【概要説明】熊本県フットボールセンター 特別インタビュー企画
【©Kumamoto Football Association】
インタビューでは松下さんのルーツやフットボールセンターの構想時期のお話もお聞きしていますので、ぜひ最後までお楽しみください。
「サッカーを通したまちづくり」をカタチに、前例がないからこそチャレンジを!
松下
今回、一般社団法人熊本県サッカー協会が建設する「熊本県フットボールセンター(仮称)」は、単なるサッカー専用グラウンドではなく、私たち一人一人の想いを実現する施設であり、サッカーファミリーはもちろんのこと、嘉島町をはじめとする地域の可能性を育てる場でもあります。
予定地である嘉島町は、県の中心都市である熊本市に隣接し、地理的に県のほぼ中心に位置します。そのため、県内の各遠隔地(県北、県南、阿蘇、天草)からいずれも車で90分程度と利便性が高いうえ、県内でも数少ない人口増加傾向の町です。
同センターは、2022年8月開設を予定しており、熊本県サッカー協会と弊社(同協会100%出資子会社)、そして嘉島町との官民連携事業です。
――町とは、具体的にどのような形で連携しているのでしょうか?
松下
用地取得と造成を嘉島町が行い、協会と弊社は設置管理許可制度を利用し、グラウンドやクラブハウスなどの施設を建設します。
完成後は施設の一部を町に無償譲渡し、施設の管理・運営を弊社が行います。
――事業費は6億円超とのことですが、建設資金はどのように調達をするのですか?
松下
建設費には、JFA(日本サッカー協会)やFIFA(国際サッカー連盟)の助成金のほか、個人・企業からの寄付・協賛金、銀行融資、協会の自己資金などを充てる予定です。
併せて、一部はen.tryを活用した社会的投資ファンドによる調達を行っています。
本プロジェクトのスキーム図 【©Kumamoto Football Association】
これまでスポーツ施設建設の多くは、行政に頼ったものでした。
その場合、どうしても実際に使用する選手などの意見が反映されていないことも多く、施設の利用者からすると「使いにくい」「せっかくの施設がもったいない」と感じることが少なくありませんでした。
建設予定の「熊本フットボールセンター(仮称)」は、全国的にも珍しい民設民営の公共施設となります。
建設時の資金調達はもちろん、その後の施設や芝(人工芝)の更新費用なども、行政に頼るのではなく民間の力で行うことで、より利用者目線に立った施設を目指しています。
しかし、それを長く維持していくためには、日常的に使ってくださるサッカーファミリーや地域住民の皆さんに支えていただく仕組みが必要だと考えています。
その一つが「熊本フットボールセンター応援ファンド」です。
弊社では、今回のファンド組成が、10年、20年後の熊本のサッカー界の発展だけでなく、地域のスポーツ文化を「ともにつくる」仲間づくりにつながると信じています。
――松下さんが、そうした想いにたどり着いたきっかけやルーツは、どんなところにあるのでしょうか?
松下
私は、1983年に熊本県天草市に生まれました。
熊本市内から車で2時間近くかかる地域で、温暖な気候を生かした柑橘類の生産や豊かな水産資源で知られています。
サッカーを始めたきっかけは、小学校4年生の時(1993年)に開幕したJリーグでした。熊本の片田舎の小学校でもサッカーのプロリーグが始まった影響は絶大で、昼休みともなれば学年に関係なく校庭でボールを追いかける日々でした。
幼少期の松下さん(左) 【©Matsushita】
さらに、大学進学後もサッカーを続け、卒業後は(大学の)サッカー部OBで創設したNPO法人で、キッズや小学生、社会人など、さまざまな世代のサッカー指導にあたっていました。そこで、「熊本県フットボールセンター(仮称)」の理念にもつながる「サッカーを通じた地域との交流や地域の活性化」の重要性を学びました。
――どのような形で地域との結びつきを深めていったのですか?
松下
そのNPO法人では、サッカースクールやイベントの企画運営だけでなく、グラウンド作り、地域のスポーツ団体と共同でつくるスポーツ情報誌の作成、サッカー場・フットサル場の運営など、さまざまなことを行っていました。
当時の活動の様子 【©Tsukuba FC.】
このイベントは、当時私が住んでいた地域のさまざまな資源を見つけ、その価値を引き出すことで、そこに暮らす人々がより魅力的なライフスタイルを目指すという趣旨でした。
イベントの準備を進める中で、改めて地域の魅力やさまざまな人に出会い、スポーツクラブの活動も、その地域の一部であることや、選手、スタッフも地域住民であり、多くの人たちに支えられ、関わり合いながら活動できているんだと実感しました。
それまでも、「将来的には熊本に戻りたい」という想いを持っていましたが、この時、熊本に戻ってからの目標が「スポーツを通したまちづくり」と具体的なものになりました。
――そうした松下さんの長年の想いもこもった「熊本県フットボールセンター(仮称)」ですが、施設の中身などはすでに決まっているのでしょうか?
松下
JFA公認の人工芝のサッカーグラウンド2面のほか、クラブハウスも併設しています。
クラブハウス東側にはシャワールームや更衣室、ミーティングルームなどを完備し、平日は一般の方々の会議室や作業スペースとしても使用できます。
また、西側にはスタジオと保育園を配置します。スタジオは、ヨガやダンス等の運動プログラムやカルチャープログラムの会場としてだけでなく、研修や会議等、多目的な利用が可能です。
保育園は、企業主導型保育事業として3〜5歳児までの定員30名で運営する予定です。
そのほかにも、カフェやランドリー、シェアオフィス、コワーキングスペースなどがあり、単なるサッカー施設ではなく、さまざまな形で地域との関わり・つながりを創り出していく場所になると期待しています。
完成イメージ図 【©Kumamoto Football Association】
松下
確かに、このプロジェクトがスタートした当初(2015年)から、さまざまな場で「前例がない」「やったことがない」という言葉を聞きました。
しかし、私は「前例がないからこそ、新しく作りましょう!」「やったことがないからこそ挑戦しましょう!」との想いで、皆さんに協力や支援を訴えてきましたし、そこにこそこのプロジェクトの意義があると考えています。
今回の「熊本フットボールセンター応援ファンド」も、前例のないことを実現するためのチャレンジだと捉えています。
加えて、私たちは「熊本県フットボールセンター(仮称)」建設を、2016年に発生しスポーツ施設にも甚大な被害を与えた熊本地震からの復旧・復興のシンボルと位置付け、県内外に「元気な熊本、新しい熊本」を発信する場としても重要な施設となると考えています。
ぜひ、そうした想いに賛同していただき、私たちと一緒に「自分たちの集う場所・使う場所づくり」「自分たちの未来をよくする試み」に参画してくだされば幸いです。
プロジェクトの概要は以下の関連リンクからご確認いただけます。
※本記事は2021年7月に「en-try」に掲載したものです。
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