参加動機によるテニススクール会員の類型化 : 福岡の民間テニスクラブを事例として

日本スポーツ産業学会
チーム・協会

【イメージ写真】

テニスへの参加動機からプログラムを構築する知見を得る

日本において、テニスは多くの実施者を有する人気のあるスポーツ種目ですが、このテニス実施者に対する受け皿として、民間テニスクラブは重要な役割を果たしていると考えられます。
特に、会員へレッスンプログラムの提供を行う「テニススクール」はテニスクラブにおける中心的なコンテンツとなっていますが、日本テニス協会による報告書から、会員の年齢層の高齢化や収益の減少傾向が示唆されており、今後の効果的なマーケティング・マネジメント戦略の検討が喫緊の課題であることが覗えます。

さて、このテニススクールですが、全国にある様々なテニスクラブのWEBサイトを閲覧してみると、「上級クラス、中級クラス、初級クラス」といった形で、技術レベルの違いによってプログラム設定(クラス分け)がなされているケースが非常に多くみられます。しかしながら、テニス実施者がレッスンプログラムを受講する理由として、健康の維持増進、技術の向上、あるいは他者との交流など多種多様な動機が存在していることから、レベルによる違いでのみプログラム設定を行うことは、会員のニーズに応えることを困難にしてしまうリスクを孕んでいると考えられます。

このような問題意識から、本研究では、テニスへの参加動機といった切り口からレッスンプログラムを構築していくための知見を得るため、テニススクールの会員を対象に、テニスへの参加動機を測定できる尺度を作成した上で、会員を参加動機の観点からいくつかのクラスター(集団)に分類し、各々における会員の特性を明らかにすることを目的としました。

研究の結果、テニスへの参加動機として「承認」、「人間的成長」、「交流」、「技術向上」、「競争」、「健康・体力作り」、「ストレス解消」といった要因の存在が確認され、各々を測定するための尺度には高い信頼性と妥当性があることが示されました。さらに、この尺度を基に、テニススクールの会員を参加動機の観点から類型化したところ、会員は6つのクラスターに分類される結果となり、また、各クラスターの特性についても把握することができました(詳細については論文をご参照ください)。

本研究を通して得られた知見が今後の民間テニスクラブにおけるレッスンプログラムの展開へ活用されることによって、多くのテニス実施者がテニススクールの受講を通して、より効率的に欲求充足を図ることが可能になると予想されます。
また、レッスンプログラムを担当するコーチに関する人的資源マネジメントといった点に対しても、本研究で得られた成果は有益な示唆をもたらすものであると考えられます。


霜島 広樹 福岡大学スポーツ科学部
武本 みなみ 福岡大学スポーツ科学部
白武 七海 福岡大学スポーツ科学部
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著者プロフィール

日本スポーツ産業学会は「スポーツ産業の健全な発展に寄与できる学会」「産官学の共同による開かれた学会」「国際性豊かな学会」等を中心テーマとし、平成2年に設立されました。 当学会が運営している「SPORTS BUSINESS ONLINE」は、論文誌「スポーツ産業学研究」、情報誌「Sports Business & Management Review」に続く第3の情報媒体として2021年に開設したWebジャーナルです。 コンセプトは「スポーツビジネスのあらゆる情報が集結するオンラインジャーナル」。 本学会が主催するセミナーや学会大会などの情報(案内・プログラム・講演録)や、論文記事情報などを中心に様々な情報を発信しています。

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