ラグビーW杯で判定が物議…基準は? 「選手&レフリー」の近藤雅喜が解説

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よりクレバーで、よりスマートで、なお激しく戦えるか

イングランドはSOジョージ・フォードの27得点でアルゼンチンを撃破 【写真:ロイター/アフロ】

――近藤選手は現在レフリーとの二刀流に挑戦しています。前回大会は選手目線で見ていて、今回大会ではレフリー目線が加わったと思いますが、実際に見ていかがですか?

 2019年の前回大会はフィジカルの部分で見ると、そこまで強度のない試合もあったと感じましたが、今大会のここまでを見ると「フィジカルの部分が向上したうえに規律も問われる」試合になっていると思います。

 三重ホンダヒートのアナリストの山口真澄さんと、試合の詳細を調べて2人でいつも話しているのですが、やはり「ペナルティーの数が少ないチームが最終的に得点で上回っている」というポイントがあります。
 同時に、ラグビーはよりフィジカルになっていて、フィジカルが激しくなるとペナルティーも増えやすくなるのですが、そこで規律も守ることができるチームが勝つ可能性が高まります。見ている方にとってはより面白くなると思いますが、実際に戦うチームとしてはかなり難しいミッションになっています。

 よりクレバーで、よりスマートで、なお激しく戦えることが今大会の鍵になるのでは……と個人的には感じています。

――ここまでで印象に残る試合はありましたか?

 日本と同じプールDのイングランドvs.アルゼンチンです。
 前半3分にイングランドの中心選手であるトム・カリーが退場しました。イングランドにとっては絶体絶命のピンチで、多くの方々はアルゼンチンが有利になったと思ったはずですが、実際には残りの77分でイングランドはノートライでもペナルティーゴールとドロップゴールの3点を積み重ねて勝利し、アルゼンチンはイライラして不完全燃焼で終わりました。

 イングランドは14人で戦うことを準備していたと思います。実際に試合で蹴った回数はイングランドが倍以上で、ボールをつないで走り合う展開にはせずに、とにかく蹴ってアルゼンチンのミスを誘う流れにしました。
 城のように防御を固めて、キックでエリアを稼いで、相手の反則で得点を重ねる……というこの戦い方は、今大会の興味深いポイントになると思います。

日本にとって最大の山場となるイングランド戦

日本のターゲットとなるイングランド戦が迫っている 【写真:ロイター/アフロ】

――日本代表のチリ戦を見て、反則への意識はどのように見えましたか?

 チリ戦では危ないプレーがなく、規律が高かったと思います。チリが勝利を狙ってかなりチャレンジングな姿勢で来ましたが、日本はコントロールされていて、選手それぞれの意識が高いと感じました。

――日本(世界ランキング14位)はここからイングランド(同6位)、サモア(同11位)、アルゼンチン(同10位)と強敵との対戦が続きます。気をつけるポイントは?

 まず大一番は今週のイングランド戦になると思います。最大の山場であり、最大のターゲットになるでしょう。日本がアルゼンチンのように反則が増えてしまうと同じように敗れてしまうので、規律の徹底が大事になります。選手目線でも、レフリー目線でも、日本代表の戦いを楽しみにしています。

 レフリーはニカ・アマシュケリ(ジョージア)さんが担当します。日本代表はこれまで彼に何度か吹いてもらっていて特徴がわかっていると思います。個人的には、ユース世代のトッププレイヤーからレフリーへ転向したアマシュケリさんが、スクラム、ブレイクダウン(タックル後のボール争奪戦)をどうマネジメントしていくか、注目しています。
 チリ戦は僕が尊敬するオーストラリア協会のニック・ベリー(トッププレイヤーからレフリーに転身)さんが試合を吹きましたので、非常に楽しみな一戦でした。NZ協会のベン・オキーフレフリーも尊敬する一人です。経験豊富で昨シーズンのリーグワンでも試合を担当しました。W杯で日本戦も担当するので、そのあたりもご注目ください。

(取材・文:安実剛士/スポーツナビ)

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