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三笘薫がプレミア開幕戦で極上の輝き ファンタスティックな先制弾を偉人シアラーも大絶賛

森昌利

誰が見てもこの試合の最高の選手だった

三笘、そしてブライトンにとっても24-25シーズンの初ゴールが生まれたのは前半25分。自らドリブルで突破口を開き、最後はファーサイドで右からのクロスに合わせて先制点をもたらした 【写真:ロイター/アフロ】

 前半25分の先制点が生まれる数秒前、三笘は自陣のペナルティエリア付近で守備をしていた。まず日本代表MFが相手を止め、こぼれ球を拾った味方から三笘へ。これが起点となった。

 その深い位置から三笘が一気にドリブルで駆け上がった。そして右前方を走るベテランFWダニー・ウェルベックの足元にパス。そこからさらに右のミンテにボールがつながり、縦に突破した20歳ガンビア代表MFがゴール前にクロスを放った。

 このボールに滑り込んで右足を合わせたのが三笘だった。守備の場面から一瞬のうちに攻撃に転じ、しかもそのまま相手のゴール前まで走り込んで貴重な先制点を奪ってしまったのである。

 しびれた。去年のウルバーハンプトン戦の5人抜きゴールもすごかったが、このゴールはフットボールに対する愛情、情熱であのマラドーナ的ゴールにまさっていた。まさに“ゴールを取る”という強い信念でピッチを駆け抜けて奪った先制点だった。

 ところが三笘は、まず右サイドからクロスを入れたミンテを褒め、「練習通りにやるべきことをやったまで」と、素っ気ない。

 けれども、この試合を見た者全員が、三笘の今季初ゴールがエヴァートンの序盤の優勢を吹っ飛ばし、3-0の完勝につながったことを認知した。

 先制点の威力は三笘本人も認めた。相手はハードワークのチームで、プレスもきつく、試合開始直後は苦しそうだったが、このゴールで流れが完全に変わったと伝えると、「そうですね。より球際のところは言われますし、相手もそういうチームでしたけど、臆することなく、そこで(ボール争いのところで)まず勝っていった。そこから徐々に徐々に、相手がプレスでこられなくなっていった。うん、1点入ったのは大きかったですし、それでボールを奪いにきてくれてスペースもできたんで。得点(先制点)のいいところが出たと思います」と語った。

 コンディションの良さが明らかだった三笘だが、こんな鮮やかなゴールを決めると、敵味方を合わせた20人のフィールドプレーヤーの中で、まるでスポットライトを浴びているかのように浮かび上がって見えた。日本代表MFは、誰が見てもこの試合の最高の選手だという存在感を示した。

 前に進むスピードとキレ、ボールを動かす判断力の早さ、そしてファーストタッチの素晴らしさも際立った。しかもピッチを縦横無尽に動き、攻めて守って、守っては攻めて、その豊富な運動量には舌を巻くしかなかった。

 先制ゴールに続き、三笘が体調の良さを誇示してブライトンに勝利を呼び込むプレーを見せたのは後半21分。この試合で対峙した39歳のベテラン右サイドバックのアシュリー・ヤングを退場に追い込んだ場面だった。

 ブライトン主将ルイス・ダンクは、左サイドに張り出した三笘をターゲットにしたロングボールを再三送るが、このボールもそのひとつだった。落下点にはヤングがいち早く到達し、ボールを胸トラップでコントールしようとしたが、このボールが少し高く、トラップしたボールが流れた。そこに三笘がスピード満点で飛び込んだのだ。

 すかさずこぼれ球をかっさらって、最後方のDFだったヤングを抜き去り、無人のピッチを進んでGKとの1対1に持ち込もうとしたその瞬間、圧倒的なスピード差に焦った元マンチェスター・Uの39歳DFが三笘の左腕をつかんで引きずり倒した。この故意の反則は文句なしの一発レッドカードとなった。

 後半11分に飛び出したウェルベックの追加点の10分後にこの退場劇が起き、ここでブライトンの勝利が決定的となった。

 ちなみにウェルベックのゴールも、中央をドリブルで進んだベテランFWの両脇を三笘とシモン・アディングラが駆け上がったことで、マークを絞りきれなかったエヴァートンDFが中央に若干のスペースを残してしまい、マンチェスター・U、アーセナルでもプレーしたストライカーがそこを突いて決めたものだった。

久々のプレミアでのプレーに三笘は「楽しかったです」

現役時代はニューカッスルなどで活躍し、プレミア得点王を3回獲得したシアラー。現在は評論家として活動するレジェンドは、三笘のゴールに最大級の賛辞を送った(写真は2024年4月) 【Photo by Tom Dulat/Getty Images for Premier League】

 三笘がキレキレのうえ、2点差にリードを広げられ、退場者も出てしまうとさすがの情熱的なエヴァートン・サポーターも次々にスタンドを去って、怒号渦巻くグディソン・パークがあっという間に静かになった。

 アディングラが後半42分に3点目を決めた時には、8割以上のホームサポーターがスタジアムを後にして、閑古鳥が鳴いていた。

「本当に久々のプレミアでしたし、楽しかったです。自分も怪我からいろいろ準備してきてるんで、それが今シーズンどう出るか、自分自身としても楽しみです」

 昨季は後半戦に怪我をして、フラストレーションも溜まったと思うが、今日はその分すごく楽しそうに見えた――と伝えると、27歳となり、これからまさに選手としての全盛時を迎えようとしている三笘がそう答えた。

 昨季の怪我から完全に復活した開幕戦のパフォーマンスを目の当たりにして、あらためて三笘のすごさとクオリティの高さを強く認識させられた。まさに敵は怪我だけ。日本のファンには長いシーズンを通して、今季の三笘の無事を祈願する念をイングランドに向けて送り続けてほしいと思う。

 そしてもしも無事でさえあれば、この選手はプレミアリーグを代表するアタッカーとしての存在感と数字を必ず残すと確信する。

 家に帰ってきて、午後10時20分から始まったBBCの国民的ハイライト番組『マッチ・オブ・ザ・デイ』を見ていたら、260というプレミアリーグの通算最多得点記録を保持するアラン・シアラーが、三笘の先制点を「absolutely fantastic」と言って絶賛していた。イングランドの至宝であるシアラーが思わず口にした「ファンタスティック」は、素晴らしいと意味に“幻想的”というニュアンスが付くが、そのうえ“完全”と言っている。それは「もうファンタスティックとしか言いようがない」という言い回しだった。

 それはそうだ。英国人は選手が全力以上を傾けた、120%をピッチに捧げるようなああいうゴールが大好物なのである。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2024-25で24シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル29年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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