南アの優勝トライは日本へのメッセージ 元日本代表・藤井淳がW杯決勝を解説
スキルの高さが光ったマピンピのトライ
キックのキャッチでも活躍していたWTBマピンピがこの試合最初のトライを奪った 【写真:ロイター/アフロ】
後半26分のマピンピ選手のトライは、今大会の日本代表のトライを見ているようでした。ラックからショートサイド(狭いエリア)に速いパスをつないで、ライン際を抜けたマピンピ選手がスペースのあった裏にキックしてCTBアム選手がキャッチして、再びマピンピ選手につないでトライ。
イングランドの意識がグラウンドの広いエリアに向いたところで、逆方向を選択したSHデクラーク選手の判断と、それに反応したHOマークス選手たちのスキルの高さが光りました。
身長170センチのコルビが見せた個人技
鋭いステップでイングランドDFを抜き去った南アフリカWTBコルビ 【写真:ロイター/アフロ】
2本目のトライはコルビ選手の個人技によるものでした。圧倒的なスピードとキレのあるステップはお見事。ディフェンスの選手の方が多く、正面にいる選手がライン際を、戻ってくる選手は内側をケアしていたのですが、その間の小さなスペースを一瞬で突破していきました。
今回のワールドカップを見て、ラグビーを始めることに興味を持ちながらも「体が小さいから難しいかも……」と考えているお子さんも多いと思います。その中で、身長170センチのコルビ選手が世界一を決定づけるトライを奪う――これからラグビーを始めるお子さんにとっても、小柄であることに悩んでいる選手にとっても勇気を与えるトライだったのではないかと思います。
今大会はいろいろなことが起こりました。これまでラグビーに興味がなかった方々も、新たに感じるものがあったのではないかと思います。そんな大会の最後に、コルビ選手が鮮やかなトライを決めたというのは、日本ラグビーにとっても大きなメッセージだったのではないかと感じています。
(取材・文:安実剛士/スポーツナビ)
藤井淳/JunFujii
東芝ブレイブルーパスで活躍した藤井淳氏。2012年にはエディー・ジョーンズHCにより日本代表に選ばれ、6キャップを獲得した 【写真:アフロスポーツ】
西陵商高時代に全国大会に出場、明治大では抜群のスピードを生かして活躍した。東芝ブレイブルーパスでは強気のリードでFWをまとめ、ディフェンス面も向上。2012年にはエディー・ジョーンズHCにより日本代表に選ばれ、6キャップを獲得した。2019年に現役引退。