【PLAYBACK PARIS】水泳2冠の木村敬一が今、金メダルよりもこだわっていること
【photo by Hiroyuki Nakamura】
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予選から修正し50m自由形制す
本命のバタフライではなく、50m自由形での金メダル獲得に「嬉しさもあるが、びっくりが半分」と木村 【photo by Hiroyuki Nakamura】
ゴールした瞬間は状況がわからず、「まあ速いだろうなとは思っていたが、思っていたより高い順位だった」と全盲スイマーならではのコメントで喜びを表現した。
自分の右側にコースロープを感じながら泳ぐ(手前が木村)。「わりと早い段階で見つけられたので落ち着いて泳げた」 【photo by Hiroyuki Nakamura】
表彰台では大声援を噛み締めるかのように何度も手を振った。「スポーツを見て熱狂する文化を僕もすごく感じています」 【photo by Hiroyuki Nakamura】
フォーム改善が実った100mバタフライ
予選1位。4レーンでスタートする木村は、派手なパフォーマンスは一切せず、いつものように淡々とジャージを脱いだ。昨年の世界選手権で敗れた世界記録保持者のダニーロ・チュファロフ(ウクライナ)は2レーンにいる。
レース前に集中する木村 【photo by Hiroyuki Nakamura】
木村は振り返る。
「(理想の姿勢を作るために)浮き上がりのひとかき目は、もう本当に注意して泳いだ。そこが崩れちゃうと、流れなくなってしまうので」
1年半前から、長年の友人でオリンピックメダリストの星奈津美さんにフォーム改善をアドバイスしてもらい、上下動の少ない安定した姿勢作りに取り組んできた。
全盲の木村は、コースロープに頼って泳ぐなど、一見タイムロスになりそうな自分のスタイルは残しつつ、新しいチャレンジで習得した“美しい泳ぎ”で東京大会よりも速いタイムで泳ぎ切った。
その結果、1分00秒90の大会新で1位。2位は世界記録を持つダニーロ・チュファロフ(ウクライナ)、3位に富田宇宙(日本)が続いた。
100mバタフライのメダルセレモニー 【photo by Hiroyuki Nakamura】
より速く、より美しく
レース後、古賀コーチと喜びを分かち合った 【photo by Hiroyuki Nakamura】
チュファロフや富田とは違い、2歳で視力を失った木村は泳ぎをイメージすることが難しい。東京大会後、木村が競技を続ける一つのモチベーションとしている“全盲の選手が運動の方法を獲得していくプロセスの検証”も自らのフォーム改良とその成果により、「なんとなくわかってきた」という。
金メダルを手に笑顔の木村 【photo by Hiroyuki Nakamura】
「いや、ちょっとわかんないですけど、結構満足しています」
パラリンピックの熱狂の中で、“世界一の笑顔”を見せた。
text by Asuka Senaga
photo by Hiroyuki Nakamura
※本記事はパラサポWEBに2024年9月に掲載されたものです。
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