私のミッション・ビジョン・バリュー2024年第4回 田平起也選手「生き方にこだわれ」

水戸ホーリーホック
チーム・協会

【ⒸMITOHOLLYHOCK】

水戸ホーリーホックでは、プロサッカークラブとして初めての試みとなるプロ選手を対象とした「社会に貢献する人材育成」「人間的成長のサポート」「プロアスリートの価値向上」を目的とするプロジェクト「Make Value Project」を実施しています。

多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。

その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。

ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針

原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。

2024年も選手・スタッフの今季策定した「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を紹介していきます。
2024年第4回は田平起也選手です。

(取材・構成 佐藤拓也)

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Q.MVVの面談はいつ頃からはじめて、どのぐらい行いましたか?
「2月からはじめて、8月に終わりました。月に1回ぐらい、約1時間の面談を5~6回行いました」

Q.自分の内面や過去を第三者に話した経験はありましたか?
「あまりなかったですけど、自分の中で自己分析をする習慣はあったので、スムーズに話はできたと思っています」

Q.自分の内面を言語化して話をする経験はどうでしたか?
「考えたことを表現する際、どういう言葉を選ぶかによって、相手への伝わり方が変わる。だから、すごく頭の中を整理することができました。そういうことも含めて、僕にとってすごく貴重な時間だったと思っています」

Q.完成したMVVを見て感じたことは?
「担当の方と一緒に考えながら作ることができたので、自分らしい言葉になったと思っています」

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Q.まず、ミッションについて聞かせてください。「つながりを大切にする」。この言葉にはどのような思いが込められていますか?
「僕はセレッソ大阪からいわてグルージャ盛岡に移籍して、3年プレーしました。岩手の地でいろんな人と出会いました。そして、自分がしんどい時にサポートしてくれる人や声をかけてくれる人がたくさんいたんです。そこで人のつながりの大切さを感じました。それから自分の人生において、つながりを大事にしたいと考えるようになりました」

Q.サポートしてくれた方はクラブの内部の方ですか?
「クラブ内の人もいましたし、チームメイトや元チームメイトもいます。さらには地域の方々ですね。いろんな方にサポートしていただきましたし、『応援してるよ』という声をかけていただくと、本当にその人たちのために頑張ろうと思えるんです」

Q.今もその時の思いが支えになっている?
「昨年、契約満了となって岩手を離れることが決まった時、今後どうやって生きていくかを考えるタイミングがありました。その時にいろんな先輩に相談をして、日頃から応援してくれている方々のためにも、もう一度頑張ろうと思うことができました。今の自分があるのはそういった方々のおかげです」

Q.周りからそういう声をかけていただけるということは、田平選手自身が周りに対していい接し方をしているからだと思いますよ。
「何かを与えてもらうというより、まずは相手がしてほしいと思っていることをすることが大事だと思っています。セレッソ大阪時代にチームメイトだった西尾隆矢選手はジュニアユース時代からの友達なんです。プロ1年目も同期だったんですけど、隆矢は中学時代からつながりを大切にしていたし、本当に周りの人を大切にする人間だったんです。隆矢だけでなく、ジュニアユース時代のコーチもすごく良い人で、僕のことを息子のように可愛がってくれました。そういう人と出会えると、『この人のためにもっと頑張ろう』というパワーが湧いてくるんです。その2人との出会いが自分にとって大きかったですね」

Q.ジュニアユース時代に人間性の部分を学んだのですね。
「そうですね。応援してくれる人の大切さを知りましたし、なぜ人は応援するのかというと、『サッカーがうまい』とか、そういうこともあるかもしれませんが、それ以上に人柄とか、人間性の部分が大きいと思うんですよ。そこは生き方としてこだわっています」

Q.西尾選手との出会いも大きかったのですね。
「C大阪U-15時代、僕はずっとAチームに入れず、先輩から屈辱的なことを言われることもあり、本当に悔しい思いをすることがありました。そんな時でも隆矢はずっと僕の隣にいて支えてくれたんです。そういう存在は大切にしていかないといけないと思っています。自分としても、そういうことを言ってきた人たちを見返したいという思いで今までずっとやってきました。だからこそ、プロになれたと思っています」

Q.昨季水戸に在籍した松田佳大選手(現京都サンガF.C.)も同じような経験をしたと言っていました。
「佳大君は僕の1学年上で、2人ともBチームでくすぶっていました。佳大君の世代は黄金世代と言われていて、その人たちのレベルからしたら、僕等なんて相手にしてもらえなかったんですよ。それでも、2人で『頑張っていこう』と言い合っていました」

Q.苦しい時こそ、つながりが大切になってきますよね。
「本当にそうだと思いますし、それはサッカーに限らないと思っています」

Q.今季もなかなか試合に出られず、苦しい時期が続いていますが、どうですか?
「僕が大事にしているのは、どういう状態かというより、どうやって生きるかということ。試合に出られなかったり、けがをしたりとか、いろんな状況がありますけど、大事なのは自分がどうやって生きるかだと思っています。私生活やピッチ内外の振る舞いとか、そういうところを周りの人は見ている。だから、試合に出られないからといって、姿勢を変えるようなことをしてはいけないと思っています」

Q.周りの人は見てますからね。
「苦しい時に頑張っていた選手が結果を出した時に周りの人たちは喜んでくれると思うんですよ。そういう部分を大切にしています」

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Q.次はビジョンについて聞かせてください。「挑戦し続ける」。この言葉の思いは?
「昨年岩手を離れることが決まって、次のチームをどうするかを考えた時、はじめはオファーが来るのを待とうと思ったんです。だけど、西大伍さんと話をした時、選択肢も増えるし、絶対に無駄にはならないからトライアウトを受けてみた方がいいと言われたんです。自分としてはけがをしていて万全な状態ではなく、気持ちの部分でネガティブなところがあったので、トライアウトには出ないつもりでいたんです。でも、西さんからそう言われて、ネガティブになっている自分がダサいと思ったんです。こういう時に失敗してもいいから、挑戦した方がいいと思うようになりました。そこでトライアウトに挑戦した結果、岩手より上のカテゴリーのチームに移籍することができた。挑戦するとか、行動に移すことの大切さに気付いたので、この言葉を選びました」

Q.その時に大事にしようと思った言葉なのですね。
「考えているだけでは何も生まれない。挑戦することはこれからも大事にしようと思っています」

Q.この言葉をビジョンとして掲げるようになって、自身の変化を感じていますか?
「まず、水戸に来ることができて、サッカーしているのはその気持ちがあったからです。それは大きな変化だと思っています」

Q.挑戦し続けて、どんどん道を切り開いていこうとしているんですね。
「いつまでサッカー選手でいられるかは分かりませんが、次のキャリアに進んでも、自分から動くとか、挑戦するスタンスは絶対に大事だと思います。どんな状況でも自分からアクションを起こし続けたいと思っています」

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Q.バリューについて聞かせてください。4つありますが、1つ目は「ベクトルは自分に向ける」とあります。こちらの言葉を説明してください。
「サッカー選手である以上、試合に出る・出ないはありますし、うまくいかない時もたくさんあります。そういった時に外に矢印が向いてしまいそうな時があります。でも、そういう時こそ、自分に矢印を向けないと思っていて、この言葉を選びました」

Q.今までもベクトルを自分に向けてきましたか?
「できない時もありましたよ。不満を抱くこともたくさんありました。でも、やっぱりうまくいかない時を後から振り返ったら、矢印が外に向いていたんですよ。自己分析をした時に自分に向き合えないと物事は前に進まないと思ったので、この言葉を大切にしています」

Q.今季出場機会に恵まれない中、自分に集中することができていますか?
「覚悟を持って水戸に来たので、そこはぶらすことなくやれていると思っています」

Q.2つ目の「時間を大切にする」は1つ目の延長線上にあるような言葉ですね。
「そうなんです。サッカーに関しては、トレーニング以外にも身体のケア、睡眠、食事など自分でできることがあると思っています。サッカー以外に関しても、自分が成長するためにできることはたくさんあります。最近は、異なる職業のことを知ることも大事だと思っていて、いろいろ新たな知識を入れるようにしているんですよ。知らないことを知りたい好奇心が自分の中で沸いてきている。それで得た新たな知識が自分の刺激になる。最近はそういうことにも時間を使うようにしています」

Q.たとえば、最近どういう知識を入れましたか?
「日本の文化という点で、盆栽とか、陶芸について調べました。自分はファッションも好きなので、そういった方面の情報も常に入れるようにしています。どんなことにも探求心を持つことを大切にしています。サッカー選手って、時間があるのに、有効に使えていない人が多いと思うんですよ。その時間をうまく使って、自分に還元したいと思っています」

Q.アツマーレは練習以外にもいろんな施設が揃っているので、時間を有効に使えるのでは?
「毎日夕方ぐらいまでクラブハウスにいますね。でも、その後、食事までの時間は空いていますし、食後の時間も空いている。その時間で何をするかは人それぞれ。僕はその時間を大事にしたいと思っています」

Q.他の職業にも興味があるとのことですが、他者に関心を持つことが「つながり」につながりますからね。
「本当にそうなんですよ。ご飯を食べている時にばったり出会った人との会話から、新たなつながりが生まれることもあります。その意識が他の職業の方へのリスペクトになると思っているので、すごく大事なことだと思っています」

Q.3つ目は「未来の自分から見たときに後悔しない生き方をする」です。
「その言葉通りで、自分の行動や判断に関して、未来の自分がどう思うかを常に考えています。後悔しないような決断をすることが大事だと思っています」

Q.客観的というか、俯瞰的に自分を見るということでしょうか?
「主観的だけではダメだと思っています。俯瞰して自分を見て、どういう決断を下すかが大事だと思うんです。その決断が正解になるか、不正解になるかは分かりませんが、大事なのは後悔するか、しないかなんです。それはすなわち、自分が決断できたかどうかということ。何かを判断する時、それを軸に考えるようにしています」

Q.その判断が「挑戦し続けること」につながるわけですね。
「水戸ホーリーホックからオファーをいただいた時、いろいろ考えましたけど、挑戦しなかったら後悔すると思ったので、水戸に移籍することを決めました。挑戦してうまくいかなくても、次につながると思っています。後悔しない生き方をしていれば、人間として深みが出てくると思うので、そういう生き方を大事にしています」

Q.そして、最後は「 一人の男としてかっこいい振る舞いをする」です。この言葉に込めた思いは?
「いろんな世界にかっこいいと思える人がいます。そういう方は話し方や言葉選びの一つひとつが違うんです。そういうところを意識しています」

Q.今まで出会った人で「かっこいい」と思えた人はいますか?
「サッカー選手としては瀬古歩夢選手(グラスホッパー・チューリッヒ)。ピッチ内外の振る舞いがかっこよくて、すごく魅力的な人でした。1人の人間としては、マテイ・ヨニッチ選手(仁川ユナイテッドFC)が素晴らしかったです。男としてドシッと構えていて、サッカーに対するプロフェッショナルさが他の選手とは全然違いました。けがもせず、フルタイム出場するスーパーな選手でした。1年目で一緒にプレーできた経験は自分にとっての財産になっています」

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Q.最後にスローガンについて聞かせてください。「生き方にこだわれ」。どういう思いが込められているのでしょうか?
「ミッションとビジョンとバリューにつながる言葉です。どういう状態であるかより、どう生きるかを大事にしているので、一人の男としてどうやって生きるかにこだわっています。これからも後悔しないように生きていこうと思っています」

Q.こだわるためにも、いろんな「生き方」を知らないといけないですね。そういう意味で他の職業の方や他者に興味を持つようになっているんでしょうね。
「だと思います。僕もまだ知らないことが多いですし、自分が正解だと思っていても、第三者から見てそうじゃないこともたくさんあると思います。そこで反省して、次につなげていくことが大事だと思っていて、そこで周りの人の声を聞けるかどうかで生き方は変わる。人として成長するためには前者の姿勢じゃなきゃダメだと思っています。反省と修正を繰り返して、自分の生き方を進化させていきたい」

Q.具体的にこだわっていることはありますか?
「時間の使い方や人との接し方。そして、サッカーに取り組む姿勢。そこにどういう意識やマインドで取り組むか。それが生き方にこだわることだと思っています」

Q.けがで長期間離脱していましたが、やっと全体練習に合流しました。残り試合は少なくなりましたが、ここから出場機会を増やしていきたいですね。
「そうですね。やっと完全合流を果たしたので、ここからアピールしていきたいと思っています。過ぎた時間を変えることはできません。その中で自分のやれることをやってきたと思っているので、後悔もありません。結果がどうあれ、最後までやり続けることが一番大事だと思っています。どう生きるかにこだわり続けたいと思っています」
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著者プロフィール

Jリーグ所属の水戸ホーリーホックの公式アカウントです。 1994年にサッカークラブFC水戸として発足。1997年にプリマハムFC土浦と合併し、チーム名を水戸ホーリーホックと改称。2000年にJリーグ入会を果たした。ホーリーホックとは、英語で「葵」を意味。徳川御三家の一つである水戸藩の家紋(葵)から引用したもので、誰からも愛され親しまれ、そして強固な意志を持ったチームになることを目標にしている。

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