坪井慶介が見た男子サッカー決勝の“死闘” 考えさせられた「組織と個のバランス」と「OAの是非」

吉田治良

U-23代表と親和性の高いOAを

地元開催の五輪で惜しくも金メダルに手が届かなかったフランスだが、マテタ(左)を筆頭にオーバーエイジは十分に機能。日本も今後参考にしたい絶妙な人選だった 【Photo by Xavier Laine/Getty Images】

「組織と個のバランス」をパーセンテージで示せば、スペインが「組織70パーセント:個30パーセント」で、フランスはその逆だったかもしれません。そうした戦い方の違いによって生じる差は、体力を消耗して足が止まる延長戦になって、より顕著になりましたね。エースのマテタが足をつって動けなくなっていたフランスに対して、スペインは複数人が連動してパスをつなぎ、たった一度のチャンスを効率よく決勝ゴール(100分)に結びつけました。

 ただ、どちらが優れていて、どちらが劣っているとは言いません。もちろん組織は大事ですが、組織を破壊するのは個の力でもあります。大切なのは、そのバランスをチームとして共有できているかどうか。フランスの場合は、困ったときはマテタやオリズで勝負するという共通理解がありました。スペインに対しては力押しで勝ち切ることができませんでしたが、結局その共通理解がしっかりとできている2チームがファイナルに勝ち上がり、だからこそこうした素晴らしいゲームが生まれたんだと思います。

 何度も言いますが、あらためて「組織と個のバランス」について考えさせられる大会になりましたね。

 最後に、オーバーエイジについて。僕は以前、「今大会の日本はオーバーエイジなしでも十分に戦えていた」と言いましたが、この決勝戦を見ていて、ちょっと分からなくなりました(苦笑)。フランスのマテタ、ラカゼット、(ロイク・)バド、スペインのミランダ、セルヒオ・ゴメス、アベル・ルイス。彼らの存在は、やはり大きかった。

 ただ、いざオーバーエイジを使うとなっても、当然ながら人選の難しさ、融合の難しさはありますよね。フランスとスペインの6人は、いずれも現在のA代表で主力を担っているわけではありません。ずば抜けたタレントを3人加えれば、それで強くなるとも限らない。その時のU-23代表と親和性の高い選手というか……そこの見極めがすごく大事になるんだろうなと。これも今大会を通じて、あらためて考えさせられたことでしたね。

(企画・編集/YOJI-GEN)

坪井慶介(つぼい・けいすけ)

1979年9月16日生まれ、東京都出身。四日市中央工から福岡大を経て、2002年に浦和レッズに入団。1年目からJリーグ新人王に輝く活躍を見せると、その後も長くCBのレギュラーとしてチームを支え、J1リーグ優勝(06年)やACL制覇(07年)など数多くのタイトル獲得に貢献した。日本代表として、06年のドイツ・ワールドカップにも出場(通算40試合・0得点)。湘南ベルマーレ、レノファ山口を経て、19年シーズンを最後に現役引退。現在はサッカー解説者、タレントとして活躍中。

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著者プロフィール

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

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