新たな道を開拓する3×3落合知也 「ロッドマンのように…」に込めた覚悟

平野貴也

5人制と3人制を経験しレベルアップ

5人制としては、Bリーグの越谷アルファーズに所属する。両方で違う役割を担うことで、「毎年バスケがうまくなっている」 【写真は共同】

 3人制バスケットボールは「3on3(スリーオンスリー)」の呼称で広く知られる米国ストリート発祥の遊びが原点だ。FIBAが2007年にルールや制度を整理して競技化。普及に努める中、日本は13年に代表チームを発足。落合は14年から代表に在籍し続けている。17年に東京五輪での初採用が決定すると、5人制のトップ選手も3人制に参加する流れが強まった。今大会に出場するメンバーは、ブラウン・アイラ(大阪エヴェッサ)、保岡龍斗(秋田ノーザンハピネッツ)もBリーガー。愛知・桜丘高出身の富永啓生(ネブラスカ大)は、18年ウインターカップで1試合平均39.8得点という驚異的な活躍を見せ、将来のNBA挑戦を見据えて卒業後は米国で活動している期待の若手だ。

――東京五輪に向け、5人制の選手が並行して取り組むなど3人制の環境は変わってきましたよね。

 ずっとストリートでやってきた選手が築き上げた歴史がありますが、5人制の選手も挑戦するようになったことは、日本の3×3にとって、すごく良いことです。トップクラスの選手や、将来有望な選手が関わるようにならないと、競技として成長しません。ストリートバスケからも日本代表が狙える、5人制バスケットからの転向でもチャンスがあるという、互いがリスペクトして融合する道筋を作っていきたいです。ただ、今後、日本代表が強くなるためには、今、5人制で活躍しているトップレベルの力を持つ選手の中から、3人制を優先する選手が出てこなければいけないと感じています。

――プロのBリーグに比べ、3人制はまだ収入面で不安がありますよね。

 3人制のプロ選手はほとんどいません。仕事をしていて毎日は練習できない状況です。3人制のプレー環境を良くしないと、5人制のクラブにとっても、選手にとっても魅力を持つことができません。3人制の収入が上がれば、Bリーグの選手が並行してトライしたり、転向したりする例も増えると思います。僕は、東京五輪を本気で目指す中で、Bリーグの優勝を目指す栃木ブレックスでプレーを続けるのは難しいと判断しました。そのとき、越谷アルファーズが拾ってくれて、3人制の夢を追いかけていいと言ってくれたのは、救いでした。自分の背中を見て、選手やクラブが、こういうケースもありかなと思ってくれれば良いと思っていますし、そのためにも結果を出したいです。

――時間の管理などが大変だと思いますが、掛け持ちのメリットは?

 僕は30代のベテランですけど、5人制と3人制の互いの良い特性を学べていて、毎年バスケがうまくなっている実感がありますし、周りからも言われます。5人制では泥臭い守備が求められ、レベルの高い外国籍選手とインサイドでやりあっています。一方、3人制では得点源で、司令塔。ピックアンドロールも使いますし、試合中に監督が指示をできないので、僕が中心になってコミュニケーションをとっているので、ゲームの組み立てを考える力がつきます。若い選手にも両方経験してほしいです。
 

プレーを通して伝える3人制の魅力

憧れの選手デニス・ロッドマンはプレー以外でも話題を集めたが、献身的なプレーもこなしたロッドマンのようにプレーで魅せて話題を集めるつもりだ 【写真は共同】

 3人制を経験することによってバスケ熱が再燃したという落合は、この種目が国内の多くの選手に新しい可能性を与えられるものだと知った。五輪は、5人制の部活やBリーグがバスケのすべてではないとアピールする場となる。見てもらえる一番のきっかけは、メダルという結果だが、落合は、憧れの選手から学んだショーマンシップも生かし、プレーやパフォーマンスから見る者にアピールしようと考えている。

――ところで、憧れの選手は、デニス・ロッドマン(マイケル・ジョーダンを擁してNBAを3連覇したシカゴ・ブルズのリバウンド王)ということですが、なぜですか?

 派手な色の髪、ピアスという風貌に、プライベートでは逮捕歴があるとか破天荒で話題性の多い選手でしたけど、コート内では相手のキーマンを献身的に守って、リバウンドを取って、攻撃は味方に任せてシュートはほとんど打たない。その独特の存在感が目について「このプレーで、こんなに存在感を出せるものなのか」と驚きました。僕が23歳のとき(2010年)に、ロッドマンが来日して5対5のストリートで直接マッチアップしました。仲間から「二度とない機会だから仕掛けろ」と言われて1オン1を仕掛けたら、プロレスのような派手なファウルを受けました(笑)。試合後の記者会見では、あれはエンターテインメントだよと言っていましたけど、本当にショーマンシップにあふれる人でした。一生の思い出です。

――3×3は、スピーディーで演出も華やか。一度見れば面白さも伝わると思います。そのためには、選手がショーマンシップを持って注目されることも重要かもしれません。

 日本代表として試合をするので重圧がありますが、その中でもプロフェッショナルな気持ちを忘れてはいけません。応援してくれるファン、これから競技を知るファンが画面の向こうにいます。思いっきり気持ちを表現してアピールしていかないと伝わりません。最近、5人制の日本代表で渡邉雄太選手がベンチでチームを盛り上げる姿がよく報じられていますけど、僕も力を入れているところです。「なんだ、こいつは? 面白いぞ。応援したくなるな」って、僕がロッドマンに思ったように、僕が思われないといけません。彼のような破天荒な言動ではなく(笑)、僕はプレーを通して伝えていきたいです。

――残念ながら東京五輪は無観客開催となりました。多くの人が映像を通して戦いぶりを知ることになります。最後に、このインタビューを読んだ読者へメッセージをお願いします。

 まず、コロナ禍での東京五輪開催は、非常に難しい決断だったと思っています。皆さんも、苦しい思いや我慢をしている中で、僕らはプレーをさせてもらうことになります。だから、プレーの一つひとつで、見ている人に何か影響や良いきっかけを与えていかないといけないと思っています。そこは何よりも意識してプレーしたいので、注目してほしいです。また、僕は、新種目の選手で、3×3という競技が生まれたときから競技者としてやってきたプライドと使命感を持って、絶対に金メダルを取ってやるという気持ちで挑みます。無観客開催ですけど、映像を通して良い結果とプレーを届けたいと思うので、ぜひ、応援のほど、よろしくお願いします!

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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