本多雄一が新人時代に犯した"サヨナラエラー" その失敗と向き合い一軍定着へ
失敗と向き合う
でも、当時の王監督も森脇浩司コーチも、僕を見捨てずにいてくれました。
特に森脇コーチは、とにかく練習につき合ってくださった。
来る日も来る日も、ボールを捕った。くやしくて、恥ずかしくて、自分に腹が立つ気持ちは収まりません。
家に帰っても、悶々としています。
「切り替えろ」
こういうときは、そんな言葉を使うもの。プロ野球は毎日試合が続くし、ミスは誰にでもある。マイナスの気分を引きずっていては、現在進行形のプレーに影響してしまうからです。
でも、正直に言えば、僕は気持ちを切り替えられたことがない。現役時代はほとんどずっとそうでした。
中には、あっけらかんと翌日には元気な人もいます。
「切り替え方を教えてほしい」
と思いました。そうできる人も、本当は切り替えたように見えて、そう装っているだけなのかもしれません。
でも、僕はそれさえできないし、恥ずかしくて、自分を大きく見せるなんて、滅相もない気がしてしまう。
できることは練習だけです。
いろんなことも考えます。ホークスの本拠地である福岡Yahoo! JAPANドーム(現・福岡PayPayドーム)のような人工芝の球場では、イレギュラーは起きにくいものです。
でも、スカイマークスタジアムのような天然芝と土の球場では、イレギュラーを考慮した守備が必要だと思いました。
あの打球は高めのバウンドでした。そういう打球が来たら、「イレギュラーがあるかもしれない」と思考して挑む。グラブを地面近くまで下げ、そこから上への動きで合わせるイメージをしました。
考えただけでは、身につきません。繰り返し練習が必要です。
ただ、いくら練習の場であっても、イレギュラーは自由に起こせるものではありません。だから、キレイにバウンドしている打球に対し、「イレギュラーするかも」とイメージしながら捕球する練習に取り組みました。そんなことを必死にやっていると、「恥ずかしい」と思っていた感情が消えていきました。他人の目は気にせず、ひたすらボールを追いかけ反復しました。
恥を感じている段階では、僕は練習と向き合えていなかったのだと思います。やるべき準備をせずに隠そうとしているから、そうなります。
でも、練習を続ける中、すべて準備して挑んでダメだったら、それは仕方ないと割り切れるようになっていきました。
失敗しても、時間が過ぎることで忘れる人もいます。
それでは、何も変わっていないし、同じような状況になると、またミスを繰り返します。しかし、練習して技術が上がれば、同じことにはならない。
それでもミスは起きます。でも、僕がやったようなインパクトのあることは、あまりなくなるものです。
失敗はするもの。恥ずかしがることもない。
とにかく、それと向き合うことが大事なのだと思っています。
一般社会で活躍されるみなさんにも、忘れられない失敗の経験はあるのではないでしょうか? 特に若い頃にした失敗は、色鮮やかに残っているものです。
何か迷ったときは、その逆境を乗り越えた姿勢と事実を、自信に変えることも大切なのかもしれません。