五輪vs.世界vs.アジア女王三つ巴最終決戦 レスリング女子50kg級代表切符の行方は?

布施鋼治

入江vs.須崎、過去対戦は5勝3敗で須崎リード

世界選手権代表選考プレーオフで須崎を攻略した入江(上)、再びライバルを下すか 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 過去入江と須崎は8度対戦し、須崎が5勝3敗とリードしている。一昨年の全日本選抜選手権からは須崎が3連勝と入江を大きく突き放した。しかし7月の世界選手権代表決定プレーオフでは入江が須崎を見事に攻略。6−1で勝利を収め、初めて世界選手権出場の切符を手にした。

 3週間前の全日本選抜選手権の時と比べるとまるで別人のように躊躇なく須崎を攻める好戦的な入江の闘いぶりが印象に残った。いったいどんな立て直しを図ったかといえば、あやふやだったルールの理解やディフェンスをもう一度整理したことに尽きる。

 どんな状況になったら、アクティビティタイム(消極的な選手対して30秒以内にポイントをとらなければ、1点を失うというルール)になるのか。そういった部分をもう一度きちんと整理したのだ。

 代表合宿で入江と須崎は顔を合わせる機会も多く、手の内はお互い知り尽くしている。もし9度目の対戦が実現するならば、一瞬のスキが命取りになるような一戦になるか。

捲土重来を期する登坂、栄監督復帰が追い風となるか

リオ五輪チャンピオンの登坂もこのまま黙ってはいられないはずだ 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 捲土重来を期する登坂のやる気にも注目したい。リオデジャネイロで金メダルを獲得後、左足のケガに泣き、長いブランクを作らざるをえなかった。2018年になってから本格復帰を果たしたが、入江に2連敗中。須崎とは今年の全日本選抜選手権決勝で初対決を実現させ、0−10のテクニカルフォール負けという屈辱を味わった。

 正直、入江や須崎には一歩リードを許した感もある。とはいえ、練習の拠点としている至学館大レスリング部には恩師である栄和人氏が監督に復帰した。登坂をリオデジャネイロまで導いた恩師の復活はラストチャンスにかける彼女にどんな影響を及ぼすのか。

 須崎は第2シード、登坂は第3シードのため、お互い順調に勝ち進めば、準決勝で激突する可能性が高い。決勝ではその勝者と第1シードの入江の対決となるのか。注目の女子50kg級の準決勝は21日に、決勝は22日に開催される。

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著者プロフィール

1963年7月25日、札幌市出身。得意分野は格闘技。中でもアマチュアレスリング、ムエタイ(キックボクシング)、MMAへの造詣が深い。取材対象に対してはヒット・アンド・アウェイを繰り返す手法で、学生時代から執筆活動を続けている。Numberでは'90年代半ばからSCORE CARDを連載中。2008年7月に上梓した「吉田沙保里 119連勝の方程式」(新潮社)でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。他の著書に「東京12チャンネル運動部の情熱」(集英社)、「格闘技絶対王者列伝」(宝島社)などがある。

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