週刊ドラフトレポート(毎週木曜日更新)

【週刊ドラフトレポート#21】栃木の「ドクターK」文星芸大付・堀江正太郎、横浜・椎木卿五は関東代表する強打の捕手

西尾典文

「神奈川大会決勝でサイクルヒット!強打のサラブレッド捕手」

バットを高く上げた大きな構えから広角に強い打球を放てる点が横浜・椎木の魅力 【写真提供:西尾典文】

椎木卿五(横浜 3年 捕手 180cm/85kg 右投/右打)

【将来像】会沢翼(広島)

抜群のパンチ力と体の強さがあり、打てる捕手として会沢のようになれる可能性も

【指名オススメ球団】西武
若手の捕手が手薄で、打線も課題というチーム事情から

【現時点のドラフト評価】★★☆☆☆
支配下での指名濃厚

 今年の高校生捕手は以前のコラムでも取り上げた箱山遥人(健大高崎)、龍山暖(エナジック)が有力候補と見られているが、もう1人支配下で指名される可能性が高そうなのが横浜の椎木卿五だ。父の椎木匠氏も捕手として中日、ロッテ、西武でプレーした経験を持ついわゆる“二世選手”である。中学時代は千葉の強豪クラブチームである京葉ボーイズで活躍。高校でも入学直後からベンチ入りし、1年秋には正捕手に定着している。

 初めてプレーを見たのは1年秋の県大会だったが、その時は捕手としてのプレーはあまり強く印象に残っておらず、どちらかというと打撃の力強さが目立った。守備面がレベルアップしたのは2年秋の新チームになってからだ。昨年11月に行われた練習試合の「くまのベースボールフェスタ」でたて続けに試合を見る機会があったが、下級生の頃と比べても明らかにキャッチング、スローイングともにレベルアップした印象を受けた。特にミットをしっかり止めて捕球し、ワンバウンドのボールには体の正面で止めることが徹底できているところに好感が持てた。肩の強さに関しては箱山や龍山に比べると、そこまで目立つものではなかったが、捕球から送球の流れはスムーズで、コントロールも悪くない。時折早く投げようとし過ぎてボールの勢いがなくなるのは気になったものの、実戦でも見事なスローイングを見せていた。

 最後にプレーを見ることができたのは7月9日に行われた夏の神奈川大会、対座間総合戦だ。この日は夏の暑さによる疲労を考慮してとのことで4番、ファーストで出場。キャッチャーとしての守備は残念ながら最終確認はできなかったものの、持ち味であるバッティングではさすがのプレーを見せる。第1打席でレフト前へタイムリーヒットを放つと、相手のエラーを突いてセカンドに進塁。続く第2打席ではあわやホームランというセンターオーバーのツーベースでチャンスを作り、第3打席ではライト前へのタイムリーで3打数3安打2打点と4番として十分な働きを見せたのだ。

 バットを高く上げた大きい構えで打席での雰囲気があるのがまずいい。少しバットを引く動きが急なのは気になるものの、ヘッドが投手の方を向いたり、バットが背中の方に入ったりすることがないため、スムーズに振り出すことができている。また強引に引っ張るのではなく、左手でしっかりバットをリードして体の近くから振り出せるため、どのコースにも対応できる。この日も3本のヒットを3方向に打ち分けているように、広角に強い打球を放つことができるのも魅力である。

 そして椎木が強烈なインパクトを残したのが神奈川大会の決勝だ。チームは東海大相模に競り負けたものの椎木は4安打でサイクルヒットを達成。3回にはドラフト上位候補の藤田琉生からライトスタンドにホームランを放っており、低反発の金属バットの影響を全く感じさせなかった。最終的に夏の神奈川大会では7試合で14安打、打率.538という圧倒的な数字を残している。これだけ打てる捕手は貴重であり、若手の捕手が不足している球団にとっては狙い目の選手であることは間違いないだろう。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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