週刊ドラフトレポート(毎週木曜日更新)

【週刊ドラフトレポート#25】伸び代が魅力の大型右腕・岡本駿 成長著しい強肩強打の捕手・笹原愛斗

西尾典文

「この秋大きく成長した、大学日本代表候補捕手」

最終学年となって急浮上してきた九州共立大・笹原。攻守ともにハイレベルなプレーを披露している 【写真提供:西尾典文】

笹原愛斗(九州共立大 4年 捕手 180cm/90kg 右投/右打)

【将来像】会沢翼(広島)
捕手らしい雰囲気は十分でパンチ力のある打撃は会沢にイメージが近い

【指名オススメ球団】楽天
支配下の捕手が少なく、補強ポイントにマッチしていることから

【現時点のドラフト評価】★★☆☆☆
支配下での指名濃厚

 今年のドラフト候補となるキャッチャーは高校生の箱山遥人(健大高崎)が高い評価を得ており、社会人では野口泰司(NTT東日本)と石伊雄太(日本生命)も有力候補として名前が挙がるが、大学生は指名が確実視されるような選手は不在という印象を受ける。そんな中で最終学年に大きく評価を上げてきたと見られるのが九州共立大の笹原愛斗だ。真颯館(福岡)では下級生の頃からレギュラーとして活躍。九州共立大では2年で正捕手の座をつかむと、いきなり春秋連続でベストナインも受賞した。初めてプレーを見たのは2年春に出場した大学選手権の対東北福祉大戦で、当時1年生の稲川竜汰を好リードして完封勝利に導き、スローイングにも目立つものがあったが、打順は8番ということもあってヒットは1本放ったものの打撃は強い印象は残らなかった。昨年12月と今年6月に行われた大学日本代表候補合宿にも選出されており、その時もプレーを見ているが、そこまで強いインパクトを残しておらず、代表チーム入りを逃している。視察したプロのスカウト陣からも、笹原について多くを語る声は聞こえてこなかった。

 そんな笹原が有力候補として一気に浮上してきたのが最終シーズンになってからである。九州担当のスカウトから守備も打撃も良くなっているという話を聞いたのだ。その真偽を確かめるべく、9月15日に行われた日本経済大との試合に足を運んだ。

 まず目についたのがスローイングだ。元々地肩の強さには光るものがあったが、フットワークとハンドリングが明らかにレベルアップしており、捕球してから素早く動いて強いボールを投げることができるようになっていた。大学生だと土日が連戦となり、日曜日の試合は疲れもあってかイニング間のセカンド送球で力を抜いて投げる選手も多いが、笹原は力強い送球を連発。2.00秒を切れば強肩と言われる中で1.8秒台をコンスタントにたたき出し、最速は1.84秒をマークした。この日も4球団のスカウトが視察に訪れており、アピールしたいという気持ちもあったと思われるが、その中でこれだけの送球ができるのは見事である。また練習だけでなく試合でも4回に見事な送球で盗塁を阻止しており、実戦での能力も高いところを見せている。

 さらにバッティングでも第3打席でセンター前へのタイムリーを放つと、第5打席にもセンター前へはじき返して2安打をマーク。大きく構えてゆったりとした小さな動きでタイミングをとり、ボールを長く見ることができており、振り出しも鋭く、打ち損じが少ない打ち方ができている。たくましい体格だが、決して力任せにならずにバランス良く下半身も使って振れるというのも持ち味である。第2打席のショートライナー、第4打席のライトフライもしっかりとらえた打球で、凡打の内容も良かった。この原稿を書いている時点で秋のリーグ戦は6試合を消化しているが、24打数11安打、打率.458という圧巻の成績を残している。このまま順調にいけば、キャリアハイとなる成績を残す可能性も高いだろう。

 これだけ守備も打撃も高いレベルにあり、さらに最終学年で大きく成長を見せているというのはプラス要因である。冒頭でも触れたように大学生の捕手は有力候補が少ないだけに、捕手が手薄な球団にとっては狙い目の選手であることは間違いないだろう。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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