連載:指導者として、レジェンドたちが思うこと

ロッテ・今岡二軍監督が語る「育成論」 自らに課す“1割ルール”とは?

ベースボール・タイムズ
 今岡真訪は44歳になっていた。PL学園高から東洋大を経てドラフト1位で阪神に入団し、2003年、05年の阪神のリーグ優勝に大きく貢献した。その後は故障と不振にあえいだが、苦悩も自らの経験とし、さらに引退後には解説者を3年、阪神の二軍コーチを2年務めて見識を広げた。

 そして託された千葉ロッテ二軍監督の要職。指導者として新たな“自分像”を構築しながら迎えた2度目の夏。長引く梅雨の合間の7月、埼玉県にあるロッテの二軍練習場を訪ねた。

「まだまだ子供」の若手選手に対して

今岡真訪二軍監督に指導者としての考え方、選手との接し方など話を聞いた 【花田裕次郎/ベースボール・タイムズ】

――ロッテの二軍監督として2年目のシーズンを迎えました。現役を引退してから解説者や二軍コーチなどを務めましたが、二軍監督というのはこれまでとはまた違う役割になるかと思います。日々、どのようなことを意識してグラウンドに立っているのでしょうか?

 よく聞かれますよ。「二軍ってどうなんですか?」って。その時にいつも答えるのですが、僕が一番に意識していることは、特に高校からプロに入ってきた選手というのは、まだ18歳、19歳だということです。見た目がゴツくても、まだまだ発展途上で体は出来上がっていないですし、プロの環境にも慣れていない。そして何より、物の考え方がまだまだ子供だということを忘れてはいけません。

 そういう中で、指導する側とすればどうしても「バッティングはこうだぞ」、「ピッチングはこうだぞ」と言いたくなるんですけど、そういうことを言う前に、まずは一人のしっかりとした大人になること。まずはそこからです。技術的な指導はその後のことだと思っています。

――グラウンドの中だけではなく、グラウンド外のこと、普段の生活がまずは大切になると?

 そうですね。それこそ、「ちゃんとあいさつをする」、「返事をする」、「時間を守る」、「しっかりとご飯を食べる」というような基本的なことです。そう聞くと、「プロやのに何を言ってるんや」って思うでしょ? でもホンマなんです。まずはそういう部分が大事なんです。大学、社会人を経てプロに入ってきた選手は、そういうことを十分に学んでいるので大丈夫なんですけど、高校を卒業したばかりの選手はまだまだ未熟です。

 まずは大人として、社会人として、普段の生活の基本を身に付けないといけない。どれだけ素晴らしい素質を持っている将来有望な選手でも、まだ大人になりきれていない部分を無視しては指導できないということですね。

すぐに終わった井口監督との「答え合わせ」

アトランタ五輪で日本代表として共に戦った井口監督と(写真7番)と今岡監督(同4番)。 【写真:ロイター/アフロ】

――チームを率いる井口資仁監督とは同い年で、大学時代から切磋琢磨(せっさたくま)してきた仲です。ロッテの二軍監督に就任するにあたっても、井口監督の存在が大きかったと聞きますが?

 はい。今の僕の二軍監督という立場は、井口監督がいてこそあるもの。同い年と言っても、プロ野球選手としての実績、経験も井口監督の方がはるかに上です。

 だけど、目指すものは同じ。他の人がどうこうという訳じゃなく、井口監督は僕の性格も、僕が何を望んでいるかも分かってくれているし、僕も井口監督の考えが分かる。その部分の意思確認というのは、就任する前のキャンプの時に全部答え合わせをして、すぐに終わった。だから、すごくやりやすい。

――その「答え合わせ」の部分で初めに一致した部分はどのようなことだったのですか?

 簡単に話すと、「教育する」ということですね。ドラフト1位、ドラフト2位で指名された選手というのは、周りから「いいねぇ」、「すごいねぇ」と言われながらプロに入ってくる。でもわれわれは、そういうことを絶対に言わないという部分です。

 他にもいろいろとありますが、やはりそういう部分が大切だという話になりました。いくら甲子園のスターであっても、いくら体が大きくても、年齢的にはまだ子供だし、右も左も知らない人間を扱っているというところからスタートしようということですね。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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