全米で復帰後“ベストマッチ”を披露した大坂なおみ アジアシリーズでの「最後の抵抗」に期待感
接戦の末に敗退、会見で語った率直な思い
敗退後の会見で胸の内を語る大坂なおみ 【Photo by Robert Prange/Getty Images】
大坂を悩ませたのは、引き出しの豊富なプレー、なかでも大坂のフォアハンドの強みを消すバックハンドスライスだった。フォアの強打は大坂の武器だが、スライスの弾道は低く、大坂は高い打点から強打できない。仕方なく、普通に返していくと、ムホバの逆襲が待っていた。
スコア的にはシーソーゲームで、大坂にも何度か大きなチャンスがあった。第2セットは終盤のブレークで5-4とし、次のサービスゲームでセットポイントも握ったが、巻き返された。タイブレークでも4-2と先行したが、逆転を許し、ストレート負けの結果に終わる。
「プレッシャーのかかる場面で緊張を感じていた。もっと試合に出て、その感覚に慣れる必要があるのかもしれない」
そう明かした大坂。リードして逆に硬くなるのは、多くの選手が経験することだ。緊張を乗り越える原動力は自信にほかならない。学びや経験も大事だが、勝利を積み重ねて得た自信がなければ、大事な場面を乗り切れない。今の大坂には、その白星がまだ足りない。
試合後、大坂はこんな話をした。
「私は敗戦を本当に個人のこととして受け止めるので、少しつらいです。負けるたびに心が死んでしまうような気がする。つらいけれど、もっと成長できるように、負けについて学び、話すように努めています」
胸のうちをこれだけ率直な表現で語る選手は多くない。話すことで気持ちを整理し、人に心を開く習慣をつけ、少しでも「成長」につなげたいということなのか。表情はすっきりしていた。気分が落ち込み、鬱の状態に苦しんでいたと告白し、同時に記者会見拒否を宣言した21年の頃とは別人のようだ。
こんな言葉も聞かれた。
「失望を乗り越えれば、あれだけチャンスを得られたことを誇りに思えるでしょう。もっといいプレーができたのに、と感じながらではあったとしても……」
うつむくのをやめ、前を向こうとしているのが見てとれた。確かにチャンスがあった試合だった。勝者と敗者、双方が誇れるような、スリルと迫力に満ちた好試合だった。結果は欲しかったが、今大会の2試合で大坂の充実ぶりは明らかだった。
9月には日本に戻り、木下グループジャパンオープン女子(大阪)に出場、10月には東レ・パンパシフィックオープンへの出場を予定している。母国日本で、今度こそ浮上のきっかけがつかめるか。「締め切り」はさらに迫ってきたが、「シーズン最後の抵抗」を見せてほしい。