卓球愛に満ちたトークラリー 鬼滅『紅蓮華』作曲者・草野華余子×五輪金メダリスト・水谷隼【特別対談】
日本の小学生のレベルは世界一だが……
14歳でドイツに留学してから、卓球に対する意識も変わったという 【(C)スポーツ企画工房】
水谷 いや、全然ですね(笑)。
草野 ですよね。私にとっての音楽もそうなんですよ(笑)。いつ頃に卓球で生きていこうと思われましたか?
水谷 やはりドイツに行ってからです。14歳でドイツに留学しているので、そこからです。
草野 水谷さんの著書でも、ドイツと日本での練習の違いが書かれていたのですが、日本にいた時の練習はどんな感じだったんですか?
水谷 日本にいた時は毎朝起きてすぐにランニング。それからトレーニングがスタートして、午前と午後で3時間半ずつ練習という感じです。練習時間が長く耐えられなくて、どうしても甘えが出るので、監督の目の前で練習していました。
草野 それはご自分で?
水谷 自分からもありましたし、周りの選手もそこを避けるので、必ず空くんです。監督の前で練習するので、他の選手よりも練習をしっかりすることが多かった。
でも、それがあったからナショナルトレーニングセンターや、明治大学でも監督に近い場所で常に練習するようにしていました。車の免許取りに行く時も先生の目の前で講義を受けました。眠くなるから(笑)。
草野 おぉ、すごい話が聞けた!嬉しいです。ところで、話は変わりますが、水谷さんみたいに世界で活躍できる選手と、できない選手の違いはなんでしょうか?
それと今の選手たちに要求される基準が酷だと思います。僕や張本智和が、五輪や世界でメダルを獲ってきたので、そこを期待される。僕らが特殊過ぎただけで、今の日本の若い選手も10年前のトップ選手と変わらないレベルにいるのに、ちょっとかわいそうな部分はあります。
草野 すごい話……。女子は世界に通用する選手が多いですね。最近バンビの部(小学校2年生以下)とかも見始めているんですけど、本当にすごいです。それでも日本卓球が、中国に打ち勝つには今のままでは厳しいですか?
水谷 小学生の親の熱意はすごいですし、小学校だと世界で一番強い。中国よりも多分強い。ただ、それまでにやり過ぎて、高校、大学くらいからみんな低迷してしまいます。でも、女子はここ10年ぐらいは安泰だと思います。五輪でもメダルはほぼ確定で、中国に勝てるかという状態が10年は続くと思います。
草野 日本の場合、男子と女子の違いは何ですか?
水谷 そこは気持ちじゃないですか。思いが違いますね、卓球で勝つ、人生をかけるというオーラが女子からは溢(あふ)れています。男子は昔も今も卓球で就職して、引退したらコーチでもして、というのが変わっていない感じがします。女子はだんだん「卓球で生きてやろう」という感じに変わって来ました。女子の方が「絶対に勝ってやるぞ」という気持ちが強いですね。