「DAZN Jリーグ推進委員会」月間表彰2022

J1月間MVP C大阪・毎熊晟矢の信条 「“常に100パーセント”で生き残る」

小田尚史

ハイレベルな中盤の3人に「ついていく」

J2時代以上に「考えるプレー」を大切にしている。右サイドでコンビを組む機会の多い奥埜(左)、松田(右)のポジショニングは、特に意識しているようだ 【Photo by Hiroki Watanabe/Getty Images】

──試合の中で攻守のバランスは常に変化すると思いますが、相手の立ち位置はよく観察していますか?

 相手の位置も見ますし、最近はより味方のポジショニングを意識して見るようにしています。特に見ているのはボランチの奥埜(博亮)選手の位置です。奥埜選手がFWとボランチの中間地点を取れば、自分はそのスペースを空けて外に行くようにしていますし、リキ君(原川力)の横に落ちてビルドアップを助けるような動きをしていれば、自分が(FWとボランチの)間に入るようにしています。

──つまりウイングのように振る舞うときもあれば、サイドハーフっぽくなるときもあると?

 そうですね。

──その使い分けは、奥埜選手のポジショニングがカギになるわけですね?

 奥埜選手の位置や、(右SBの松田)陸くんが内に入るのか、高い位置を取るのかによっても変わります。あとは、(トップ下の)キヨくんがサイドに流れてくるかどうかも関係してきます。その3人の動きを見て、自分も含めてチーム全体が流動的に動くことができれば、相手も捕まえにくいですから。

──昨シーズンまでの毎熊選手は、スピードやアグレッシブなプレーが印象的でした。ただ、こうしてお話を聞いていると、考える部分もかなり大事にされているように感じます。

 そうですね。プレー中に頭の中で考えていることは多いですね。

──今シーズンからよりレベルの高いJ1で戦う中で、これまで以上に考えてプレーする楽しさを感じている?

 難しさもありますし、うまくいかないことも多いですが、そこにやりがいや楽しみを感じながらやっています。

──C大阪では特に中盤の3人、清武選手、原川選手、奥埜選手のレベルは非常に高いと思いますが、ポジショニングなどで迷ったときは、彼らにアドバイスをもらいますか?

 まずは、「(3人に)ついていかなくては」という意識でやっています。もちろん、分からないことがあれば聞くようにしていますが。

──コミュニケーションを取る機会が一番多いのは、縦の関係を組む松田選手ですか?

 そうですね。

──何か松田選手から教わったことはありますか? 

 サイドハーフとして、後ろやボランチとの距離感を見ながら守備をすることですね。自分がSBでプレーするときは、陸くんから教わったように、もっと前の選手を動かさないといけない。今は、陸くんが後ろにいる安心感がありますね。2列目として勢いを持って、高い強度で守備に行けるのも、後ろの安心感があるから。自分もそういう部分は見習わないといけません。陸くんはビルドアップでの数的優位の作り方やポジショニングもうまいですし、プレーに無駄がないですね。

100パーセント、気持ちで走っている

最後まで落ちないスプリントも魅力の1つ。第15節の浦和戦で89分にダメ押しのゴールを決めたように、試合終盤での活躍が目を引く 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

──J1でプレーして数カ月が経ちました。あらためて感じることは?

 足元の技術が高い選手が多いのはもちろんですが、何より判断のスピードやプレーの質が(J2とは)全然違います。そこはもっと高めていかないと。今の自分の一番の課題です。

──近年はJ2からJ1へステップアップする選手も多いですが、プロになってからの2年間は、そういった選手たちをどんな風に見ていましたか?

 刺激を受けましたし、「早くあの舞台でやりたい」という思いが強くなりました。昨シーズンの長崎では、「自分も絶対に(J1で)やれる」という気持ちでプレーしていましたね。

──今シーズン、同じようにJ2からステップアップしてきた上門知樹選手や中原選手とは、練習後も一緒にいる姿をよく見かけます。中原選手はポジション争いのライバルでもありますが、普段の関係性は?

 普通の話をしていますよ(笑)。今だって、僕が輝くんより優っているから試合に出ているわけではなくて、チームがやっているサッカーの状況で、僕が出させてもらっているだけだと思っています。第2節からずっと輝くんがスタメンでしたし、まだこのポジションは輝くんのものだという思いも強いんです。なので、自分はもっともっと頑張らないといけない。

──浦和戦後の「1試合1試合、(先発の)11人の中に生き残るためにプレーしています」という言葉が印象的でした。普段の練習から、どのようなメンタルで取り組んでいますか?

 練習から100パーセントでやりたいという思いは、小さい頃からずっと変わりません。サッカー選手を長く続けるには、ケガの予防も考えて、80~90パーセントでやった方がいいのかな、と思うこともあります。ですが、自分はそんなにレベルが高い選手でもないですし、この世界で生き残っていくためには、常に100パーセントで練習に取り組んで、もっともっと成長しなければいけないんです。

──5月は試合終盤での活躍が目立ちました。最後までスプリントできるのは、もともとスタミナがあるからなのか、それとも気持ちで踏ん張っているのか。どちらですか?

 正直、自分はスタミナがある方ではないと思っていて。学生時代も素走りは上位ではなかったですし、大学では部員の中でちょうど真ん中くらいの体力でした。ただ、試合になったら走れる(笑)。そういう自信はあって。試合終盤は、もう走るのをやめたくなるくらいきついですが、そこはもう気持ちですね。100パーセント、気持ちです(笑)。

──現在の活躍を、きっと長崎のサポーターも喜んでいると思います。

 セレッソに移籍することを自分のインスタに投稿したときも、100件以上のメッセージをもらって。正直、「何か(否定的なことを)言われるかな?」とも思ったのですが、ネガティブなコメントは1つもなかった。それには本当に感謝の気持ちしかありませんでしたし、「絶対にやってやろう」という思いが一層強くなりました。セレッソに来てからも、そのメッセージを見返してから試合に臨んだこともあります。移籍してもう数カ月が経ちますが、最近でも投稿したら毎回、長崎のサポーターからメッセージが届きます。ありがたいですし、今でも力をもらっています。

──C大阪と長崎、2つのクラブのサポーターがついているようなものですね(笑)。長崎のことは、今でも気にかけていますか?

 はい。(セレッソでの練習や試合と)時間が重なっていなければ、毎試合、見ていますね。

──では最後に、今後の抱負をお願いします。

 今回、5月の月間MVPに選んでいただいたのですが、結果以外はまったく納得していません。少しも満足していないので、もっといろんな部分でレベルアップしたい。今後も、セレッソが上位争いをしていくための力になれるよう、1日1日の練習を大切にやっていきたいと思います。これからも応援、よろしくお願いします!

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

1980年生まれ。兵庫県出身。漫画『キャプテン翼』の影響を受け、幼少時よりサッカーを始める。中学入学と同時にJリーグが開幕。高校時代に記者を志す。関西大学社会学部を卒業後、番組制作会社勤務などを経て、2009年シーズンよりサッカー専門新聞『EL GOLAZO』のセレッソ大阪、徳島ヴォルティス担当としてサッカーライター業をスタート。2014年シーズンよりC大阪専属として、取材・執筆活動を行なっている。

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