【週刊ドラフトレポート#05】競合濃厚!大学史上屈指の左腕・金丸夢斗、MAX157キロの剛球右腕・中村優斗
「スピードはアマチュアNo.1。この春も驚異の奪三振率を記録」
中村優斗は最高球速が速いだけでなく、高い出力を維持し続けられる右腕 【写真提供:西尾典文】
【将来像】平良海馬(西武)
投球スタイルが重なる。平良と同様にリリーフから先発転向という可能性も
【指名オススメ球団】ヤクルト
手薄で故障者が多い投手陣を考えるとタフな中村は補強ポイントにマッチする
【現時点のドラフト評価】★★★★★(複数球団の1位入札濃厚)
中村の出身は長崎県。高校時代は県内でも強豪ではない諫早農でプレーしており、野球は高校までと考えていたとのことだが、その素質の高さは地元では評判だったという。それに目を付けた愛知工業大の平井光親監督(元ロッテ)の強い誘いもあって進学すると、1年春からいきなり先発の一角となり、リーグ2位となる防御率もマークしている。
その後も順調に成長を続け、2年時にはストレートも150キロの大台を突破。この頃から、愛知の関係者から盛んに中村の名前を聞くようになった。初めてピッチングを見たのは3年春のリーグ戦前に行われた社会人との対抗戦。最終回にリリーフでマウンドに上がると、強豪のヤマハを相手に三者凡退、1奪三振と圧巻の投球を見せている。ちなみにまだ3月中旬の寒い時期だったにもかかわらず、この試合で投じた11球のストレートは全て150キロを超え、最速は153キロだった。
チームがなかなかリーグ戦で勝つことができず、全国の舞台に立ったことはないが、昨年12月には大学日本代表候補にも選出。紅白戦では157キロをマークして居並ぶスカウト陣を驚かせている。3月7日に行われた侍ジャパンの欧州代表との強化試合、さらにこの春の開幕戦となった愛知学院大戦でも157キロをマーク。昨年12月の数字が決してフロックではないことを証明した。
筆者がこの春の中村を見たのは4月13日に行われた中部大との試合。この日も中村は立ち上がりから150キロ台中盤のスピードで相手打線を圧倒し、5回までに12個の三振を奪う快投を見せる。球場表示の最速は前週と並ぶ157キロを記録し、筆者のスピードガンでも最速は155キロだった。ちなみに会場となったパロマ瑞穂球場は今年からスピードガンが設置され、その精度に疑問の声もあったが、筆者や周囲のスカウト、他チームの偵察部員の計測している数字を見ても異常な数字が出ている印象は受けなかった。
そして中村の凄さは“瞬間最大風速”ではなく、高い出力を維持し続けることができるという点にある。この日筆者が計測できた中村のストレートは51球あり、その平均球速は151.6キロに達していたのだ。これはプロの先発投手でもトップクラスの数字である。またストレートの速さばかりが話題になりがちだが、打者の手元で鋭く変化するスライダー、フォークも一級品であり、制球力も高い。この日もストレートと変化球を上手く使って三振を奪うことができていた。
ただ一方でまだ不安定な点があることも確かである。中部大戦が行われた日は気温が高かったこともあって6回に脚が攣り、そこからホームラン2本を浴びて3点を失いまさかの逆転負けを喫したのだ。脚が攣ったことの影響ももちろんあるが、それ以上に気になるのがフォームだ。左足を上げてからステップするまでのリズムが一定で、打者目線から見るとタイミングをとりやすく感じられる。また体が一塁側に流れることも多く、右打者の内角へ速いボールがなかなか来ないというのも気になる点だ。高いレベルの相手になり、疲労が出てくると中部大戦のようにつかまるケースも増えてくる可能性も高いだろう。実際、4月29日の名城大戦は中1日で先発し、エラーも絡んだものの4回途中被安打6、5失点で降板している。
単純なボールの力やコントロールに関しては疑いようのないレベルにあることは間違いない。リーグ戦優勝は絶望的な状況だが、大学日本代表に招集される可能性も極めて高いだけに、国際大会でも結果を残すことができればさらに評価は高くなりそうだ。