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リバプールとアーセナルはスタミナ切れ!? 欧州戦で惨敗も遠藤航は前を向いて戦ったが…

森昌利

生贄を見つけたかのように遠藤を取り囲んで

アタランタとヨーロッパリーグ準々決勝第1レグを戦ったリバプールは、チーム全体に疲労感が漂い、アンフィールドでまさかの完敗。スタメン出場の遠藤は後半31分までプレーし、ベンチに下がった 【写真:REX/アフロ】

 2戦目がホームというのは本当に有利だ。それゆえ、マンチェスター・Cはアーセナルと同じ欧州CL準々決勝の第1レグがドロー(3-3)だったが、第2レグがホームだけに優位に立っていると言える。

 一方でリバプールは4月11日、ヨーロッパリーグ準々決勝第1レグのホーム戦で0-3の敗北を喫した。

 もう足が動かないという感じだった。動かないから、フィールドプレーヤー10人が全く連係できず、チームとして機能しなかった。

 それに熱狂的で知られるアンフィールドのサポーターがいやに静かだった。ユルゲン・クロップ監督の勇退が発表されてから、常にすさまじい熱気とインテンシティを発していたスタンドに奇妙な倦怠感が漂っていた。

 選手もサポーターも疲れていたと言うしかない。

 こんなリバプールを見たのは今季初めてだった。先制され、2点目を奪われ、まさかの3点目を決められた。アタランタのサポーターで埋まったアウェー席は蜂の巣をつついたかのような大騒ぎになった。まるで優勝したような雰囲気だった。確かに断トツの優勝候補であるリバプールをアウェーで3-0で下せば、それは「俺たちが優勝するんだ!」という気分になるだろう。

 第1レグを0-3で落としながら大逆転したといえば、2018-19シーズンのバルセロナとの欧州CL準決勝がすぐ頭に浮かぶ。しかしあの時の奇跡は第2レグが、特に欧州戦で魔物を呼ぶリバプール・ホームのアンフィールドで行われたからこそだった。

 調べてみると、リバプールの最後のホーム敗戦は2023年2月21日。奇しくもこれもヨーロピアン・ナイトの試合で、レアル・マドリーとの欧州CLのラウンド・オブ16の第1レグ。今回と同じく3点差負け(2-5)だった。

 アタランタ戦敗北直後のミックスゾーンにリバプールの選手では遠藤航だけが姿を見せた。すると、まるで生贄を見つけたかのように、現地記者があっという間に日本代表主将を取り囲み、英語で矢継ぎ早に質問を浴びせた。

「こんな敗戦はリバプールに加入して初めてだがショックは大きいか?」「どうしてこんな負け方になった?」「シーズン終盤にこんな崩れ方をして、不安ではないか?」等々、容赦ない言葉が遠藤を襲った。

 しかし31歳MFはあくまで冷静に「フットボールではこんなことも起こる」と対応し、「怪我人も次々帰ってきて、ポジティブな要素も揃った」と語ると、「今日の結果から切り替えて次の試合、クリスタル・パレス戦に臨む」と話して、記者団から離れた。

 こうして遠藤の顔を久しぶりに間近で見たのだが、日本語での質疑応答は許されなかった。それはやはり、こんな惨敗の直後で、自分たちが理解できない言語でのやり取りを広報が嫌ったということもあるだろう。

「ごめんなさい、時間切れということです」と言いながら、ミックスゾーンから立ち去っていく遠藤に、ブライトン戦(3月31日)で故障した箇所について「怪我はもう大丈夫? コンディションは?」と聞くと、「大丈夫です!」という力強い言葉が返ってきた。

遠藤のシュートも無情にもバーを叩いて…

開始2分、ハーランドのボレーシュートが橋岡の顔面を直撃して軌道を変えゴールへ……。運も味方にして幸先よく先制したマンチェスター・Cは、後半に4点を加えてルートンに大勝した 【写真:REX/アフロ】

 そして週末のリーグ戦。土曜日(4月13日)は橋岡大樹のルートンが対戦相手ということで、アーセナル、リバプールとの三つ巴戦を繰り広げるマンチェスター・Cの試合をエティハド・スタジアムで観戦した。前半2分、怪物アーリング・ハーランドがペナルティエリア内で蹴り損ねた左足のボレーを橋岡が顔面に受けて、それがアーセナル戦(4月3日)に続き、またも日本代表DFのオウンゴールとなった。

 しかしマンチェスター・Cにとって、最終スコアが5-1となった試合にそんな幸運は全く関係なかった。まさに赤子の手をひねるような強さだった。4日前にR・マドリーとの激烈なアウェー戦を戦ったばかりだというのに、その影響を全然感じさせなかった。

 その一方で、日曜日(4月14日)のリバプール戦。アンフィールドでの勝利が義務付けられたレッズはリーグ14位のクリスタル・パレスを相手に、木曜日のアタランタ戦に続いてホームで敗北を喫した。

 前半14分のクリスタル・パレスの先制の場面。左サイド深くからのタイリック・ミッチェルの折り返しのボールを止めようと、遠藤がスライディングで懸命に足を伸ばしたが、リバプールの抵抗が見えたのはそれだけ。まるで凍りついたかのように最終ラインが動けず、クロスを受けたエベレチ・エゼに至近距離からあっさりとゴールを決められた。

 結局この1点が命取りとなり、リバプールが0-1で負けた。

 遠藤は前半27分にコーナーキックからの流れで、ゴール前の混戦のなかターンしながら左足を振り抜いたが、このシュートは無情にもバーを叩いた。それ以外にも最終ライン裏に抜け出したMFカーティス・ジョーンズがGKと1対1となり、あとはゴールに流し込むだけという場面で右ポストの外にシュートをそらし、故障明けのディオゴ・ジョッタやエースのモハメド・サラーが至近距離から放ったシュートは相手DFに当たって、ゴールラインを割ることはなかった。

 この惜敗後、アンフィールドに失望が広がった。これで今季のリーグ優勝が大きく遠のいたのだ。それも当然だった。選手が下を向いて控え室へ向かう通路へ歩いていった。サポーターも下を向いて出口に向かって歩いていた。この日は試合後に『You’ll Never Walk Alone』の合唱がスタンドに轟くことはなかった。

 ところがリバプールのホーム敗戦後、アーセナルもホームでアストン・ヴィラに0-2の負けを喫した。週中の欧州戦で失望した2チームがそろって不覚を取る形になった。この結果、マンチェスター・Cが首位に浮上。イングランド史上初の4連覇に向けて、王者が優勝の大本命に躍り出たことは間違いない。

 しかしなぜかまだ、今季はこのまますんなりと最強マンチェスター・Cが優勝するというイメージも湧かないのだ。これはペップ・グアルディオラ監督も「ひどい日程だ」と口にしているが、FA杯も準決勝進出を果たし、その上、欧州CL準決勝に勝ち進むことを前提とすると、マンチェスター・Cは今月17日のR・マドリー戦の2レグから5月19日のプレミアリーグ最終節まで、勝ち抜きのトーナメント戦を含め、極限の戦いを少なくとも9試合、最大で11試合もこなすことになる。

 2シーズン連続のトレブルという偉業もかかるなか、マンチェスター・Cが前人未到の4連覇を果たすというのならそれも仕方がない。心からその神がかった歴史的勝利に敬意を捧げよう。しかしまだ、フットボールの神様は今季のプレミアリーグに、最後のどんでん返しを用意している気がしてならないのである。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2024-25で24シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル29年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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