男子バレー、メダル獲得には「石川の爆発が不可欠」 元代表主将・山村宏太が考えるエース復活の策とは?

田中夕子

「勝ちたい」とぶつかり合う世界での戦いを存分に楽しんでほしい

リベロの山本(写真左)からは、大舞台での試合を心底楽しんでいることが伝わってくる。すべての選手が「喜びを噛みしめながら戦ってほしい」と山村氏はエールを送る 【写真は共同】

 日本の次の対戦国はまだわかりませんが、ドイツ戦を見てもわかるように、もはや世界ランキングは関係ない。日本戦に限らず、ドイツは非常にいいバレーをしていましたし、アメリカのバレーボールも非常に面白かった。

 僕は「シェアの時代」という表現をしているのですが、まさにそれを体現していたのがアメリカ。いろいろな選手が、いろいろなことをする。オポジットのマシュー・アンダーソン選手がサーブレシーブに入ってそのままパイプを打ったり、サーブレシーブを外れたトリー・デファルコ選手がバックライトから攻撃に入ってくる。概念にとらわれない自由で面白いバレーをしているな、と感じました。

 グループ全体を見ても、4位のアルゼンチンを含め、まさに“死のグループ”と言っても過言ではないほどレベルの高い試合が多かった。そしてそのなかで苦しみながらも準々決勝に進めたことを日本は自信にしていいと思います。

 ここからは、自分たちがこれまでどういうバレーをして勝ってきて、さらに上へ進むためにはどんなバレーをしていかなければならないのかを共有すること。勝ち負けを考えると、どうしても余分な力みが生じます。選手は口々に「メダルを獲る」と目標に掲げていますが、あくまでそれは目標であり、ミッションではない。自分たちがより高みへ行くために乗り越えなければならない、より成長できる、というマインドで取り組むことができればきっといい方向に行くと思います。

 象徴的なのが山本智大選手です。山本選手を見ていると、本当に楽しんで試合をしている、バレーボールをしているのが伝わってきます。みんなが「勝ちたい」と思い、ぶつかり合っているのが心底楽しい、まさにそんな印象です。

 世界ランキング2位になり、勝って当たり前と思われるなか、「まだまだ自分たちは成長できる」。山本選手のプレーやマインドはまさにそれを表現していますし、みんなが最高の笑顔で、1本1本、喜びを噛みしめながら戦ってほしい。気づかぬうちに多くのプレッシャーを背負っているであろう石川選手も、そうなれば少し変わってくるかもしれません。石川選手の調子が上がればチームにとって上積みでしかないというのはアルゼンチン戦の後にもお話ししましたが、まさにその通り。そして勝つために、石川選手の爆発は不可欠です。

 最高の舞台で、より成長できる。そのマインドこそが、まさに成長へつながり、目標達成に近づくために必要なことです。いよいよ準々決勝。チームのために自分は何ができるか。「勝ちたい」とぶつかり合う世界での戦いを、自分の成長、チームの成長につながると考え、存分に楽しんでほしいですね。

(企画・編集/YOJI-GEN)

山村宏太(やまむら・こうた)

1980年10月20日生まれ、東京都出身。筑波大を経て強豪サントリーに入社し、2メートルを超える長身ミドルブロッカーとしてVリーグで活躍。大学時代に初選出された日本代表でも長く主力を担い、2008年北京五輪に出場したほか、キャプテンも務めた。2017年の現役引退後はサントリーのコーチとなり、2020年に監督に就任。2024年5月に勇退するまでの4シーズンで、チームを3度リーグ優勝に導いた。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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