新スタジアム開業に向け進化を続けるV・ファーレン長崎 イベントで観客をもてなすクラブの思いとは――

伊藤一郎

クラブ史に刻まれる複合施設・長崎スタジアムシティの開業

日本初のスタジアムビューホテルを含め、複合的な商業施設でサッカー観戦と日常はより近づく ※施工上の都合等により今後デザイン含め変更の可能性があります 【提供:ジャパネットホールディングス】

 一時は企画の中止も検討にあがった企画は、こうして見事に変貌を遂げた。さらにコロナ禍という時代背景にもうまく則した形を作り上げたことでクラブ、選手、サポーター、スポンサー企業とV・ファーレン長崎というクラブに関わるすべての人たちがポジティブになれる仕組みを作り上げたことは、スポーツクラブの“イベント”として誇るべき成功ケースとなった。そして、V・ファーレン長崎は24年に控えるクラブ史に刻まれる一大イベントに視線を向けている。それが長崎スタジアムシティの開業だ。

「基本的にJリーグの試合はエンターテインメント、興行だと考えています。世の中にいる人たちは土日の使い方を買い物に行くか、映画を見に行くか、それともサッカーの試合を見に行くか。そういった選択肢の中から選んでもらわないといけない。そのときにサッカーという軸だけだとサッカーが好きな人以外にはなかなか響いていかない。一つのレジャーとして考えていただけるようにするにはサッカー以外の部分がかなり重要なウェイトを占めると思っています」

 そう語るのは事業担当の平田知哉さんだ。長崎スタジアムシティという名称が示すようにこの施設にはスタジアムを中心にオフィス、商業施設が複合的に組み込まれたものになっている。
「商業施設とスタジアムの間にも比較的スペースがあるので、そこでイベントをすることで商業施設に来ていたお客さんが試合に対するイベントを見て興味を持っていただく。来た人を満足させる取り組みが今のホームゲームでは大きなウェイトを占めていますが、長崎スタジアムシティではイベントとスポーツの両軸を成り立たせ、多くの方に来場いただけるんじゃないかなと思っています」(平田)

 トランスコスモススタジアムでは「サッカーを見るために」という明確な目的を持った人にしか働きかけることができなかった。それが複合施設となることで違う目的を持った人たちに働きかけることができる。イベントのターゲットが広がる点は大きなメリットになるという。

「最初が大事だと思っていて、これだけ話題になっているので長崎スタジアムシティでの初めての試合では大きな取り組みがなくても満員になると思っています。ちょっと楽観視し過ぎかもしれないですが、ただ、そのときに来場してみて、満足度が低かったら次も行こうとはなかなかならない。なので、その試合に来たときに120点の気持ちで帰ってもらうことがその後、集客していくうえでの大事な要素だと思っています」(平田)

友人や恋人、家族が食事を楽しみながら応援できる席も魅力のひとつ ※施工上の都合等により今後デザイン含め変更の可能性があります 【提供:ジャパネットホールディングス】

 その肝心な“最初”は徐々に迫っている。2023年5月末時点でスタジアムの進捗状況は「25.2%」。会社内での会議ではスタジアムチームからスタジアムの様子が中継されるといい、平田はその光景を見るたびに「気が引き締まる思い」になるという。スポーツクラブとして向き合ってきたイベントの在り方。新スタジアム開場というクラブ史に残る一大イベントをどんなものにV・ファーレン長崎は作り上げるのか。その日を楽しみにして待ちたい。

長崎スタジアムシティの誕生はV・ファーレン長崎にどのような効果をもたらすか ※施工上の都合等により今後デザイン含め変更の可能性があります 【提供:ジャパネットホールディングス】

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