佐藤寿人×柱谷哲二 J-OB新旧会長対談 日本サッカー界への恩返しのために――

青山知雄

現役選手にも意義を伝えていきたい(寿人)

寿人さんはプロサッカー選手会会長に続いて、J-OBでも会長に就任。刷新された新体制のもと、選手会との連携などを進めていくつもりだ 【(C)J.LEAGUE】

――さて、ここからは寿人新会長の新体制についてお伺いしたいと思います。理事には都並敏史さん、中田浩二さん、播戸竜二さん、石川直宏さんが入りました。

寿人 まずはしっかりと哲さんたちの思いをしっかり継承したいと思い、これまで理事を務めていた都並さんに残っていただきたいと考えました。いろいろな経験があって、本当に多角的にサッカー界を長く見てきている方で、いいお知恵を持っている方なので。新しい理事には選手会の経験がある人をベースにしながら、海外組で現在クラブスタッフの一員でもある中田浩二さんにお願いした形です。

柱谷 本当にミニマムだよね。僕も立ち上げのときは同じくらいの人数で始めて、少しずつ増やしていったかな。

佐藤 そうだったんですね。僕も最初は限られた人数でスタートして、議論を活発にしながらスピーディーに進めたいと考えました。まずは形をしっかり作って、ベクトルを合わせていきたいなと。

柱谷 あとは地域性や得意分野を考えて、必要に応じて増やしていけばいいと思うよ。

――ここからどんなことに取り組んでいこうと思っていますか?

佐藤 先ほど哲さんの話にもありましたが、やはり会員数を増やしていくことが当面の課題ですね。選手OBへの情報発信が重要になると思います。あとは今後のことを考えて、現役選手たちにもしっかりとJ-OBについて伝えていきたい。自分が引退したばかりであることも強みだと思いますし、今の選手会メンバーとも一緒に理事をやっていた経緯があるので、そこのリレーションもしっかり作り上げていきたいですね。

――具体的なアクションとしては?

寿人 今は1500人くらいが選手会に所属しています。彼らもいずれOBになるんですよね。プロ契約した選手全員がJ-OB会員の資格を持つようになるので、まずは現役の選手たちにJ-OB設立の経緯とか歴史、目的、思いをしっかり伝えていきたい。僕が選手会長のときにベースにしていたのは、サッカー界へどう貢献して、どう発展させていくかという考え方でした。選手としての権利を勝ち取るだけではなく、サッカー界にしっかり貢献していくことを基準に考えなければいけない。そこはJ-OBも同じだと思います。今度はJ-OBの新会長という立場でサッカー界に貢献して、未来につなげることが僕の使命だと思っています。

――今まで以上にオープンなコミュニケーションができそうですね。

寿人 僕が選手会長だったときに意識していたことに、選手たちへの情報提供がありました。Jリーグ理事会や労使協議会の内容、日本サッカー協会とのコミュニケーションもそうです。今回はJリーグでプレーする選手が引退後にキャリアを歩んでいく中で、日本サッカー界やJリーグに何を還元できるかという考え方を、現役のうちから選手に話をしていきたい。そこは選手会としっかり連携して進めていきたいですね。

柱谷 選手会との連携という意味では、J-OBの未来を考えて、選手会とのスライド登録も相談し続けてもらいたいな。

寿人 そうですね。そこも継続して話し合いたいと思っています。あとはやはり財源の部分ですよね。これからの動きをJリーグと一緒に作っていくのもひとつだと思っています。村井チェアマンと話していても、何かできそうな感覚はあったので、組織をしっかりと大きくために時間をかけていきたいです。

――OB会が大きくなった先には、どんな未来が見えていますか?

寿人 各地に選手OBがいて、彼らがJリーグでやってきたこと、その地域にとって本当に価値があると思うんです。子どもたちとっては大きなあこがれであり、目標になる。Jリーグでプレーしたことを、もっともっと価値のあるものにしていきたいと思っています。それこそ哲さんがもっとおじいちゃんになられたときに、Jリーグの選手OBであることがどれだけ素晴らしいかを全国各地で感じ取ってもらえるような、そういう組織にしていきたいです。

柱谷 そうなったらうれしいね。そのためにはやっぱりお金で動くのではなく、みんなで自発的にサッカー会への恩返しを目指す形でやっていかないとJ-OBは発展しない。ただ、それだけの存在になれる可能性は十分にあると思うんです。やはり日本サッカーが目指しているのは、ワールドカップ優勝。そのために子どもたちに何ができるか。そう考えて行動していくのがJ-OBのひとつの考え方であり、役目だなと。まず大事なのはサッカーの楽しさを広めて、子どもたちに夢を持ってもらうことだよね。クオリティーの高い子どもたちが出てくるようにするためにも、スタート地点を広くしておくことが必要だから。

――では、最後に柱谷前会長、寿人新会長から一言ずつお願いします。

柱谷 もう完璧です。何も言うことはないです。本当に今の思いでやっていってもらえれば間違いないと思う。それに今まで理事として頑張ってきたメンバーもJ-OBの一員だから、新体制をサポートしていきますよ。彼らにも「JリーグとJ-OBをサポートしていくことは変えないぞ」って話をしていますから。

寿人 哲さんが会長を退かれても、J-OBの先輩としていろいろ相談すると思うので、今後ともよろしくお願いします(笑)。今回、こういった形でJ-OBの一員になり、さらに新会長という大役を務めさせていただくことになったので、しっかりJ-OBの未来を作っていきたいですね。それがJリーグと日本サッカー界の発展につながっていくと信じているので、しっかり責任を持って進めていきたいと思っています。

柱谷 いつでも連絡して。相談料はビール一杯とかでいいから。でも、本当に寿人に任せて、そして引き受けてもらえて良かった。これで家に帰って、もう一杯いけますね(笑)。

日本サッカーの発展のためにOBの力を使わない手はない。各地でのOB戦やサッカー教室など、今後の活動に期待したい 【(C)J.LEAGUE】

佐藤寿人(さとう・ひさと) 1982年3月12日生まれ。埼玉県出身。ジェフユナイテッド市原(現千葉)のアカデミーで育ち、双子の兄・勇人とともに2000年にトップ昇格。その後、セレッソ大阪、ベガルタ仙台を経て05年から在籍したサンフレッチェ広島では圧倒的な決定力で3度のJ1制覇に貢献。12年にはJリーグMVP、ベストイレブン、得点王、フェアプレー個人賞の4冠に輝いた。17年から名古屋グランパスでプレーしたのち、19年に古巣千葉へ復帰。20年限りで現役を退いた。リーグ戦通算220ゴールは歴代最多。12年6月から2期4年にわたって第5代日本プロサッカー選手会会長を務め、引退後の今年6月からJリーグ選手OB会の第2代会長に就任した。J1リーグ戦通算404試合出場161得点。日本代表通算31試合4得点。

柱谷哲二(はしらたに・てつじ) 1964年7月15日生まれ。京都府出身。「闘将」と称されるほどのキャプテンシーを発揮し、日産自動車、ヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ)で主にセンターバックとして活躍するなど黎明期のJリーグをけん引。Jリーグベストイレブンに3度選出された。一方、日本代表でもキャプテンを任され、93年アメリカW杯予選では「ドーハの悲劇」を経験。98年限りで現役を退き、その後はコンサドーレ札幌や東京V、水戸ホーリーホックなどで指揮官を歴任した。96年に日本プロサッカー選手会を設立して初代会長に就任。さらに引退後の2009年にはJリーグ選手OB会を立ち上げ、選手OBの組織化による日本サッカー界への恩返しを打ち出した。J1リーグ戦通算183試合出場13得点。日本代表通算72試合6得点。

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著者プロフィール

2001年からJリーグやJクラブの各種オフィシャル案件で編集やライターを歴任。月刊誌『Jリーグサッカーキング』で編集長も務めた。関係各所に太いパイプを持ち、2017年から2023年までDAZNで各種コンテンツ制作に従事。現在はフリーランスとしてJリーグ、日本代表を継続取材している。

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