【菊花賞】マックイーンの再来、遅れてきた大物ドゥレッツァが世代最強を証明!

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【クラシック最後の一冠・菊花賞はルメール騎手騎乗のドゥレッツァが5連勝で一気の頂点に立った【Photo by Shuhei Okada】】

3歳クラシック三冠レース最後の一冠、第84回菊花賞が10月22日、京都競馬場3000m芝で行われ、クリストフ・ルメール騎手騎乗の4番人気ドゥレッツァ(牡3=美浦・尾関厩舎、父ドゥラメンテ)が優勝。大外17番枠スタートから1周目で先頭を切る積極騎乗を見せると、2周目3コーナー下りでいったん3番手に控えるも最後の直線で再び後続を突き放し、2着に3馬身半差をつける快勝で世代最強の座に就いた。良馬場の勝ちタイムは3分3秒1。

 今回の勝利でドゥレッツァはJRA通算6戦5勝、重賞は初勝利。騎乗したルメール騎手は2016年サトノダイヤモンド、18年フィエールマンに続き菊花賞3勝目。同馬を管理する尾関知人調教師はクラシックレース初勝利となった。

 なお、2着には2番人気に支持されたジョアン・モレイラ騎手騎乗の日本ダービー馬タスティエーラ(牡3=美浦・堀厩舎)、さらに1馬身半差の3着には1番人気の支持を受けた横山武史騎手騎乗の皐月賞馬ソールオリエンス(牡3=美浦・手塚厩舎)が入った。

想定外の猛ダッシュ「じゃあ、プランを変えて逃げよう」

【まさかの逃げ、ルメール騎手も控える競馬を描いていたが柔軟に作戦を切り替えた【Photo by Shuhei Okada】】

淀3000mの長丁場を乗り切るには何といっても前半の折り合い、スムーズさが大事。それだけに1周目の並び、特にドゥレッツァの位置取りに多くの人が驚いたに違いない。当事者である尾関調教師ですら想定外だったというのだ。

「ジョッキーとは前半を静かに行くか、アグレッシブに行くかで話はしていましたが、基本的にはお任せでした。僕としては静かなプランで行くのかなと思っていたのですが、蓋を開けてみたらアグレッシブなプランでしたからね(苦笑)」

 調教師の裏をもかく名手の独創性……には違いないのだが、実際のところはルメール騎手も“前半は静かに行こう”、つまり控える競馬で行こうと思っていたのだという。ところが、ドゥレッツァ自身が人間の思惑などどこ吹く風の猛ダッシュ。これで静かなプランを捨ててアグレッシブなプランで行かざるを得なくなった、というのが本当のところのようだ。ルメール騎手もトレーナー同様に時折、苦笑いを浮かべながら1周目を振り返った。

「フライングスタートですごい脚を使ったので(笑)、じゃあ、プランを変えて逃げようと判断しました」

 ジョッキーの想定とは真逆のダッシュでハナを切ったとなると、その後の折り合いが難しくなりそうなもの。とりわけドゥレッツァは逃げる競馬も初めてだけに、なおさら馬がパニックになったとしてもおかしくない。しかし、この初体験ということが功を奏した。

「ドゥレッツァはこれまで逃げたことがなかったので、ハナを取った時に馬がビックリして物見をしたんです。それで馬が冷静になってリラックスしてくれましたし、息も入った。その後はマイペースで走ってくれましたね」

 レース前のプランからはまったくかけ離れた位置取りとなったものの、引っかかることもなく手の内に入れてしまえばもうこちらのもの。なぜなら、ルメール騎手にはドゥレッツァの長距離適性に絶対的な自信を持っていたからだ。

「この馬は絶対にスタミナがあるから、冷静に走ってくれたら3000mは絶対に行けると思っていました」

「イン追走・3角下りは我慢」が淀の長距離攻略の鉄則

【逃げて、いったん控えて、最後は突き放す――まさに変幻自在の騎乗を見せたルメール騎手、天皇賞・春と合わせて淀の長距離GI連勝となった【Photo by Shuhei Okada】】

そして、名手の真骨頂は2周目の向こう正面を過ぎてから。そのまま逃げに徹してハナにこだわるのではなく、後続がペースを上げたと見るや、これに付き合わずパクスオトマニカ、リビアングラスの2頭を先に行かせて自身は3番手のインにいったん控える選択をしたのだ。

「京都の3000mは長いです。大外を回したら3200mを走ることになってしまうから無理ですし、インを走りたい。そして、向こう正面の坂が大事。ここで我慢をしないといけない。だから3番手に控えました」

 まさに変幻自在とも言える騎乗だが、今春の天皇賞・春もジャスティンパレスで制しているルメール騎手の淀長距離レース攻略の鉄則――それが「イン追走・3角下りは我慢」。周囲の急激なペースアップにも惑わされずに、これをきっちり遂行した結果、ドゥレッツァのラストの豪快な伸び脚につながったというわけだ。

「4コーナーの動きも良かったですし、直線ではパワフルストライドを使ってくれました。ドゥレッツァが能力を見せてくれたと思います。逃げることはリスクがありましたけど、馬の状態は完璧でした。だから、リスクを取りました。みんなビックリしていましたけど(笑)、勝てて良かったですね」

ルメール太鼓判「トップホースになれる」

【12月の香港国際競走にも登録しているというドゥレッツァ、次走での古馬との対決に注目だ【Photo by Shuhei Okada】】

未勝利から5連勝で一気に世代の頂点へと立ったドゥレッツァ。それだけではない、重賞初挑戦での菊花賞勝利はグレード制を導入した1984年以降、1986年メジロデュレン、1990年メジロマックイーンの兄弟以降、史上3頭目だという。兄デュレンはその翌年に有馬記念を制し、弟マックイーンは天皇賞・春連覇を果たすなど一時代を築くチャンピオンホースとなった。では、ドゥレッツァの将来性はどうだろうか?

「今日は強い3歳馬の中ですごく良い競馬ができました。2000m以上のレースなら絶対にGIレベルの結果を出せると思います。古馬は強いけど、彼はもっとタフになれると思いますし、長い距離でトップホースになれると思います」

 ルメール騎手がこう太鼓判を押す一方で、尾関調教師も「将来を楽しみに大事に使ってきた馬ですが、この時点でGIを勝ってくれて、思った以上の成長度です。今後、3000m級も選択肢になりますし、ここまでチャンピオンディスタンスで走ってきた馬でもありますから」とジョッキー同様、2000~3200mの幅広いレースをターゲットとして捉えている。香港国際競走にも登録しているとのことで、年内に走るとすればジャパンカップ、有馬記念、香港のいずれかになりそうだ。

 23年ぶりとなった菊花賞でのダービー馬vs.皐月賞馬の対決だったが、結果は春二冠未出走どころか重賞すらも初挑戦だった馬の下剋上で幕。しかも、タスティエーラ、ソールオリエンスが揃って凡走した中での波乱ではなく、この2頭が能力を出し切った中での真っ向勝負で2、3着に負かしているのだからフロックなどはあり得ない。正真正銘、ドゥレッツァが実力で勝ち取った価値ある最後の一冠だ。まさに遅れてきた大物、牝馬三冠を達成したリバティアイランドと同じドゥラメンテ産駒からまた1頭、3歳世代の真打ちが菊の季節に現れた。(文、取材:森永淳洋)
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