大ジャンプの応酬も…小林陵侑二冠にあと一歩 残すは団体戦、日の丸飛行隊は有終の美なるか

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金と銀を分けた3.3点の内訳は…

小林陵侑(右)は2本目のジャンプでリンビク(中央)に逆転を許し銀メダルとなった 【Photo by Clive Rose/Getty Images】

 金のリンビクは2回の跳躍で合計296.1点、銀の小林陵侑は292.8点。その差はわずか3.3点という大接戦の中で、金メダルと銀メダルを分けた差は何だったのか? 熾烈(しれつ)な争いを制したリンビクは、少し悩むようにこう答えた。

「本当に接戦でした。何が違ったのか……わかりません。非常に接戦でした」
 
 両者の差を分けた3.3点の内訳を見ると、飛距離の差が0.9点(0.5メートル相当)。そして風向きと風力を考慮して加減されるウィンドファクターによる差が2.9点、それぞれリンビクにプラスされ、ジャンプの美しさや着地姿勢で採点される飛型点では、小林陵侑が0.5点上回っていた。ジャンプでは向かい風が強い方がより大きな浮力を生み、飛距離を伸ばすことができるため、有利な向かい風には減点、不利な追い風では加点される。2本目のウィンドファクターに絞って比較すると、リンビクは追い風0.24メートルで3.1の加点、小林陵侑が追い風0.09メートルで1.2の加点となっており、ここで1.9点の開きが生まれたことになる。

 大きな違いを生んだウィンドファクターだが、実際の風速で見ると1本のジャンプあたり0.2メートルにも満たないわずかな差。そよ風とも呼べるような微風が、金メダルと銀メダルの差を分けた。

団体戦へ残り3人は?

チームメートに祝福されて笑顔の小林陵侑(中央) 【写真は共同】

 残すは14日の団体戦。もちろん小林陵侑にはエースとして活躍が期待されるが、4人で戦う以上、残り3人の安定したジャンプも期待される。ラージヒル15位の佐藤は1本目133メートル、2本目134.5メートルと一定の飛距離を出したものの、ヒルサイズ前後の争いで上位に入れず、踏み切りのタイミングなどに課題を残す。

「練習がいいにこしたことはないが、試合で結果を出せるようにしたい。これだけ強いエース、ぜいたくなジャンパーがいるのでしっかり準備をして陵侑の足を引っ張らないように」とチームでのメダル獲得へ思いを新たにしていた。

 練習、予選と調子を上げつつあった中村は1本目134メートルと一定のジャンプ。ガッツポーズ、雄たけびを見せたものの2本目は124メートルと安定性が課題。「僕らしさが出たんじゃないでしょうか」と報道陣を笑わせつつ、「(1本目は)ミスも少なく満点に近いジャンプができた。個人戦で失敗したので団体戦はたぶん大丈夫」と妙な自信も見せた。

 小林陵侑の兄・潤志郎は1本目130メートルで「失敗しました」と反省しつつ、2本目134メートルと復調し「いいイメージで今日の試合を終えられてよかった」と自己評価。「男子ジャンプが今まで(女子ジャンプの)影に隠れていたので実は男子がすごいんだよというのを見せられた。このまま団体でもメダルを」と最後の戦いへ思いをはせた。

 団体のメダル獲得となれば銅メダルを獲得した14年ソチ五輪以来、1大会でジャンプ勢による3個のメダル獲得は98年長野五輪以来となる。日の丸飛行隊は有終の美を飾ることができるか?

(取材・文:石橋達之/スポーツナビ)

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