久保と堂安の同時替えは正解だったのか? 本田泰人が指摘するスペイン戦の敗因

吉田治良

あそこが冨安だったらと思わざるをえない

アセンシオの決勝ゴールのシーンで、シュートに背を向けた板倉。「あの場面では左足を警戒し、身体を投げ出すべきだった」と、本田氏は指摘する 【写真は共同】

 U-24の若い選手たちも、このレベルで十分に戦えるんだって、大きな自信になったと思う。でも、何が足りなかったかは考えなくちゃいけない。スペインを追い詰めはしたけれど、最後は力尽きたわけだから。結局、足が止まっている時間が、スペインよりも日本の方が長かったってこと。さすがにオーバーエイジ3人は、120分間足が止まらなかったけどね。

 最終ラインで言えば、板倉(滉)も悪くはないんだけど、ポジショニングとか、冨安(健洋)と比べちゃうと、ちょっと不安定だった。良いシュートブロックは何本かあった。でも、左サイドバックの中山(雄太)との関係性もあるんだろうけど、俺にはどうしても相手に食い付き過ぎのように感じてしまうんだ。

 失点シーンの対応も疑問。板倉は足を止めてシュートに背を向けてしまっていた。こういった大事な試合では、この相手のここだけは絶対に抑えなくてはならないという危機管理能力が求められる。アセンシオなら左足をもっと警戒すべきだったし、エリア内で打たれるシュートに対しては、身体を投げ出す必要もあった。あそこが冨安だったらと、そう思わざるをえない。今後、板倉が成長するには、そういったところが課題になるんじゃないかな。

 ただし、まだ3位決定戦が残っている。メキシコにはグループステージで一度勝っているとはいえ、だからこそ向こうは必死になってくるだろうし、特に(開始11分で2失点した)立ち上がりは集中して入ってくると思う。

 日本は基本的に戦い方を変える必要はない。前回対戦時と同様、最初はハイプレスで主導権を握りに行くべきで、大事なのはどこで引くかの判断だろう。

 解説者として、あまり精神論的なことは言うべきじゃないかもしれないけど、ここまできたら、やっぱりどれだけメダルが欲しいと思えるか、だろうね。ベンチも含めた全員が、銅メダルを目指して強い気持ちで戦えば、きっと勝てると信じているよ。

 キーマンを挙げるなら、オーバーエイジの3人と久保かな。スペイン戦の久保はいつもの彼じゃなかった。冷静にプレーすれば、世界でも通用するってことはすでに証明されているんだ。久保がどれだけ平常心で戦えるかが、ポイントになると思うよ。

(企画構成/YOJI-GEN)
本田泰人(ほんだ・やすと)
1969年6月25日生まれ、福岡県北九州市出身。帝京高校、本田技研(現・Honda FC)を経て、92年に鹿島アントラーズに加入。高い守備能力を誇るボランチとして、また統率力抜群のキャプテンとして、チームに数々のタイトルをもたらした。95年10月24日のサウジアラビア戦でデビューした日本代表では、通算29試合・1得点。2006年の現役引退後は、鹿島のアドバイザーやJFAアンバサダー、サッカー解説者など、多方面で活躍する。

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著者プロフィール

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

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