ブルペン捕手目線で語られる歴史的Vの裏側 WBC準決勝・決勝を鶴岡慎也&五十嵐亮太が振り返る

柴山高宏(スリーライト)

侍J投手陣にダルビッシュが残したもの

チームの精神的支柱となったダルビッシュ。栗山監督に次いで宙を舞った 【写真:共同通信社】

 第4回(最終回)は、決勝のアメリカ戦を回顧。ベッツ、トラウト、ゴールドシュミットら、MLBのスター軍団を相手に憧憬の念を捨てて挑んだこの試合の先発は今永昇太が務めた。1回表を無失点で切り抜けるも、2回表にターナーに本塁打を浴びてアメリカが1点先制。しかし、日本はその裏に村上の本塁打などで2点を返し逆転。4回裏には岡本和真の本塁打で加点。このリードを、戸郷翔征、髙橋宏斗、伊藤大海、大勢、ダルビッシュ有、大谷翔平ら7投手の継投で守り抜き、3対2で勝利。見事世界一に輝いた。

 今大会を通じて、あまり調子が良くなかったダルビッシュ。8回に登板したこの試合ではシュワーバーに本塁打を打たれ、1点を返された。ブルペンでダルビッシュの球を受けていた鶴岡さんは「変化球はそれなりに行けると本人も感じていただろうが、真っ直ぐが走っていなかった」と振り返る。

 失点するシーンこそ散見されたが、五十嵐さんは「ダルビッシュの存在は大きかった。侍ジャパンに多大な影響を与えた」と言う。鶴岡さんも「若い投手が自分の実力を出し切ることができたのは、彼が宮崎キャンプから参加したおかげ」と言い切る。

 そして、「WBCが終わり、彼はいろんなものを若手投手たちに残していった」と鶴岡さんは言う。日本球界がますます発展していくことを鶴岡さんが確信した「ダルビッシュが残したもの」の詳細は、動画で確かめてほしい。

「僕らの常識は大谷翔平には通用しない」

 日本が3対2とアメリカを1点リードして迎えた9回。マウンドに上がった大谷の前に立ちはだかった最後の打者は、奇しくもエンゼルスの同僚・トラウトだった。動画では、今大会屈指の名勝負に臨む大谷が、6回と8回にブルペンで行った準備の様子が明かされる。

 大谷がリリーフ登板するのは、2016年のCSファイナルステージのソフトバンク対日本ハム以来。「6回にブルペンに来たときはベンチに座る程度で特に何もしていなかった。久しぶりのリリーフ登板ということもあって、ペースをつかめていなかったと思うし、ここで一度ブルペンに行くことで、投手モードに切り替えたかったのではないか」と鶴岡さんは分析する。

 そして、大谷は8回に入念に準備を行って、9回のマウンドに上がった。「先発と中継ぎでは(大谷は)全然雰囲気が違った。先頭打者のマクニールに四球を出したものの、次の打者のベッツがまさかのゲッツー。(最後の打者となったトラウトとの対戦は)栗山監督が思い描いた画の通りになった。僕らの常識とかいろんなものは、大谷翔平という選手には通用しないのだろう」と、鶴岡さんは感嘆している様子だった。
『WBC激闘の舞台裏』シリーズ最長時間となった第4回。決勝の先発を務めた今永、大谷の球を初めて捕球した中村悠平に関するエピソードなど、見どころはたくさんある。「WBCロス」に陥った野球ファンの心の隙間を埋めてくれること請け合いの動画を、ぜひ楽しんでほしい。

 第4回は最後に、鶴岡さんが選ぶ「侍ジャパンブルペンのMVP」を発表する。「最後に喋るとわかっていたのに、シリーズを通じて何度もその名を挙げてしまった」と鶴岡さんが語る、貢献度の高いリリーフ投手は一体誰だろうか。ヒントは第1回から第3回の動画に隠されている。再度見直して、予想してみてはいかがだろうか。

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