里崎が提言「勝つために使わない覚悟」 星野ジャパン同窓会・バッテリー編(2)
北京五輪ではキューバ戦の黒星スタートに始まり、大会を通して日本ベンチ(右端は里崎)には重苦しい雰囲気が漂っていた 【写真:青木紘二/アフロスポーツ】
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選手選考において何を重要視するのか
その想いに、稲葉ジャパンは応えることができるのか。今回、選出された24名の選手たちの顔ぶれを見て、里崎、成瀬の両氏は「調子が良い選手を連れて行った方がいい」と意見を合わせる。「五輪は24人しか登録できないから、少数精鋭で行かなきゃいけない。特に野球はフォーメーションが必要な訳じゃないし、そのシーズンで活躍した選手の中でメンバーを組む方が、ファンも含めて納得すると思う」と里崎氏は解説。そして「野球ファンが選んでも7割ぐらいは全員一緒。残り3割で個性が出る。最後は好み」と続けた。
その考えで今回の稲葉ジャパンのメンバーを見ると、ルーキーも含めて「今季、調子が良い」に該当するのは、平良海馬(西武)、栗林良吏(広島)、青柳晃洋(阪神)、伊藤大海(日本ハム)といった面々だろう。その一方、田中将大(楽天)、千賀滉大(ソフトバンク)と経験値の高い投手をしっかりと選び、特に野手陣は優勝した19年のプレミア12のメンバーを中心に、これまで稲葉ジャパンで実績を重視したメンバー構成となっている。あとは稲葉監督が“どう使うか”だ。
五輪のマウンドで得たもの
「調子は良くなかった」という状態で代表合宿に参加した成瀬氏だったが、大会では4試合無失点、19奪三振の好投。「自信がついた」と振り返る 【写真:アフロスポーツ】
その前年の07年に16勝1敗、防御率1.81と絶好調のシーズンを過ごした成瀬氏だったが、五輪イヤーだった08年は「前年よりも成績が落ちた」と苦しい前半戦(6勝6敗、防御率3.16)を過ごしていた。そのため、「(07年12月の)アジア予選は代表に選ばれると思っていました」と胸を張るが、「本戦は正直、ないかなと思いました。代表に合流した時も調子は良くなかった」と振り返る。
しかし、本大会ではその不安を払拭する。先発したカナダ戦での7回2安打無失点10奪三振の快投劇を筆頭に、リリーフ3試合でも好投し、計4試合(12イニング)を5安打無失点で防御率0.00。大会最多の19三振を奪う活躍を披露したのだ。「完璧なピッチングだった。俺と成瀬でカナダに負けるはずないと思っていた」と里崎氏。午前11時試合開始のカナダ戦は「4時に起きた」と明かしながら、成瀬氏とのコンビを自画自賛した。それに対して成瀬氏も、「自信がつきました。結果的に五輪をきっかけに、帰国してから良くなった」と語る。
通常、五輪に出場した選手たちは、心身の疲労で大会後の“失速”が心配されるが、08年の成瀬氏は北京五輪のマウンドで自信を回復。実際、シーズン復帰初戦こそ打ち込まれたが、2戦目以降、9月に入っての4試合は2勝0敗、防御率2.84の好成績を残し、翌09年から4年連続2ケタ勝利をマーク。五輪での経験をプラスに変えた投手だったと言えるだろう。