「世界で最も成長している競技」ピックルボール ソフトテニス王者・船水が二刀流で“メジャーリーグ”に挑戦

大島和人

ピックルボールの特性は?

船水選手は手応えを感じながらピックルボールに取り組んでいる 【AAS Manegement提供】

 もちろん船水がすぐ各チームのドラフト指名を受けるレベルになる保証はない。現段階では「1年以内のMLP入り」という目標を立てつつ、アメリカ国内の大会に参加し、ステップアップしていくビジョンだ。またプロソフトテニス選手としての活動も継続し、ピックルボールとは「二刀流」の取り組みになる。

 船手は競技の特徴をこう説明する。

「コートが小さいので、フィジカルというよりラリーの戦術、反射神経の勝負になってくる。ラケットは本当に『手のひらの感覚』で飛びます。ボールは穴が開いていて飛び過ぎないので、当たればネットを越える感じです」

 ピックルボール特有の技術、戦術を習得する必要もあるが、ソフトテニスに還元できる部分もあるという。

 ピックルボールはソフトテニスと同様にダブルスがメインで、当然ながら連携やコミュニケーションが重要だ。船水は英語を目下学習中で、まだ堪能ではないが、試合中のやり取りは短い単語がメインとなるため、特段の問題は感じないという。

 卓球、ソフトテニスはラケットの操作で「スピンを掛ける」技術がある。それに比べるとピックルボールは軌道が素直で、選手は主に肩から下、膝くらいのラインでボールをさばき、ラリーの連続で試合が進んでいく。長短、左右の揺さぶりで相手がバランスを崩すように仕向ける、時間を奪う駆け引きがあり、それはテニスと近い部分だ。

その魅力と広がる可能性

南社長(左)、船水選手(中央)、D・ムーア氏(右)が揃って10日に都内で会見を行った 【(c) Visional】

 ピックルボールは何より「競技を始めてすぐラリーができるようになる」「試合が成り立つ」という敷居の低さがある。そしてプレイヤーの感情を引き出す、自然と盛り上がる特性もある。船水も案の定、この競技の虜(とりこ)になった。

「めちゃめちゃ楽しいです。ラリーも続くし、良い音が鳴るし、すごく迫力があります。最初はどういうスポーツか知らなかったんですけど、やるうちにどんどんハマって、本当に好きなスポーツになりました」

 船水のガイド役となるダニエル・ムーア氏もこう述べる。

「テニスは無言ですけど、ピックルボールは(競技をしながら)みんなキャーキャー騒いでいますね。ピックルは色んなラリーや、まさかの出来事があるので、騒いで声を出して、楽しそうな様子が(見ている人にも)よく伝わると思います」

 今回のプロジェクトにはおそらく「二つのゴール」がある。一つ目は船水雄太というアスリートが本場アメリカのMLPでプレーすること。二つ目はこの競技がアメリカから日本、世界に広がるメジャースポーツとなることだ。

 船水のサポートを買って出た南社長はこのような見通し、夢を口にしていた。

「まずは参加型スポーツとして、広がっていくことが重要です。アメリカのみならずヨーロッパ、アジアと各大陸に広がって、オリンピック競技になれるかどうかを、僕個人としてはすごく楽しみにしています。新しいスポーツが産声を上げて、それが世界に広がっていくことは、人生の中でもなかなか見たことがない状況です。エクストリームスポーツみたいな形で、いつか色んな国からビッグボールのオリンピック選手が生まれたとき、『このプロジェクトを応援できてよかった』と思えるのではないかと個人的に期待しています」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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