アイルランド代表、強さの理由に迫る 日本と対戦するラグビーW杯の優勝候補

竹鼻智

協会がライバルクラブへの移籍を“推奨”

出場機会を増やすための移籍も経験したジョーイ・カーベリー 【写真:ロイター/アフロ】

 さまざまな意味で、アイルランドラグビーの仕組みを象徴するのがジョーイ・カーベリーという23歳の若手選手だ。20歳以下代表経験もあり、現在34歳のセクストンの後継者として、アイルランドラグビー界の期待と注目を集めている。昨年までレンスターに所属し、セクストンの欠場時はSOで、そうでないときはFB(フルバック)で出場していた。

 しかし、代表チームはカーベリーのクラブでのSOとしての出場時間の短さを懸念。決して強制したわけではないが、ライバルクラブであるマンスターへの移籍を“推奨”し、昨シーズンにカーベリーはマンスターへ移籍し、シーズンを通してSOのスタメンとして活躍した。

 レンスターとマンスターはともに欧州クラブ選手権での優勝経験も持つ強豪クラブで、毎シーズン、きん差の熱い戦いを繰り返す、強烈なライバル関係にある。このため、カーベリーの移籍は両クラブのファンの間で何かと議論を巻き起こしたが、大きな問題になるには至っていない。なぜなら、これはアイルランド代表の未来を考えれば、正しい決断だからである。

 ここ2年ほどで、セクストンの代役としての地位を確立したカーベリーだが、大会前のウォームアップゲームで足首を負傷。日本へ来てからフルで練習参加できるまで回復しているようだが、28日の日本戦ではベンチスタートとなる。試合展開によりタイミングは変わってくるだろうが、途中出場することは間違いないと見られている。

シュミット監督の下、今大会に懸けるアイルランド

ジョー・シュミット監督にとっても勝負のワールドカップとなる 【写真:ロイター/アフロ】

 欧州ラグビーの最高峰であるシックスネーションズ(欧州6カ国対抗)での全勝優勝経験があり、世界最強軍団と言われているニュージーランド代表を2016年以降に2度倒した実績を持つアイルランド代表。しかし、ワールドカップではこれまでベスト8が最高の戦績で、2015年大会では準々決勝でアルゼンチン代表に20対43と大敗を喫し、大会を去っている。

 ジョー・シュミット監督は、翌2016年に2017年以降の契約延長の是非を決めるオプションを持っており、ここで母国ニュージーランドへ帰るのが規定路線とされていた。しかし、2015年大会での終わり方があまりにも悔しかったため、2019年までの契約延長を決意。今大会へ懸ける意気込みは、並々ならぬものがある。

「アイリッシュ・インディペンデント」紙の記者、ロリー・オコノール氏によると、「アイルランドは、これまでのワールドカップでは、主力選手の負傷や突然の不調など、不運とも言えるような理由で、実力を発揮できなかった。今回のチームは、こうした過去の失敗の経験なども十分に考慮に入れて準備をしてきたチーム。今回は取りこぼしませんよ」と期待を述べてくれた。

 初戦で強敵スコットランド代表を倒し、A組首位通過へ向けて突き進むアイルランド代表。前回大会で3勝を挙げた実績から、もはや誰も日本代表を侮ったりはしない。堂々の優勝候補の一角に位置するアイルランド代表を相手に、我らが日本代表はどんな戦いを見せてくれるだろうか。試合は28日16時15分、小笠山総合運動公園エコパスタジアムでキックオフを迎える。

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著者プロフィール

1975年東京都生まれ。明治大学経営学部卒、Nyenrode Business Universiteit(オランダ)経営学修士。2006年より英国ロンドンに在住し、金融機関でのITプロジェクトマネジメントとジャーナリストの、フリーランス二足の草鞋を履き、「Number Sports Graphics」(文藝春秋社)、「ラグビーマガジン」(ベースボールマガジン社)、「週刊エコノミスト」(毎日新聞社)へのコラム執筆など、英国・欧州の情報を日本へ向けて発信。

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