【月1連載】久保建英とラ・レアルの冒険(毎月第1木曜日更新)

主力流出に現実味、ソシエダに変革の波が──久保建英の相棒に推したい新ストライカーは?

高橋智行

ル・ノルマンら主力数名の退団は不可避とも

久保の残留は間違いないと言われる一方で、ソシエダではこの夏、ル・ノルマン(左)、メリーノ(右)といった主力に移籍の可能性が浮上している 【写真:ロイター/アフロ】

 シーズン終了とともに、移籍マーケットが一層の活況を呈している。久保の去就に関しても日本ではさまざまな憶測が飛び交っているようだが、現地サン・セバスティアン(ソシエダの本拠地)では、今年2月に29年まで契約を延長したばかりでもあり、「残留」以外の選択肢は考えられていない。

 スペイン国内で移籍の可能性を報じているのは、信ぴょう性が疑わしいウェブメディアのみ。大手スポーツ紙や地元紙からは少なくともこの1カ月、そういった類の報道は出ていない。クラブの番記者に話を持ち掛けても、「久保は引き続きラ・レアルでプレーする」と即答されるだけだ。

 先頃、久保本人がパリ五輪への不参加を表明したが、これを受けてアルグアシル監督が、「休みを与えられるのはいいこと」とコメント。万全の状態で来季に臨めることを期待している。

 久保は残留濃厚と考えて良さそうだが、しかしソシエダにはこのオフ、大きな変革の波が押し寄せるかもしれない。DFロビン・ル・ノルマン(アトレティコが獲得希望)、MFマルティン・スビメンディ(バルセロナ、アーセナルが獲得希望)、MFミケル・メリーノ(契約延長を保留中)といった主力に退団の可能性があるからだ。クラブはもちろん全員を引き留めてはいるが、何人かの退団は不可避との見方が強い。

 その他、22年夏にクラブ史上最高額で獲得したFWウマル・サディクが退団を申し出ており、同じくFWのカルロス・フェルナンデスにも放出濃厚との報道がある。さらに、レンタル中のDFキーラン・ティアニー(アーセナル)、DFハビ・ガラン(アトレティコ)、FWアンドレ・シウバ(ライプツィヒ)との契約も6月いっぱいで満了する。

 補強に関しては現在、PSGのスペイン人MFカルロス・ソレールやガラタサライのトルコ代表FWケレム・アクトゥルコールが獲得候補に挙がっている。前者はメリーノらMF陣の退団に備えたもの。後者はミケル・オヤルサバルを来季もセンターフォワードで起用した場合、アンデル・バレネチェアのみと手薄になる左ウイングを補填する狙いがある。

 他クラブにレンタル中の選手では唯一、カディスで武者修行を積んだロベルト・ナバーロに復帰の可能性がある。両サイドの攻撃的なポジションでプレーできる、22歳のMFだ。一方でディエゴ・リコ(DF/ヘタフェ)とアレックス・ソラ(DF/アラベス)は売却濃厚で、昨季2部のアンドラでプレーしたFWジョン・カリカブルは、再びどこかに貸し出されることになるだろう。

久保とのコンビ再結成を期待したいのは?

頼れるセンターFWの獲得は喫緊の課題。1シーズンのみとはいえ、マジョルカ時代に久保と好連係を見せたプディミル(右)は理想的な人材だが 【Photo by Mateo Villalba/Quality Sport Images/Getty Images】

 不確定要素はいくつもあるが、現時点で確実に補強が必要なポジションは左サイドバックとセンターフォワードだ。

 左サイドバックは負傷中のアイエン・ムニョスが来季開幕に間に合うか分からず、ティアニーが去る。そのためクラブはハビ・ガランの残留を希望しており、これをル・ノルマン獲得を狙うアトレティコとの交渉に含むのではないかと見られている。

 全員に退団の可能性があるセンターフォワードは、とりわけ補強を急ぎたい。A・シウバ(ラ・リーガで3得点)、サディク(同3得点)、C・フェルナンデス(同2得点)の3人は、今季まったくストライカーとしての働きができず、アルグアシル監督もオヤルサバルやベッカーでカバーせざるを得なかった。

 ソシエダにとって痛かったのは、昨オフ、過去2シーズンにわたってレンタルで在籍したノルウェー代表FW、アレクサンデル・セルロートを買い取れなかったことだろう。昨季のラ・リーガで12ゴールを挙げてチーム得点王となったストライカーは、ビジャレアルに移籍した今季、大量21ゴールで得点ランキングの2位に輝いた。久保との相性も良く、クラブとしてもなんとか呼び戻したいはずだが、契約解除金が3800万ユーロ(約64億6000万円)と高額では、どうあがいても手が出ない。

 具体的な噂はないが、ラ・リーガ内で新たなセンターフォワードを探した場合、オサスナのクロアチア代表FW、アンテ・ブディミルはうまくフィットするかもしれない。

 今季のラ・リーガでも17得点と高い得点力を示したブディミルは、190センチの長身を生かしたポストワークも正確で、様々なシステムに適応できる戦術的な柔軟性も備えている。さらにハードワークを厭わず、献身的な守備にも定評があるストライカーだ。

 久保がスペイン1年目の19-20シーズンにマジョルカで記録した4アシストのうち、2アシストがブディミルへのものだった。久保が成熟した今、5年ぶりのコンビ再結成で2人がどんなプレーを見せてくれるのか。想像すると期待が膨らむ。

 獲得への障害は昨年10月にオサスナとの契約を27年まで延長し、契約解除金が2000万ユーロ(約34億円)に設定されていることだろう。しかし、32歳とベテランの域に入ったブディミルの現在の推定市場価値は500万ユーロ(約8億5000万円)。安価で獲得できる可能性もありそうだ。

 サッカーの世界では何が起こるか分からない。今後、移籍マーケットはさらに活発化していくはずだが、少なくとも久保自身の周辺は落ち着いている。日本代表のワールドカップ予選(6月6日にミャンマー戦、11日にシリア戦)が終われば、7月11日から始まるプレシーズンまで、ゆっくりと疲れた身体を休めることができそうだ。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年に渡西。サッカー関連の記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、ラ・リーガを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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