日本最高の投手へたどり着いた思考 ソフトB・千賀がトップである理由 Vol.2

中島大輔

分かった気になるな――ダルの言葉

昨季は6年連続2ケタ勝利を挙げた千賀。今オフに年俸2億円増の6億円、変動制の5年契約でオプトアウト(契約破棄)条項も盛り込まれた大型契約を結んだ 【スポーツナビ】

――野球選手として謙虚に学びながら、同時にプロとしての誇りもあると思います。自分のプレーを通じ、結果的にこんな姿勢を見てほしいとか、伝えたいことはありますか。

 僕が人としてすごく大事だと思っているのはダルビッシュさんに言われた言葉で、『分かった気になるな』。人は大人になればなるほど、思考が固まってくると思います。特に日本では、『これはこういうものだよ』『普通はこうだよ』とされることが多いように感じます。でも、世の中は方程式のように答えが出るものばかりではないので、『分かった気になるな』という言葉は僕の中で突き刺さりまくったというか。どんなことに対しても、常に学ぶ姿勢が必要だと思っています。自分がピッチャーとして“どえらい数字”をたたき出したとしても、『それはその年で終わり。次はこれに挑戦しよう』みたいな感じになると思います。

――「分かった気になるな」という言葉はいつ言われたのですか。

 2019年のオフ、ダルさんの家に2回目に行ったときです。ニュアンスはもっと優しかったと思うんですね。普通に家の中で過ごしているとき、『こういうことにチャレンジしようと思います』と話したら、『でも、この姿勢は大事だぞ』って言ってもらいました。それが僕の中で突き刺さりすぎて、『分かった気になるな』という言葉として捉えています。『ダルさんはこういう考え方の人だから、そういう気持ちになるのか。すげえな。でけえな』って思いました。

――内田さんはNEOREBASEを運営する目標として、「サイ・ヤング賞に輝くアジア人を輩出すること」を掲げ、千賀投手は有力候補と話していました。

 まあ、15年くらい後を見据えて、ここの子どもたちを育てた方が早いと思います(笑)。

――然るべきタイミングが来ないと、語るべきことではないですか。

 そうですね。まだまだ日本でやるべきことは残っていると思うし。2022年の契約がソフトバンクとあるので、それが終わってから話したいですね。

――2021年シーズンについて聞かせてください。4月6日の北海道日本ハム戦でピッチャー返しを捕球する際に左足をひねってじん帯損傷しました。不慮のアクシデントだったと思いますが、そうしたシーズンに10勝3敗、防御率2.66という成績を残しました。

 あの打球に関しては仕方ないと思える部分もありますが、それより前にピッチャー返しがあって、あれが3本目でした。そういう打球を打ち返されている時点で、多分足りないものがあるのではと自分の中では捉えていたので、起こり得る雰囲気だったのかなと。自分がまだまだ良くない状態でマウンドに上がってああなったから、自分の責任だと捉えています。

限界を決めないことがテーマ

――確かに春季キャンプ中に右ふくらはぎの張りがあり、開幕に出遅れました。自分にすべて矢印を向けているから、あのアクシデントも自身の責任という発想になるのですか。

 自分に矢印を向けないと、なんの解決にもならないですし、一歩進めないじゃないですか。周りが『あれは運が悪かった』と言ってくれる分にはいいと思いますけど、その前にもピッチャー返しで足に当てたりしていますし、前兆はあったと思っています。そこからは、気持ち一本でやり過ごした1年間でした。

――こういう発想は生来のものですか。

 いやいや、全然そんなことはないです。適当な人間ですよ。でも、ホークスの中でちゃんとしなくてはいけない立場になってきたからこそ、思うこともあります。いろいろな先輩方の言葉が突き刺さって、そうなっているところもありますね。

――2022年はどういう位置付けのシーズンと考えていますか。

 やっぱり大事なことは、自分がどれだけ前を向いてチャレンジするか。このオフにどれだけやれるかだと思います。『千賀=真っすぐ、フォーク』みたいなイメージがあると思いますけど、そうではない自分を出せるくらい、何を投げても抑えられる状態を常に求めてやっています。結果はあくまで時の運なので、求めるのはそういうことではなくて。限界を決めないことは、僕の中で一つのテーマです。たとえ無理だったとしても、チャレンジしている中で学べることはいろいろあると思いますしね。

――2022年、新しい千賀投手を楽しみにしています。最後に、このインタビューを読んでいる学生選手たちにアドバイスをもらえますか。

 どんな指導者に巡り合えるかは、運もあります。でも本当に大事なことは、自分はどういう練習をやったらうまくなれるかとチャレンジすること。『こういう練習をやったら、うまくなる』と言われたことだけではなく、自分で考えて、間違っていてもいいからやってみる。それで『これはあまり良くないな』『これはいいな』と考えることは、野球以外にもつながってくると思います。自分でいろいろチャレンジして練習メニューを作るとか、考えてみるとか、いろいろやってみることが大事だと思いますね。

<了>

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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