手本は大迫傑 冷静さが五輪内定のカギ 野口みずきが語る名古屋ウィメンズ展望
記録を狙うならコンディションも重要
好記録を出すには天候も重要なポイントに。曇りで10度を超えないくらいが理想と野口さんは話す 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
ここを超えていかないといけないというタイムがはっきりしていますから、後ろで様子を見ながら走るのではなく、最初からどんどんペースを上げて速いペースになると思います。大阪国際が終わった瞬間に、選手もみんな(2時間21分47秒を切るという意識に)切り替えていると思います。タイムを意識してスタートから突っ込むという戦い方をしていくと、東京五輪だけでなく、次のパリ五輪にもつながっていく。松田選手の記録を切らないといけないというのが、すごく良いモチベーションになると思いますので、選手には期待しています。
――2時間21分47秒を切るためにポイントになることは?
コンディションが気になります。勝つだけならレースの流れに任せて走ればいいのですが、タイムを狙う上で気になるのは天候です。この時期特有の天気として、低気圧の影響で風が急に吹いたり、雨が降ったり、寒暖差が激しかったりするので、そうなるとしんどいなと思います。でも、コンディションに恵まれれば2時間21分47秒は、ちゃんと練習を積んできた選手にとっては突破できる可能性のあるタイムだと思います。曇っていて気温が10度を切るくらいだったら、マラソンにはとても良いコンディションです。そうなれば理想ですね。
――実力ある選手が競り合う中で、最後に勝つために必要なものとは?
ちょっとキツくなっていったん離れると、かなり精神的ダメージを受けて諦めてしまうことも多いのですが、先週の東京マラソンでの大迫(傑、ナイキ)選手のように、そうではなく落ち着いて、その時のペースに合わせて無理に速いペースに突っ込んでいかないという冷静さを持ち合わせることです。また、やってきたことに自信を持って、スタートラインに立った時に「どの人よりも私はやってきたんだ」という確かな自信を持って臨んでいるかということも大切です。
マラソンは体力や努力もそうですが、一番はやはりメンタルだと思います。トレーニングでは体とともにメンタルも同じように鍛えられていくんです。しっかりとした気持ちになっていくのがマラソンの面白いところだと思います。自信を力にして臨めているかどうかで(走りが)全然変わってくる。少しでも不安があると、ズルズルと落ちてしまう。そういったふうに(メンタルの)良い時、悪い時との差がマラソンに表れてきます。
――名古屋ウィメンズが男女を通じて東京五輪代表を決める最後のレースとなります。今後も見据えて、選手たちにはどんなレースを期待しますか?
タイムが一つ指標になっていて、すごく良いと思います。選手にはそこに向けて「もうどうなってもいいや」という気持ちで臨んでほしいですね。その経験がパリ五輪やその先の世界大会で、世界の選手と戦うことに大きくつながります。世界もどんどん記録を塗り替えていて、一生破られないだろうと思われていたポーラ・ラドクリフ選手(イギリス)の2時間15分25秒という記録も破られました(編注:2019年10月にケニアのブリジット・コスゲイがシカゴマラソンで2時間14分4秒の世界新をマーク)。その中で、日本は2時間19分台を出す選手が最近はいないという状況で、どんどん差が開いてしまっていますが、選手にはこうやって少しでもタイムを意識したレースをどんどんしてほしいなと思います。