書籍連載:本多雄一「選ばれる人になるための習慣」

本多雄一に聞くWBC 周東や牧原の"ジョーカー"に期待

田尻耕太郎

ソフトバンク二軍内野守備走塁コーチを務めている本多雄一氏 【本人提供】

 現役時代は福岡ソフトバンクホークスで活躍し、2013年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場した本多雄一氏。現在はソフトバンク二軍内野守備走塁コーチを務めている。野球界のトップを走ってきた本多コーチに、2013WBCの思い出や、2023WBCの注目ポイント、自身の著書『選ばれる人になるための習慣』(KADOKAWA)についての話を聞いた。

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WBCのメンバーに選んでもらったことは自分の財産

――現役時代、2013年の第3回WBCに出場。侍ジャパンに選出された時の気持ちを覚えていますか?

 もちろん。嬉しい気持ちと誇らしさは当然ありました。でも『僕なんかウソでしょ』というのが率直な気持ちでした(笑)

――2010年から2年連続盗塁王など実績十分だと思いますが。

 あの時は正遊撃手が若い坂本勇人でしたが、ほかの内野手は松井稼頭央さんや井端弘和さん、鳥谷敬さんという実績十分な先輩ばかり。本職がセカンドという意味では僕だったかもしれませんが、そういったメンバーの中で自分が選ばれたことに胸を張ることが出来なかった。結果的にいえばほとんど試合に出ていない(4試合出場、2打席)ので、自分のことをきちんと分析できていたような気もしますが(苦笑)

――ソフトバンクでは不動のレギュラーでしたが、侍ジャパンでは役割が違った。難しさもあったのでは?

 メンバーに選ばれて合宿をして、強化試合など行う中で、自分の役割はスタメンよりも代走とか守備固めになるのかなと感じてはいました。打撃の良い選手は他にいっぱいいる。日本代表として勝つために、自分の役割を全うしようという気持ちに切り替えることは難しくはありませんでした。だけど、もう一方でスタメンに選ばれるかもと期待していたのは本音ですし、もしその時が来ても驚かないように、常に『スタメンで俺は出るんだ』という気持ちで練習に臨んでいました。

――冷静な自己分析をしつつ、野望も忘れないのが大切ということですね。

 そのバランスですよね。また、侍ジャパンの一員としてWBCという闘いに臨むのは、それまでに感じたことのない緊張感でした。普段のプロ野球とは違い、一発勝負というのが大きかったと思います。

――普段のチームと日本代表という組織において、雰囲気の違いなどありましたか?

 世界一という同じ目標に向けて結束はしていました。だけど、普段は他のチームのライバル同士だし、心の底では侍ジャパンの中でのポジション争いも勝ちたいという思いも働いていたと思います。ハイレベルな選手が集うからこそ漂う、シビアな空気があったと思います。

――2013年WBCといえば、東京ドームで行われた第2ラウンド1回戦の台湾との激闘が印象的でした。

 あの試合ですね。劣勢で試合が進み2対3の9回表、鳥谷さんが盗塁を決めて井端さんのタイムリーで追いついた試合。僕もすごく興奮しました。その一方で、もし自分が一塁ランナーだったらと何度も想像します。鳥谷さんのようにあそこで盗塁する度胸というか、それを味わってみたいと思いますね。

――本多コーチは8回表に代走で出場して、その後ホームを踏んでいます。

 打ってくれたバッターにもちろん感謝なのですが、自分としてもすごくホッとしたというか、ようやく日本代表に貢献できてこのチームの一員になれたという気持ちでした。

――侍ジャパンは準決勝のプエルトリコ戦で敗退しました。(※侍ジャパンが0対3で迎えた8回裏、反撃に転じた。鳥谷の三塁打を口火に井端のタイムリーでまず1点を返した。続く3番・内川聖一も右前打を放ち、打席は4番・阿部慎之助。一発が出れば逆転となるが、その2球目に一塁走者の内川が猛然とスタート。だが、二塁走者の井端は止まったまま。内川がタッチアウトとなりチャンスが潰えた)

 あのダブルスチールの場面も自分が走者にいれば、どんなプレーをしていただろう…と何度も想像しました。正直な気持ち、もっとグラウンドに立って日本代表のためにプレーしたかったし、自分の力を試してみたかった。完全燃焼しないまま終わってしまった大会でした。だけど、WBCのメンバーに選んでもらったことは自分の財産となりました。月並みですが、その後自分がレギュラーの立場から遠ざかって控えになったり、二軍で過ごしたりした時、WBCでの経験がすごく生きたと思います。

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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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