仙台に帰った由規が振り返るこの1年 “まさか”だった最終戦の移籍後初登板

家族に相談できなかった楽天復帰

設備や環境の違いに驚いたと話す由規 【写真:パ・リーグインサイト】

 メディアではたびたび「佐藤一家」の家族仲の良さが報じられるが、「(マスコミの)みなさんが取り上げてくださるから、そういう印象なだけで……」と本人は苦笑い。だが、あえて尋ねた。地元仙台に帰ってきたことで、家族の反応はどうだったか。

「去年スワローズを戦力外になってから、楽天イーグルスに入団するって決まるまでの期間……ちょうど今の時期(取材は10月下旬)ですよ。じゃあこれからどうしようという話を家族に相談したかったけど、できなかったんです」

 このような相談事はだいたい両親に言う前に兄弟に話をするのだという。由規のなかでは「これで終わり」とはできなかった。現役続行に対する確固たる決意。

「ヤクルトのときに復帰できていなかったら、そこまで野球に対して未練も何もなかったと思うんですけど、あそこまで待ってもらって(2016年に)復帰できたことによってさらに野球熱を与えてもらったんです。燃え尽きていない以上はまだ辞められないという気持ちが強かったから、親にそれ(現役続行)を伝えたときには心配はしていましたけど、僕自身がまだ野球をやりたいと言ったことに対してホッとしたらしくて」

 そして、古巣への感謝を口にした。

「退団するか引退するか、結構早い段階で僕は言われていました。みんながみんな引退試合できるわけではないので、そう言っていただいてありがたいし、ヤクルト球団には感謝しています」

 現役続行を決めたものの、どこの球団に入るのか、そもそもやれる環境かどうかもわからなかった不安な時期を経て「今こうして楽天イーグルスのユニフォームを着てるっていうのはありがたいこと」としみじみとした表情を見せる。

「今シーズンも1試合しか投げていないので全然満足もしていないですが、去年の今頃投げてなかったことを考えたら、やっぱりあのとき辞めなくてよかったなっていう気持ちです。ましてや地元に球団があって、そこでプレーできているというのはなかなかないこと。両親や家族に対して恩返しというか親孝行がまだまだできていないので、できたらなという思いはあります」

 弟の貴規さん(元ヤクルト外野手)が、SNSで由規の一軍復帰登板に立ち会えた喜びを投稿していたが、家族が由規を応援する熱量は、彼が東京にいたときよりも増しているようだ。

「球場が近いので、二軍の試合でも次いつ投げるんだっていうのはすごい聞かれます(苦笑)。二軍の試合も見に来てましたね。でも毎回来られるのは……だからもう登板予定を言わないようにしていました(笑)。さすがに一軍登板のときは言いましたけど。(節目には家族の支えがあるように見えるが)自分たちは特にそこまで意識はないですね。でも、せっかく地元でやれるというのは一つの特権なのかなと思いますし、一軍で投げないことには意味がないので。プロ野球選手である以上は一軍で投げるところを見せたいです」

30歳。まだまだ落ちぶれていない

楽天生命パーク宮城での秋季練習で遠投する由規 【写真:パ・リーグインサイト】

 12月には30歳を迎え、来季は13年目のシーズンとなる。ケガが癒えた今「ケガの悩みではなく、技術面で悩めるのがうれしい」と、心身ともに充実したオフの様子がうかがえる。

「みんな言いますよね、30になったら体に気を使わないといけないって。まずは自分の体について知らないといけなくて、まだまだ鍛えなければいけないところもたくさんあるし、球種だけではなくて、いろいろなトレーニングにもチャレンジしたい。チームには若い子が多いので刺激を受けることはたくさんあるし、負けられないという気持ちもまだまだあります。こうやってケガから復帰したからには、みんなと同じ目線でというか、フラットな状態で勝負ができるわけなので」

 もちろん加齢によって練習での体への負荷は変わるし、ひとまわり年の違う若手と同じメニューをこなすことは、われわれの想像以上にきついだろう。だが、“まだまだ自分はやれる”という気力が、由規を支える。

「まだまだ落ちぶれていないというか。新しいことにチャレンジもしますし、今持っている力よりも、もっともっとやれる自信はあります。だからこの秋季練習と、キャンプ前のオフが一番大事。そこで課題を持って大事に過ごしていけたらなと思います。去年6月にケガしてから、投げ込む体力が衰えてると思うので投げるのは止めずに、自主トレをやっていきたいと思います」


(敬称省略、取材・文:パ・リーグインサイト編集部 海老原悠)

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