オーストラリア代表選手たちが見た日本代表の強さ 三笘薫は「世界最高のドリブラーだ」

舩木渉

両国のGKが最終予選の鍵に?

日本代表の新時代を象徴するGK鈴木彩艶がアジア最終予選突破の鍵となるか 【Photo by Masashi Hara/Getty Images】

 3年前に同じ埼玉スタジアム2002で行われたカタールW杯アジア最終予選の日本代表戦でゴールを挙げていたアイディン・フルスティッチにも話を聞いた。オーストラリア代表の10番を背負った28歳のMFは、旧友たちとの再会を喜びつつ、日豪両国の確実なレベルアップを感じたという。

「このスタジアムにはいい思い出があるし、日本代表にはたくさん友だちがいたから、僕にとっては特別な試合だった。素晴らしいサポーター、素晴らしい雰囲気、素晴らしいステージで彼らと対戦できたことを本当に嬉しく思う。

 3年前と比べて、日豪両国の選手たちを取り巻く環境はかなり変わった。特に日本代表の選手たちは非常にいい移籍を経験していて、レベルの高いクラブでプレーし、高い基準の規律を持ったチームになった。

 友だちがいるので日本代表の動向も追いかけてきたけど、やっぱりすごくいいサッカーをしているね。堂安(律)と板倉(滉)はフローニンゲン時代のチームメイトで、僕は彼らがオランダに来たばかりの頃の最初の友だちの1人だった。

(鎌田)大地と(長谷部)誠(コーチ)はフランクフルトで一緒にプレーして、UEFAヨーロッパリーグ優勝をはじめとしたいい思い出がたくさんある。さっき誠とも裏で会って少し話すことができたけど、やっぱり彼も大地も素晴らしい人間性を持った選手で、いい関係を築けているのは嬉しい。僕は彼らと別の道を歩むことになって、『これもサッカーだな』と思うけど、みんな年齢を重ねて、実際のところ今の彼らがどんなステージでプレーしているかは誰もが知っているよね」

 かつてフランクフルトでプレーしていたフルスティッチは、現在イタリア・セリエBのサレルニターナに所属している。そんな彼が日豪サッカー成長の証明として挙げたのは、今回の一戦に先発したGK2人の名前だった。

「お互いの若いGKは素晴らしい成長を見せていると思う。ジョー(・ガウチ)は今月の2試合でオーストラリア代表において非常に大きな一歩を踏み出した。『ザイオン・スズキ』の名前を3年前の対戦の時は知らなかったけど、鈴木(彩艶)はベルギーで素晴らしい仕事をして、自らの資質を証明してセリエAへ移籍してきた。

 ジョーも今はアストン・ヴィラという素晴らしいビッグクラブで頑張っているし、彼らの存在は両国がアジア最終予選でトップを目指すにあたって鍵になってくると思う。3年前と違って今日はゴールを決められなかったから、僕にとっては鈴木からゴールを奪うのが次の挑戦だ」

「日本代表は世界で最も重要視される代表チーム」

Jリーグで長くプレーしてきたミッチェル・デュークは日本代表を「世界で最も重要視される代表チーム」と絶賛した 【Photo by Koji Watanabe/Getty Images】

“NIPPON: FOREVER IN OUR SHADOW”の横断幕が掲げられてから約15年――。日本代表はあれから一度もオーストラリア代表に敗れておらず、毎回互角かそれ以上の戦いをできるようになった。今回の対戦でも“サッカルーズ”にアジアの覇権を争うライバルとしての力があることをあらためて実感させられた。

 逆にオーストラリア代表側からは、日本代表をうらやむ声も聞こえてくる。Jリーグで長くプレーしてきたミッチェル・デュークは「日本代表は今、世界で最も重要視される代表チームの1つだと思う」と語り、さらに次のように述べた。

「日本代表選手たちの動き、技術、プレーが非常に優れているのはわかっていたし、最近は明らかに多くのゴールを決めているので、自分たちとしては守備的な戦いに大きくシフトしなければならなかった」

 デュークは「相手にさほどチャンスを作らせず、自信を持って戦えた」と守備面への手応えを口にし、「10月の2試合は何としても負けないように、できるだけ多くの勝ち点を得るのが目標だった」と明かした。

 他の選手たちやポポヴィッチ監督も勝ち点1に満足し、ワールドカップ出場権獲得に望みをつなげたことに安堵(あんど)している様子もあった。日本代表としては失点し、連勝が途切れて不完全燃焼だったかもしれないが、こうした試合後のコントラストが両国の現在地を表しているのではないか。日本もオーストラリアも数多くの選手をヨーロッパなど国外へ送り出しているが、代表チームの力関係は時を経て逆転した。来年6月に予定されているアウェイゲームでは、今度こそ勝利で日本代表の真の力を見せつけたいところだ。

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著者プロフィール

1994年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学スポーツ科学部卒業。大学1年次から取材・執筆を開始し、現在はフリーランスとして活動する。世界20カ国以上での取材を経験し、単なるスポーツにとどまらないサッカーの力を世間に伝えるべく、Jリーグや日本代表を中心に海外のマイナーリーグまで幅広くカバーする。

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