卓球男子団体のメダル逸に倉嶋洋介も沈痛 「世界で勝てる日本のスタイルの構築を」
卓球男子団体の3位決定戦でフランスに敗れ、観客に挨拶する(左から)篠塚、戸上、田勢監督、張本 【写真は共同】
第1試合のダブルスと第2試合のシングルスを落とした日本は、第3試合のシングルスで戸上隼輔(井村屋グループ)がアレクシ・ルブランを3-1で下すと、続く第4試合で張本智和(智和企画)もシモン・ゴズィーに3-1で勝利。しかし、最終第5試合で篠塚大登(愛知工大)が世界ランキング5位のフェリックス・ルブランの前に一歩及ばず、メダルには手が届かなかった。
元卓球男子日本代表監督として2016年のリオ五輪の男子団体で日本初となる銀メダルをもたらし、21年の東京五輪でも銅メダルを獲得。日本を2大会連続でメダルに導いた倉嶋洋介さんに、3位決定戦を振り返ってもらいつつ、日本の課題と将来への展望を語ってもらった。
世界の卓球は“守り”に入ると勝つのが難しい
第1試合のダブルス、篠塚(左)と戸上のペアは序盤の消極的な戦いから、相手にペースを握られてしまった 【写真は共同】
第1試合のダブルスでは、篠塚選手と戸上選手は相手の球を強く打ち返すのではなく、ただ返すことに終始しているシーンが多かった印象です。一方でフランスの選手は安易なブロックをせず、しっかりと打ち返していましたよね。もっとカウンター技術などを磨いて、“強くて早い卓球”をしないと世界に取り残されてしまいます。
特にダブルスの1・2ゲームの日本は消極的でした。相手に打たれたくないという気持ちが強すぎて、小さくネットプレーで勝負して崩そうとしていました。しかし、フランスは台上の球をチキータで攻めるのが得意です。その得意なゾーンに日本が球を打ってしまった結果、猛攻に遭いました。
2ゲームを失った状況になってからは、日本はリスクを冒してでも攻める気持ちが出ていましたが、五輪のような大一番の試合では最初から攻める気持ちでないと勝つのは難しいですね。フランスのゴズィー選手とアレクシ・ルブラン選手は2人とも右利きの右右のペアで、一方の日本は戸上選手が右利き、篠塚選手が左利きの右左のペアです。長いラリーになれば日本のほうが有利だっただけに悔やまれる試合になりました。
得意のチキータを封じられた張本はエース対決に敗戦
エース対決は死闘の末にフェリックス・ルブラン(左)に軍配。張本は得意のチキータを封じられた 【写真は共同】
そこで張本選手がフォアでレシーブしたところを、フェリックス・ルブラン選手はドライブをかけて攻めていましたね。たとえ張本選手がバックでレシーブしたとしても、フェリックス・ルブラン選手の得意な戦術であるバックハンドのカウンターにはまる形でした。
この試合は、お互いにバックハンドが得意なので、相手に気持ちよくバックハンドを振らせないように相手の体に近いミドルを攻めていました。するとバックだけに意識がいかなくなって、相手のミスを誘う戦術をとっていましたね。張本選手はラリーの調子がよかったのですが、甘いサーブが出てしまい、レシーブで返されるシーンが多く見受けられました。非常に高いレベルの話ではあるものの、重要な一戦ではこうしたミスが勝敗を分けてしまいます。
張本選手が第4試合で戦ったゴズィー選手は、ルブラン兄弟が出てくるまではフランスのエースでした。今大会は3番手の立ち位置でしたが、決して弱い選手ではなく、カットやカットブロック、逆チキータなど豊富な技術で張本選手を混乱させていました。
しかし、張本選手は世界屈指のタイミングの早さで卓球をする選手です。この早さにゴズィー選手はついていけなかったので、台から下がって粘り、張本選手のミスを誘う卓球をしていました。後ろに下がることで球に威力がなくなるので、回転にさえ対処できれば問題ありません。