8度目のNBAジャパンゲームズが開催 “主役”となった八村塁「ホームだったはずが…」

永塚和志

日本での開催、選手の反応は…

八村をはじめ、NBA選手は日本での滞在を楽しんだようだ 【永塚和志】

 水曜日に到着し、2日の試合後には帰路についた両軍。実質5日間にも満たない短い期間ながら、選手やスタッフらも日本の滞在を楽しんだ様子だった。

 2019年のジャパンゲームズでは、ロケッツのゼネラルマネージャー、ダリル・モーリー氏(現セブンティシクサーズ)が、直便に当時、香港で盛んだった民主化運動を支持する旨のメッセージをツイッターで記し中国から内政干渉であると大きな反発を受けるという事態があった。

 これがジャパンゲームズの直前というタイミングだったため、来日したロケッツの面々やNBAのアダム・シルバーコミッショナーはこの政治的な件に関しての質問が数多く飛んだが、今回はそのようなことはなく、総じて有効的な空気がイベント全体を覆った。

 選手やスタッフらは皆、口をそろえて日本という国の美しさや人の親切さ、大会運営のスムーズさなどを称賛した。2016年のオフにプロモーションで来日しているビールは「人々はいつも歓待してくれるし互いを敬っている。日本にはそんな素晴らしい文化がある」と述べた。

 1990年のジャパンゲームズはアメリカの主要プロスポーツチームが北米以外で初めて試合を行った機会となったが、今はNBAを含めたどのリーグでも、競技の国際的広がりを受けて海外で試合を行っている。

「海外でNBAの試合をやるとしたらここを置いて他にはないよ」

 それでもビールは、日本での興行開催をそう言いながら喜んだ。ある意味、リーグのアンバサダーとして来ているわけだから、日本のことを悪く言うはずはない。だが、それはリップサービスではなく、声のトーンから判断しても、真にそう言っているように聞こえた。

 1990年から始まったジャパンゲームズは2003年までレギュラーシーズンの試合として行われ、2019年と今回はプレシーズンとなった。中には真剣勝負の公式戦の復活を望む声もある。しかし、公式戦を持ってくるとなると、今回、組み込まれていた社会貢献活動プログラムのNBA Caresや、ファンイベント「サタデーナイト」といった試合以外の活動に選手らが参加することは難しくなってしまう。NBA副コミッショナー/最高執行責任者(COO)のマーク・テイタム氏は、以上のような理由でプレシーズン開催が「最適」だと話している。

 余談ながら、北米のプロスポーツ選手が来日する際、以前であれば大型家電量販店などでステレオなどの電化製品を買い込んで持ち帰るというのが当たり前の光景だったのだが、今やアメリカにいながらにして何でも手に入るという時代になったという背景もあってだろうか、そのようなことをする選手はいなくなったように感じる。ジャパンゲームズにおけるNBAの選手たちについても、同様だ。

「世界は大きく変わったわけだし、誰もがいろんな物事に対してアクセスしやすくなったというのもあるよね」

 歯に衣着せぬ発言で人気のウォリアーズのスター、ドレイモンド・グリーンは、上記の電化製品うんぬんの話を向けると、そのように答えた。

 現代の選手たちが来日で楽しみにするのは、もっぱら洋服などを購入するためのショッピングと食事のようで、カイル・クーズマは「日本は世界のファッションの中心だからね」とショッピングの時間を心待ちにしていたし、ビールは「僕が今回、楽しみなのはもっぱら食べ物さ」と笑顔だった。ウォリアーズの公式ツイッターでは同チームのアンドリュー・ウィギンズとジョーダン・プールが「ハリネズミカフェ」でハリネズミを手にする写真がポストされたが、今の選手たちの時間の過ごし方は昔とは少し違ってきているようだ。
 最後は、八村の話で締めたい。今回のジャパンゲームズは、上述したように彼が中心のイベントとなった。

「今回の滞在はチームや僕、そしてこの国にとって特別なものとなりましたし、試合でも、試合以外でもいろいろと関わることができて、素晴らしい5日間となりました。文化共有もできてチームのみんながここを気に入ってくれました。可能ならば遠くない将来、また戻ってきたいです」

 第2戦後、自分を生み出した国に用意された舞台にNBA選手として立ち、そして他の選手たちに日本という国を紹介できた誇りを感じさせる言葉を、八村は口にした。

 現実に目を戻せば、来る2022-23シーズンは八村にとってルーキー契約の最終年となるが、先発は確約されておらず、厳しい競争にさらされる可能性は高い。NBAに慣れ、自信を積み重ねてきた一方で、肩にのしかかる重圧は大きい。

 そんな彼の、アメリカに戻ってからの動向が気になる――。今回、会場で、あるいはテレビで彼の凱旋(がいせん)ぶりを見た日本のファンにとっては、なおさらそういった気持ちになったのではないだろうか。

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著者プロフィール

茨城県生まれ、北海道育ち。英字紙「ジャパンタイムズ」元記者で、プロ野球やバスケットボール等を担当。現在はフリーランスライターとして活動。日本シリーズやWBC、バスケットボール世界選手権、NFL・スーパーボウルなどの取材経験がある

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