“大成功”韓国女子ゴルフ 日本のヒントは 「withコロナ」の大会運営に学ぶべきこと

キム・ミョンウ

選手が望むのはファンがいる中でのプレー

日本ツアーで活躍するペ・ソンウらも出場。選手は、やはりギャラリーからの声援・拍手はほしいようだ 【Getty Images】

 実際に選手たちはどう感じていたのだろうか。

 今大会に出場したイ・ボミは最終ラウンドに進めず、通算5オーバーの97位で大会を去ったが、「課題が見つかり収穫の多かった試合」と振り返った。

 特に感染防止の対策については、「無事に試合が開催されたことがうれしかったです。それにさまざまな場所で感染を防止する対策がとられていて、選手にとってはとてもありがたかったです」と大会運営に携わった人たちに感謝していた。

「毎日の検温や問診票の作成、消毒など細かく気を付けて行動しました。練習グリーンではみんながマスクを着けたり、キャディさんは手袋をしてティーやバンカーレーキを持たないといけなかったり……。互いに気を使う場面がありますが、メンタルに影響することはありませんでした」

 また、無観客だったことについては「やっぱりテンションが上がりませんでした。選手はギャラリーの拍手や声援を聞くと力になりますから、それが無かったのは残念でした。早く日本で試合がしたいです」と語り、ファンがいる中でのプレー再開を望んでいた。

 当初はイ・ボミも韓国での試合に出場するか迷っていた。だが、日本に戻れず、日本ツアーも中止が継続していることもあり、母国での試合出場を決めた。今後の予定は未定だが、今後も開催を予定している韓国ツアーへの出場が濃厚だ。

決勝ラウンドに進出できなかったアン・ソンジュだったが、「久しぶりに試合ができてうれしかった」と話す 【Getty Images】

 アン・ソンジュも第3ラウンドで(通算2オーバーの77位タイ)姿を消したが、韓国のメジャーのセッティングに苦しめられた。

 ただ、試合を終えた表情はすがすがしかった。17日に日本メディアの取材に応じ「久しぶりに試合ができてうれしかったです。大変な状況の中でも開催できてありがたかった」と笑顔を見せていた。感染防止策についても「大変でしたが、みんながしっかり守っていました」と話す。

 共に日本ツアーが早く開催されることを望んでいるが、中止が続く現状を見ていると心境的にはもどかしいに違いない。

 個人的には、日本ツアープレーヤーのイ・ボミ、アン・ソンジュ、ペ・ソンウの3人には、韓国での経験をぜひとも日本へフィードバックしてもらいたいと思う。

 日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の広報担当は「韓国の対応マニュアルの翻訳作業に入っています」と語っていたが、それと同時にイ・ボミらの意見を参考にしたうえで、ツアー開幕に前進してもらいたい。

“withコロナ時代”にシフト進む

 すでに韓国はコロナとの“共存”で生活をスタートさせ、経済も回し始めた。プロスポーツでも“with・コロナ時代”の視界が少しずつ見えつつある。ゴルフは屋外でやるスポーツなので、「無観客ならできるのでは?」という意見もよく聞く。もちろん日本の感染者数が減っているとはいえ、気の緩みは許されないし、ツアー開催には慎重にならざるを得ない分もある。

 ただ、韓国女子ツアーから一つ学ぶべき確かなことは、まず始めてみなければ、新型コロナへの対処法も修正点も何も分からないということだ。

2/2ページ

著者プロフィール

1977年、大阪府生まれの在日コリアン3世。フリーライター。朝鮮大学校外国語学部卒。朝鮮新報社記者時代に幅広い分野のスポーツ取材をこなす。その後、ライターとして活動を開始し、主に韓国、北朝鮮のサッカー、コリアン選手らを取材。南アフリカW杯前には平壌に入り、代表チームや関係者らを取材した。2011年からゴルフ取材も開始。イ・ボミら韓国人選手と親交があり、韓国ゴルフ事情に精通している。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント