残り100ヤード、何番で打ってる? 52度でフルスイングしている人は今すぐやめて!

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吉本巧のゴルフギア教室 第13回

毎年たくさんの新しいギアがデビューするゴルフマーケットで自分に合った一品を選ぶのは至難の業。噂に流され手を出したら大失敗! という話もよく耳にする。安い買い物ではないだけに、セレクトミスは絶対避けたいところだ。こんな状況で役に立つのは正しい知識。道具はもちろんゴルフのテクニックについて正しく理解していれば惑わされない。ということで生まれた、ゴルフのメカニズムに精通したコーチ・吉本巧がギア目線から森羅万象を解説するこの企画。今回のテーマは“11番アイアンのミステリー”。いまのアイアンセットは1本足りないというお話です。
写真/ゴルフサプリ編集部

バランスが重いウエッジはフルスイングするように作られていない

みなさんは100ヤード打つ時にどのクラブを使っていますか? また、フルスイングしていますか、それともコントロールショットですか? 距離で言えば使用クラブはピッチングウエッジ(以下PW)やロフト52度のウエッジといったところでしょうか。PWのフルショットならちょっと大きいので小さめに振る。52度ならフルスイングする人も多いと思います。

実はこれ、どちらも良くありません。PWでコントロールショットは距離が合わせづらいからだけなのでまだマシですが、52度でのフルショットは絶対にあり得ません。なぜなら、間違いなくスイングを悪くするからです。では、その理由をお話しましょう。

本人は気づかないのですが、PW以外のウエッジが原因でアイアンが当たらなくなっているアマチュアゴルファーがたくさんいます。ウエッジは基本的にバランスが重いクラブ。例えばアイアンセット(PWを含む)がD1なら、ロフト52度や56度のウエッジはおおむねD2やD3です。
なぜバランスが重いかというと、クラブを短く持って振っても対応できるようにしたいから。D2、D3のウェッジを短く持ったらD1になります。スイングバランスが他のアイアンと同じになるようにしているのです。逆に言うと、そもそもウエッジは目一杯長く持ってフルスイングするようには作られていないということでもあります。

多くのゴルファーはPW以下のウェッジは、別売りの単品を入れていますが、それを目一杯長く持ってフルスイングすると、アイアンセットより重いバランスのクラブでフルスイングすることになります。そのままセットのアイアンを振れば当然軽いですから、知らず知らずに振り回してしまう。そうやって徐々にスイングが蝕まれ、アイアンが当たらなくなるんです。

これは思った以上にスイングに悪影響を及ぼすので、私はずっと「ウェッジではフルスイングしちゃダメ!」「長く持っちゃダメ!」と言い続けています。

同じ感じでドライバーだけバランスを重くしている人もいますが、これもよくありません。ドライバーだけ独立して考えずフェアウェイウッドと同じ流れにしたい。要は末端のドライバーだけバランスを変えたり、末端のウェッジでフルスイングし続けると、他のクラブのスイングがボロボロになるということ。ひとまずは、単品ウエッジのフルスイングはNGと心得てください。
同じようにウェッジと呼ばれているのに、なぜPWならフルスイングしていいかというと、セットアイアンの延長上にあるクラブだから。通常アイアンセットはPWまでですが、その流れで言うとPWはウェッジの分類ではなく10番アイアンとでも呼ぶべきアイアンの一種なのです。

ですが、そのPWも最近はロフトが立っていて43~45度、寝ていても46度くらいです。そうなると、その下のウェッジが52度の場合、6度以上のギャップができますから、その間にフルスイングできるアイアンがもう1本必要です。私はこれを11番アイアンと呼んでいますが、いずれにしてもロフト48~49度程度で、アイアンセットと同じスペックのクラブが必要になるんです。

ただし、ここで気をつけなければいけないのはロフト48~49度でバランスが重い単品のウエッジ。アイアンセットのバランスがD1の場合、バランスがD2、D3のものをフルスイングすると、やはりスイングがおかしくなる。見た目で言うとネックの長いモデルには要注意です。

単品ウエッジのバンスがセットのアイアンより大きいこともスイングを崩す原因になります。バンスが大きいとボールの下を潜ってロフトが寝やすくなります。もちろんバンスはそのためにあるのですが、48~49度がハイバンスになると、ボールが上がるだけになって距離が出ません。実はこうなっているアマチュアゴルファーもたくさんいます。単品のウエッジでショートするのはスイングではなくバンスのせいかもしれないんです。

ということで、本来あるべきアイアンのセットアップは、仮に5番アイアンからなら10番(PW)までは一般的なアイアンセットでバランスはD1程度が目安。この下に11番(48~49度)を入れるならバランスは同じD1にしてバンスも少なめ(8度以下が目安)にする。こうすればPWの一つ下のクラブまでフルスイングしてもOKになります。

ドライバーのヘッドスピードが40m/s前後の平均的なアマチュアゴルファーならフルスイングで100~110ヤード打てる感じになるはず。もちろんスイングが悪くなるリスクもありません。

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また、このセットアップなら52度、56度あたりのバランスはD2、D3、バンスは10~12度でいい。目一杯長く持ってフルスイングする必要がなくなるからです。どうしても52度でフルスイングしたいなら、バランスはD1でバンスを少なめにするしかありませんが、それではウェッジの意味がなくなるのでおすすめしません。

私が11番と呼ぶアイアンはとても有能で、非常に使い勝手のいいクラブだということがわかっていただたかと思います。ですが、意外や意外、メーカーは軽めのバランスとローバンスの11番にあたるクラブを出していません。なぜなら需要がないから。アマチュアの方はその重要さに気づいていないため作ったところで売れないのです。

ですから、とりあえずはPWのロフトや単品のウエッジをアジャストするといった方法で対応するしかありません。11番アイアンがないのは、ゴルフ界のミステリーなんです。

アイアンは10ヤード刻みでガチガチに固めるのが最強のセッティングだと私は考えていますが、アマチュゴルファーにとっては一番大事な100ヤードくらいを正しく打てる真っ当なアイアンがないのが現状。ですから「100ヤードを打つクラブがない」というお悩みはごもっとも。本来アイアンセットは11番まであっていいものなんです。
吉本巧
よしもと・たくみ ゴルフ修行のため14歳から単身渡米。南フロリダ大在学中は全米を転戦するなど11年間にわたって選手とコーチを経験したのち、日米の20年の経験から吉本理論を構築。プロやアマチュアのスイングコーチをはじめ、フィジカルトレーナー、プロツアーキャディー、メンタルコーチング、クラブフィッティングアドバイザーなども務める。現在は東京・表参道の「表参道ゴルフアカデミー」で指導中。「吉本巧のYouTubeゴルフ大学」も人気。

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