あらためて聞く選手にとっての五輪1年延期 学生への影響は「本当にかわいそうで…」
あらためて聞く現役選手にとっての「五輪1年延期」
現役アスリートの高橋選手(写真奥)も、今はシャトルを使った練習ができていないという 【写真は共同】
杉本 チームには、日本代表二人と台湾代表一人のオリンピック選手(内定選手)がいるんですが、この状況についてはもう切り替えは早かったです。「仕方がない、じゃあ今どうしようか」という逆算をすぐにしています。
ただ年齢の事もあって、ギリギリの状況でやっている子もいます。そういう状況の選手の場合は「もう1年は長い」とも言っていますね。
DJケチャップ 1年延期については、いろいろな議論が交わされたと思います。これについては加奈ちゃん、落とし所は難しいですよね?
大山 そうですね。現状はスポーツをやれる状況ではないので、延期は仕方ないかなと思います。でもこの夏にピークを迎えられるようにコンディショニングをずっと続けてきた選手たちもいるので、アスリートたちの気持ちを考えるとなんとも言えないですね。
DJケチャップ 杉本さんは選手たちにどんなケアをしたり、言葉でアドバイスしたりされているんですか?
杉本 延期になってまだ間もないので、できる事と言ったらコミュニケーションを取る事が一番かなと思っています。オリンピックに出る選手かどうかは関係なく、選手ひとりひとりとコミュニケーションを取るようにしていますね。
DJケチャップ 高橋さんは現役ですが、今は練習ができない毎日ですか?
高橋 はい、そうですね。
DJケチャップ 体を動かせない事での不安はありますか?
高橋 太っちゃうなとは思うので、不安はあるにはあります。何日休んでも私は感覚が残る方なので比較的普通にできるんですが、とは言え、ここまで長く羽(シャトル)を打たなかったことはありません。(16年リオの)オリンピックが終わってからでも、休みは1週間ぐらいだったので、これから2週間や3週間、さらにもっと練習ができなくなるのは……。走ったり腹筋背筋をしたりと体作りをしていても、羽を打つ練習は家ではできません。これだけ長い期間打っていなかったら、「次に打つときどんな感じなんだろう」という不安はやっぱりありますね。
DJケチャップ ピークの持っていき方でいうと、高橋さんはピークの持っていき方については、あまり苦にはならない方ですか?
高橋 リオのときは、(五輪代表内定が決まる)半年ぐらい前には大体もういけるだろうというのがあったので、そこからピークに持っていくことができました。でも今は、代表選考レース自体が途中で終わってしまっています。それもこれからどうなるのかが分からないし、持っていき方が今は全然分からないです。
それに五輪が1年後に延期になりましたが、自分が1年後にどうなっているのかもまったく想像がつきません。それこそ、さっき杉本さんがおっしゃっていたように私も年齢ぎりぎりなんです(現在30歳)。バドミントン界では一番上の世代です。体力的にもどうなんだろうというのもあります。
DJケチャップ トップの選手のコンディションについて、自分が体感していないから分からないのですが、年齢的に1年違うというのは大きいものですか?
高橋 大きいと思います。
コロナ禍で学生大会も中止や延期
大山 1年経つと代表のメンバーも入れ替わりがあります。バレーは4年間をかけて監督にアピールして、五輪の最終メンバー12人に残るために必死にやっていきます。そんな中でさらに1年、代表に選ばれるためのアピールを続けなきゃいけないのは結構しんどいと思います。
DJケチャップ 柔道に関しては、代表内定者はそのまま変わらないという話もありましたよね?
杉本 まだ会議ができていないので、決定していないんですよ(取材日時点)。だから代表がどうなるかという不安もある中で、選手が今できることを必死でやっているって感じです。柔道も年齢的なもの……、対人競技なのでやっぱり感覚や反応が鈍ってきたりするのではという不安もありますね。
DJケチャップ 現役選手、指導者、それぞれの意見がありますよね。それにトップ選手だけじゃなくて、高校生がインターハイに向けてスタンバイしていたり、中学3年生が最後の大会に向けてコンディションをつくっていたりと、学生の選手たちもいっぱいいますもんね。
大山 そうなんです。オリンピックのことばかりが話題になるんですが、ジュニア選手たちのことも考えてあげないといけないですよね。特に最終学年の子たち、このまま試合をしないまま引退という事もありえる状況になってきてしまっていて(※)、そこはもう本当にかわいそうで、なんとかしてあげたいなって思いますね。
※編集部注:取材後の4月26日、全国高校総体(インターハイ)は史上初の中止が決定した。