進化を続ける早田ひなは「パリで勝つ」 五輪選考対象の女子シングルスで快勝発進

平野貴也

バックアップメンバーだった東京五輪を経て、パリ五輪出場争いで首位

五輪出場のポイント争いではトップを走る早田だが、後続には強力なライバルたちが続いている 【写真は共同】

 前日、早田は女子シングルスの戦いに向けて「どの選手も本当に強いですし、どこで負けてもおかしくないと思う。チャレンジャーの気持ちを持って、最後まで、全日本に向けて調整してきたことを試合で出せるように頑張りたい」と話した。日本の女子シングルスのレベルは高く、気が抜けない。女子ダブルスではパートナーである伊藤が117.5ポイントで2位。早田が準決勝に進むために突破しなければならないブロックには、109ポイントで3位につける平野美宇(木下グループ)もいる(編集注:平野は右足甲の痛みを理由に女子ダブルスを棄権したが、シングルスには出場し、初戦を突破)。

 早田は強敵から狙われる立場にある。しかし、パリ五輪の切符は譲れない。東京五輪の代表争いでは、当時の代表選手選考の基準だった世界ランクで伊藤や石川に及ばず、ダブルスの実績から候補の一人と目されていた団体戦要員でも平野が選出された。早田は、バックアップメンバーとして日本代表をサポートする役割で東京五輪に参加。次は自分が五輪を戦うという思いを強くした。

目指すは世界の頂点「中国に勝つまでに進化していないといけない」

 東京五輪の選考段階で戦っていた過去の自分との比較について聞くと、早田は「自分自身との向き合い方」と答えた。全日本選手権のように1日で何試合も戦う中で、疲労を溜めない打ち方、食事の採り方など、感覚を研ぎ澄まして対応しているという。「やっているときは合っているか間違っているか分からないけど、その感覚を1~2週間で覚えておくことで、こっちの方がいいかもと何となくの感覚で分かってくる」と準備段階から細やかな部分に気を配り、どうすればどうなるのか、常に改善の一手を打てる準備をしているという。種目を問わず、試合後のコメントに冷静な分析がうかがえるのは、そのためだ。

 根本に、夢をかなえるための飽くなき向上心がある。五輪を目指していた以前の自分にはない、強い欲求がある。精神面、戦術面に落ち着きと選択の幅が出てきていることに触れると、早田は次のように話した。

「パリ五輪の切符を獲得したとしても、パリ五輪に出るとなったときに、中国に勝つまでに進化していないといけない。私の目標が選考レースで勝つことというより、パリ五輪で勝つために日々やっているので、常に進化させていくことが大事。海外の試合とか選考会で、強い選手や中国人選手と試合をした中での反省を生かして、課題を練習する。技術もメンタルも体力的にも。常に考えながら『チームひな』で話し合いながら行動しています」

 女子シングルスは、26日の4回戦を終えて上位32人の顔ぶれが決まった。27日に4、5回戦を行い、28日以降は準々決勝、準決勝、決勝と1日1試合で進められる。対戦相手のレベルが上がる中、女子ダブルスでも頂点を狙う立場の早田としては、最後まで勝ち切るため、スムーズに勝ち上がりたいところだ。試合の中での改善能力を高めていることが、その中で生かされるはずだ。強豪ひしめく全日本で、早田は3年ぶりに女王となれるのか。世界の頂点へと走る、その中で進化を続ける対応力で激戦を勝ち抜くつもりだ。

2/2ページ

著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント