若手の成長が目立った日本カーリング選手権 解説者が語る男女優勝チームの持ち味

竹田聡一郎

男子決勝の勝因は緊張して出た清水徹郎のミス?

男子はコンサドーレが3年ぶりに優勝 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

――男子は谷田選手の古巣でもあるコンサドーレが3年ぶりに頂点に立ちました。3連覇を狙うSC軽井沢クラブとの決勝では、1エンドをブランクにするやや堅めの立ち上がりでしたが、2エンドでSC軽井沢クラブが1点をスチール。コンサドーレは先制されます。

 今大会、高い決定力を見せていた清水徹郎選手にミスが出ましたね。でも、試合後に本人も「緊張してた」と笑っていましたが、それも僕は彼の強さだと思うんです。

――というのは?

 カーリングはどんな強いチームにもどんな上手い選手にもミスは出るんです。それは仕方ない。でも、そのあとにリセットしていいショットを投げられる選手と、引きずって沈んでいってしまう選手。そこに差が出ます。てっちゃん(清水)はおそらく前者で、僕も3シーズン一緒にやらせてもらいましたがズルズルと落ちていく姿を見たことはほとんどないですね。決勝でもあのミスで吹っ切れてすぐにいいショットを投げ始めて、3エンドでの2点、さらに4エンドでの3点スチールにつなげました。そういう意味では2エンドのミスは1点で済んで良かった。ひょっとしてあのミスを最小限で抑えたことが勝負の分かれ目だったかもしれません。あとはその前を投げる阿部晋也選手が安定していました。

――大会MVPに選ばれました。

 当然の結果だと思います。一次予選からずっと好調を維持していて、フロントエンドで多少、乱れても阿部選手が2投揃えることで清水選手にいいイメージで投げさせることができていました。前を投げる選手にいいショットが続かないエンドではスキップに重圧がかかってしまうんですが、それを半分、阿部選手が負担してくれたので清水選手も救われていたと思います。

――フロントエンド21歳コンビ、リードの敦賀爽太選手、セカンドの大内遥斗選手はいかがでしたか?

 僕は若手2選手がこの大会で大きく成長したなと思いました。ショット面でミスはあったかもしれませんが、それを引きずらずにスイーピングに集中できていました。何度もスイープでフリーズを決めてチームを救ったシーンがありましたが、ドローをピンポイントに運ぶ能力は今大会でもっとも安定していたように見えました。

――チームとしても完成に近づいてきたということですか?

 そうですね。選手同士の距離感も最適で誰かと誰かが近い感じもしないですし、全員が自分のやるべきことに集中して試合に入っていたように見えたので、雰囲気も良かった。もちろん細かいミスなどはもっと突き詰めて潰していく必要はありますが、バックエンドのショットの繋がりとスイープの強さは間違いなく武器だと思います。

――谷田選手が在籍していた時代に3連覇をしていますが、来季以降もコンサドーレは強そうですか?

 強いとは思います。でも逆に言えばバックエンドやスイープ、チーム全体の雰囲気など、そこが1つでも欠けたら分かりません。コンサがどうこうではなく、SC軽井沢クラブもTMKaruizawaも技術的には最高レベルですし、KiT(CURLING CLUB /北見協会)も強いチームです。3位のドラーゴ(ロコ・ドラーゴ/LOCOSOLARE)はハマった時は手がつけられない強さがあります。男子のレベルは本当に上がっているので今年より来年はさらに予想不可能になると思います。

――確かに男女とも好ゲームが多く、いい意味で予想を裏切ってくれる大会だったかもしれませんね。

 瞬間的な調子の良さや勢いで勝てる時代は終わりました。この1年、各チームがどう強化するかもファンの皆様には見守ってくれると来年の日本選手権はもっと楽しいと思います。

――ありがとうございました。谷田選手は2月26日に開幕するミックスダブルスの日本選手権に出場します。いい試合を期待しています。

 ありがとうございます。みなさん、ダブルスもまた違う面白さがあるのでぜひご覧になってください。SC軽井沢クラブ、コンサドーレのみなさん、おめでとうございます!

谷田康真(たにだ・やすまさ)

【筆者撮影】

1994年5月16日北海道名寄市生まれ。北海道クボタ所属。コンサドーレ在籍時に日本選手権3連覇を達成したトップカーラーのひとり。松村千秋(中部電力)とのペアは今季もミックスダブルス日本代表で、昨季は世界選手権で準優勝という日本カーリング史上最高の成績を残した。趣味は草野球とプロ野球観戦。好きなチームは「もちろん日本ハム」で今季、注目しているのは堀瑞輝投手。インスタグラムは(https://www.instagram.com/tanida_yasumasa/)

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著者プロフィール

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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