ラモス瑠偉の揺るぎない代表愛「日本代表の力を、勝利を信じてほしい」
みんなのポジティブな思いは選手に必ず伝わる
“ドーハの悲劇”は「運命だった」と振り返る。日本に初のワールドカップ出場権をもたらすため、チームの全員が最後まで死力を尽くした 【写真:岡沢克郎/アフロ】
最後のアメリカW杯アジア最終予選(1993年)は、ちょうどプロ化した年。自分たち(日本代表)がうまくいかなかったら、Jリーグがどうなってしまうのかと。大きなプレッシャーがあった。だから、絶対に火を消しちゃいけないという覚悟と責任を持って、みんな戦っていた。
――残念ながら、W杯本大会にはあと一歩届きませんでした。
運命だなと。あれは起こるべくして起きた出来事、お前たちはまだまだだと神様が言っている。楽じゃないけれど、これからの4年間を頑張れば、またチャンスを与えると。そう言われているような気がした。本当の理由なんかわからないけれど、何かがあった。ただ、W杯に行けなかったのは誰のせいでもない。運命。
――その何かとは?
言い訳するつもりも、逃げるつもりもないけれど、自分たちにはあらゆる意味で経験が足りなかったのは事実。当時は海外でプレーしている選手もいなかったし、強い国と戦う経験も乏しかった。そういう機会がもっとあったら、よかった。ただ……。
――どうぞ。
W杯には行けなかったけれど、最後の瞬間まで自分たちは必死に戦った。本気で戦った。そのことだけは胸を張って言える。そして、誰よりも悔しい思いをしたのは自分たち。それも間違いない。本当に眠れなかったし、本気でサッカーを辞めようとさえ思った。今でも夢を見るんですよ。W杯の本大会でカズとキックオフしている光景をね。負けて悔しくない選手なんて一人もいない。負ければ本当につらい。それがW杯最終予選ともなれば、なおさらそう。だから、ファン・サポーターには寄り添ってほしい。それが代表の大きな力になる。絶対に必要。みんなのポジティブな思いは伝わる。必ず伝わる。私は身をもって、それを経験したから。
本大会に勝ち上がってベスト8?いや、ベスト4に行ってほしい
森保監督は93年10月にドーハの地で悔しい思いをした一人だ。ラモス氏は「苦境に直面しても、乗り越えて行ける」と、かつて一緒に戦った仲間を信じる 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
そう。W杯に行けなかった私たちの思いも背負って、彼はずっと戦ってくれている。現在は監督という立場だけれど、当時も今も日本サッカーの未来を考えて戦っている。
――ラモスさんにとって、森保監督とはどんな人物ですか?
本当に真面目。誠実だし、裏切らない。代表の誇りやプライドをしっかり持っている男。そして、選手時代から本当に他者のことをよく考えていた。気遣い、気配りね。今でもそう。ちょっと選手たちに気を遣いすぎじゃないかと思うくらい。あなたが監督だよと(笑)。本当に賢い選手で、読みもよかった。ポジショニングも天下一品。当時から指導者としての資質があったと思う。そして、何よりもハートが強かった。そうじゃなければ、私に追い出されていたよ(笑)。
――また、いつも感謝の念を口にする方でもありますね。
苦労してきた証。苦労すればするほど、周りへの感謝の思いもまた、強くなる。今の代表選手たちを見ても、吉田(麻也)や長友(佑都)なんかは、そういう男たちでしょ。日本サッカー界への感謝の念、恩返しの思いを強く持っている。
――そこは時代を問わず、日の丸を背負って戦う選手たちに共通するわけですね。
感謝、恩返し、リスペクト。それが大事という点で、私とぶつかる人はそうはいない。義理と人情、仁義の世界。私は子供の頃から、それを大切にしながら生きてきた。そういう人たちが集まったチームは強い。
――選手のみならず、監督も。
森保はフェアな男。彼の思いは伝わっているだろうし、選手たちの信頼は高いと思う。だから、苦境に直面しても、乗り越えていける。うまくいくよ。
――森保監督に対し、メッセージを伝えるとしたら何でしょうか?
周りの雑音なんか、気にするなと。ブレずに、自分の信じたことをやり続ければいい。まぁ、私なんかが言わなくても、その覚悟があるからこそ、代表監督をやっているんですよ。それがなければ、とっくに尻尾を巻いて、逃げ出しているよ。
――あのカタールでW杯の本大会が開かれるというのも因縁めいています。
私たちは地獄を見たからね。もちろん、森保も。あの“ドーハの悲劇”を経て、彼がどんな生き方をしてきたか。神様はちゃんと見ているはず。本大会に勝ち上がって、ベスト8? いや、ベスト4に行ってほしいね。とにもかくにも、日本代表の力を信じてほしい。その思い、パワーは半端じゃないから。この国がひとつになれるかどうか。そこが試されていると思う。だって、みんなの代表だよ? みんなで戦う試合だよ! いったい何が不満? 文句や批判、そんなものは終わってから、いくらでもすればいい。冗談じゃないよ! 今はみんながひとつになって応援しなきゃダメなんだよ。だからこそ「全日本」で後押ししなきゃいけない。私は心から森保と日本代表、オールジャパンの勝利を信じてるよ!
(取材協力:KAKU SPORTS OFFICE)
(企画構成:YOJI-GEN)
ラモス瑠偉(ラモス・るい)
ラモス氏が現役時代に着た日本代表のユニホーム。94年W杯予選でもこの青いシャツをまとって戦った 【KAKU SPORTS OFFICE】
【試合情報】
AFCアジア予選 -ROAD TO QATAR-
第9戦 オーストラリア代表vs日本代表
3月24日(木)18時10分キックオフ(17時30分配信開始)
DAZNにて独占配信