JFA田嶋会長の妻・土肥美智子医師が語る新型コロナ感染者、濃厚接触者のリアル
濃厚接触者≠PCR検査対象。抗体検査による陰性判定
田嶋会長は約2週間余りの入院を経て回復。4月2日に退院したが、万が一を考えて自宅には戻っていない 【写真は共同】
ここは私も理解していなかったのですが、濃厚接触者は全員検査を受けるものだと思っていたんです。実際は、やはり軽症な方もいらっしゃるので、「まずは2週間待機をしてください」と。接触してすぐに発症するわけではなく、潜伏期があるというのも理由のひとつです。
潜伏期間はおよそ2週間と言われていますから、その間に症状があるかないかを確認してくださいということでした。もし症状があった場合には、すぐに検査することも視野に入りますが、濃厚接触者=PCR検査対象というわけではないそうです。これは3月17日時点でのルールで、状況に合わせて変わっていくと思われます。
――先生ご自身はそのまま症状もなく2週間を終えられて、自宅待機の最後に「抗体検査」を受けられたということですが。
抗体検査は保険適用にはなっていないのですが、知り合いの先生のクリニックでやっていただきました。イムノクロマト法という手法を使った検査なのですが、10マイクロリットルほどの血液で15分で結果が出ます。ウイルスに感染すると、体の中でそのウイルスに対する抗原抗体反応が起き、抗体ができるのですが、そこに着目した検査なんです。
コロナウイルスに感染した時に、コロナウイルスに対するIgM抗体というのとIgG抗体というのが時間差で出てきます。体にウイルスが入ってから一週間後くらいから、はじめにIgM抗体が出て、少し遅れて後からIgG抗体が出てくるんです。
そして、IgG抗体はその後、長期にわたって存在します。そのパターンによって感染のどのタイミングかが分かるんです。なので、あまり早くに検査すると両方とも出てこないので、結果が陰性になってしまいます。私の場合は感染者との濃厚接触から2週間置いているので、もしも感染していたなら抗体ができているはずです。
――その検査で両方の抗体が出なかったので、陰性という判断なのですね?
田嶋からは感染していないし、過去にもかかっていないということです。もちろん症状もなく2週間経っているので、感染しているとは考えづらいのですけど、やはり医療現場に戻るということで、念には念を入れ抗体検査をしました。
――この検査法はPCRが飽和状態でなかなか検査できないので、代わりに使ったらどうかと専門家が話題にしている検査法ですよね?
そうです。PCRはウイルスの遺伝子そのものを検出するのですが、抗体検査は感染後に出てくる抗体を検出します。PCRとはアプローチが違うものです。なので、もしも感染初期に出現するIgM抗体が出ていれば、あらためてPCR検査をしてあげないと確定診断には至らないとは思います。逆に感染していないことを確定するには有用だと思います。
――感染を心配する人の問い合わせが、保健所や医療機関に殺到してしまうので、この検査が一般化すれば対処できますね。
検査をしてくださった先生も、陰性証明が必要な職場の場合には有用だとおっしゃっていました。ただし、感染を疑われた時から、ちゃんと時間を置いて検査する必要があります。2週間の自主隔離後の職場復帰前に受けてもいいかもしれませんね。
(構成:スポーツ企画工房)
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国立スポーツ科学センター・スポーツメディカルセンター副主任研究員。医学博士。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。1991年、千葉大学医学部卒業。医師国家試験合格後からスポーツドクターを目指す。放射線診断学専門医として大学病院に勤務するかたわら、スポーツドクターとして主にサッカーの仕事に携わる。2006年より国立スポーツ科学センターに籍を置き、スポーツドクターに専念。トップアスリートの健康管理、臨床研究およびオリンピック、アジア大会、男女サッカーワールドカップ等に帯同。日本オリンピック委員会(JOC)医学サポート部会員、日本サッカー協会(JFA)「医学委員会」委員、アンチ・ドーピング部会長、アジアサッカー連盟(AFC)「医学委員会」副委員長、国際サッカー連盟(FIFA)「医学委員会」委員、国際オリンピック委員会(IOC)「スポーツと活動的社会委員会」委員ほか 。近著に『サッカー日本代表帯同ドクター』(時事通信社)。