラドキを倒した例があるように、そのすべてが左手によるわけではないものの、31歳のプラチスはこれまでの勝利すべてでパフォーマンス・オブ・ザ・ナイトを獲得。特に今回のマグニー戦では冷静かつ効率的な戦いぶりで勝利を収め、2年目を迎える来シーズンも注目すべき選手であることを知らしめた。

特別賞:ユーセフ・ザラル、マンスール・アブドゥル・マリク、オーバン・エリオット、ジャン・ミンヤン

サブミッション・オブ・ザ・マンス:デイモン・ジャクソンにタップさせたジム・ミラー(UFC 309)
焦ってギロチンチョークを仕かけるものの、仕留めきれずに逆に不利なポジションへと追い込まれる。そんな光景は、ほぼ毎週のように見られる。

偉大なファイターとして名高いダスティン・ポワリエは、ギロチンチョークへの偏愛ぶりから、「Don’t Be Silly, Jump the Gilly(ギロチンを仕かけるからには必ず決めろ)」というフレーズがSNSでおなじみのコメントとして定着している。それだけでなく、「水分補給を忘れるな」という注意喚起を頻繁に投稿することでも有名だ。誰かがギロチンを狙って失敗するたび、ファンたちはポワリエをタグ付けしてそのシーンを投稿し、逆に成功すれば、“ザ・ダイヤモンド”ことポワリエ自らがこの定番フレーズや称賛の言葉を添えてコメントするのが恒例となっている。

UFC 309のプレリムに登場したジム・ミラーは、試合中盤で手本のようなギロチンチョークを披露。デイモン・ジャクソンの首を確実に捕らえ、タップを奪い、UFCでの自己最多記録を更新する27勝目を挙げた。

第1ラウンドの半ば、ジャクソンがミラーの左パンチを避けながらシングルレッグを狙おうと低姿勢に入る。しかし、ライト級のベテランであるミラーは即座に反応。巧みに左腕をジャクソンの顎下に滑り込ませると、両手をつなぎ、クローズドガードの体勢へと移行した。この時点で“Fortis MMA(フォーティスMMA)”所属のジャクソンは完全に捕らえられ、キャンバス上で動けない状態に陥る。数秒後、脱出を断念したジャクソンはタップを余儀なくされた。

このフィニッシュがサブミッション・オブ・ザ・マンスとして際立った理由は、大きく分けて2つある。

まずは、技術的な観点から見た完成度の高さ。ギロチンチョークを狙って失敗する場面は繰り返し見られるが、ミラーがこの技を仕かけた瞬間、多くの人がジャクソンは逃げられないと確信したことだろう。それほどまでに、41歳のミラーは卓越した技術を持ち合わせている。ミラーが成功の可能性が低い技を無理に仕かけることはめったになく、これまでオクタゴンでキムラの成功例はないものの、ギロチンチョークは3度成功させている。今回の試合でも、自信がなければギロチンを狙うことすらしなかったに違いない。

もうひとつは、ミラーという選手が持つ圧倒的な魅力だ。UFC史上最多試合出場数を誇るミラーは、まさにプロフェッショナルの鏡と言えよう。今年のUFC 300では惜しくも敗北を喫したものの、わずかな期間で再びオクタゴンに立ち、これほど見事なパフォーマンスで復活を果たしたことは、多くのファンにとって喜ばしい瞬間となった。

先月は他にも質の高いサブミッションが数多く披露されたが、最も記憶に残るフィニッシュは、間違いなくミラーが決めたこの1本だった。

特別賞:ユーセフ・ザラル vs. ジャック・ショア、シャルル・ジョーデイン vs. ビクター・ヘンリー、ジャスミン・ジャスダビシアス vs. アリアネ・ダ・シウバ、トレーシアン・ゴア vs. アントニオ・トロコリ、ダモン・ブラックシア vs. コーディ・ステーマン、ライニアー・デ・リダー vs. ジェラルド・マーシャート、ガブリエラ・フェルナンデス vs. ワン・ツォン

ノックアウト・オブ・ザ・マンス:フォン・シャオツァンを仕留めたシー・ミン(UFC ファイトナイト・マカオ)
パフォーマンの月間賞を決定する際には、その背景や状況が大きな影響を及ぼすことが多い。たとえば、タイトル戦はノンタイトルマッチより注目されやすい傾向がある。しかし、今回のシー・ミンのように、試合内容そのものが観衆を魅了したことで、11月のノックアウト・オブ・ザ・マンスに選ばれるということもある。

ROAD TO UFC(ロード・トゥ・UFC)のストロー級決勝戦で、フォン・シャオツァンと対戦したミンは、最初の2ラウンドを終えた時点で、3人のジャッジのうち2人に20-18と判定され、明確な劣勢だった。この状況でUFC契約を勝ち取るためには、どうしてもフィニッシュが必要だ。しかし、試合開始からの10分にわたって、ミンは長身でリーチのあるシャオツァンとの距離を縮めて有効な攻撃を繰り出すことができずに、苦戦していた。

セコンドに「フィニッシュを狙え」と指示を受けたミンは、第3ラウンド序盤で低い体勢からのフェイントを挟み、一瞬の隙を突いて放った右ハイキックが見事に炸裂。この一撃が正確に首元を捉え、わずか数秒で22歳のシャオツァンをキャンバスに沈めた。

この瞬間、スコアで劣勢に立たされていたミンは、一発で形勢を逆転。鮮やかなフィニッシュで試合を終わらせ、UFCロースター入りを果たした。

近年、ハイキックによるKOは注目を集めている。レオン・エドワーズとジャスティン・ゲイジーが2年連続でソルトレイクシティのイベントでハイキックを決めたことや、マカオでミンがフィニッシュを飾った数試合後にムスリム・サリコフがソン・ケナンにスピニングヒールキックを決めた試合などが記憶に新しい。それでも、今回のミンのハイキックは、その背景とドラマ性から特に際立っていた。

試合前には間違いなくアンダードッグと見られ、スコアカードでも劣勢に立たされ、有効な攻撃を仕かける方法を模索していたミンが、数秒後には試合を終わらせて勝利をつかみ、UFC契約を勝ち取る――その活躍は、まさに劇的と言える。

特別賞:ダスティン・シュトルツフス vs. マルク・アンドレ・バリオー、プラチス vs. ニール・マグニー、エリオット vs. バジル・ハフェズ、ラミズ・ブラヒマイ vs. ミッキー・ガル、シャオ・ロン vs. クアン・レー、チェ・ドンフン vs. キルー・シング・サホタ、ムスリム・サリコフ vs. ソン・ケナン

ファイト・オブ・ザ・マンス:ローズ・ナマユナスを退けたエリン・ブランチフィールド(UFCファイトナイト・エドモントン)
現地の特等席からじっと見ていれば、この試合がゆっくりと変わっていくのが分かったはずだ。

ナマユナスの蹴り出しは良かった。持ち味のキレのある動きとスピードを生かして一撃離脱を繰り返し、ブランチフィールドを寄せつけることなく、消耗戦になるのを避けていた。しかし、時間が過ぎていく中で、プレッシャーをかけ続けるブランチフィールドは攻撃に転じる機会をずっと狙っていた。流れが変わったように感じられたのは、第2ラウンドの後半になってからだ。

試合が進むにつれ、ニュージャージー出身のブランチフィールドが少しずつ優勢になっていく。ブランチフィールドがより多くのショットを当て、ナマユナスに後退させ、クリンチやカンバスでもうまく戦いを展開していくと、やがては完全にコントロールを握ったように見えてくる。
 
1年後か2年後、人々はこの試合を振り返り、ブランチフィールドの成長と、ファイターとしての進歩にとって重要な1戦だったと評するだろう。ブランチフィールドは以前、自分には5ラウンドマッチが有利だと考えていた。それは、今回の試合が5ラウンドだったのが彼女の有利に働いたのと同じ理由だ。

彼女を妨げるものなどないかのようだ。猛烈なスピードで戦うファイターというわけではないが、常に一定したプレッシャーをかけて前進するその動きに対応するのは骨が折れる。打撃をうまく受ける能力やクリンチワーク、急成長していくストライキングと相まって“コールド・ブラッデッド”ことブランチフィールドはオクタゴンで対峙するのが非常に手強い選手になりつつある。

ナマユナスを倒したことで、タイトル争いにおけるブランチフィールドの立場は強化された。2025年にはまた注目の試合が組まれるはずだ。それが誰になるにしろ、ブランチフィールドの対戦相手は5ラウンドマッチを避けたいはずだ。何しろ、ニュージャージーからやってきたファイターがエドモントンで、まさにそういったバトルがお手の物であることを示したばかりなのだから。

特別賞:デビッド・オナマ vs. ロベルト・ロメロ、マウリシオ・ルフィ vs. ハメス・ヨントップ
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