連載:高校野球地方大会・全49地区展望

最激戦区・神奈川を勝ち抜くのは? 地方大会の有力校を分析、関東・東京編

松倉雄太

センバツ出場の桐蔭学園は夏ノーシード。だが、プロ注目の遊撃手・森敬斗を中心に力はある 【写真は共同】

 高校野球ライターの松倉雄太さんに全地区の戦力を分析してもらい、今夏の有力校を占っていく連載は第5回。関東・東京地区は6日の茨城・東西東京地区などを皮切りに、各地で開幕する。激戦区・神奈川など実力校がひしめくエリアが多く、どこが勝ち抜くか目を離せない展開になりそうだ。

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茨城

◎常総学院
◯水戸商
△石岡一


 強力打線の常総学院が一歩リード。主砲の菊田拡和(3年)は高校通算55本塁打を放つ、プロ注目のスラッガーだ。菊地壮太、鈴木琉晟(ともに3年)ら前後にも長打力のある打者がそろっている。昨秋の関東大会では桐蔭学園との初戦で逆転サヨナラ満塁本塁打を浴び、センバツ出場の道が絶たれた悔しさを夏に晴らす。

 水戸商のエース・小林嵩(3年)は166センチと小柄ながら投げっぷりがよく、140キロを超える直球を投げ込む。打者としても4番を務め、投打で19年ぶりの夏へ導けるか。

 センバツ出場の石岡一は関東屈指の右腕・岩本大地(3年)がどこまで復調してくるか。2年生右腕・小松崎駿との二枚看板で春夏連続出場を目指す。

 秋準優勝、春優勝と茨城大会で結果を残している藤代も小島拓也、中山航(ともに3年)と二枚看板が安定している。常総学院と同じブロックに入った明秀日立、藤代と同じブロックの霞ケ浦などがダークホースになってきそうだ。

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栃木

◎佐野日大
◯作新学院
△栃木工

 
 秋春連覇の佐野日大と9連覇を目指す作新学院が同じブロックに入った。勝ち上がれば準々決勝で対戦する。

 佐野日大のエース・松倉亮太は制球力に長けた好右腕。春先に手に打球を受けて負傷し、県大会、関東大会とベンチに入れなかったが、代わってマウンドを任された左腕・松本翔大が成長した。二枚看板を確立し、9年ぶりの夏を手繰り寄せる。

 作新学院は日本ハムでプレーする石井一成の弟・石井巧(3年)が主将を務める。兄と同じ遊撃手を務め、攻守に兄譲りのセンスを感じさせる選手だ。昨夏は1番・右翼手で甲子園に出場した2年生の横山陽樹は、3月に大船渡の佐々木朗希(3年)から三塁打を放った。初戦で難敵の白鷗大足利と対戦する可能性があり、ここでどんな戦いをするかが大会全体のポイントになるかもしれない。

 反対側のブロックでは春準優勝の栃木工が面白い。春の県大会で作新学院、国学院栃木などの私立勢を次々と破った。青藍泰斗は中日の石川翔を兄に持つ、外野手の石川慧亮が2年生ながら強打でチームを引っ張る。国学院栃木の2年生エース・神山陽登、文星芸大付の饗庭陽生(3年)らも栃木屈指の好投手だ。

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群馬

◎前橋育英
◯健大高崎
△利根商


 4連覇を目指す前橋育英が秋春と群馬大会を制し、今年も本命となりそうだ。エースの梶塚彪雅(3年)は140キロを超える直球が武器の本格派で、制球力もある。打線は丸山大河、剣持京右(ともに3年)の甲子園経験者が引っ張る。昨秋の関東では準々決勝で敗れ、あと一歩でセンバツ出場に届かなかった。悔しさを夏にぶつける。

 ライバル・健大高崎は田口夢人、柳澤光星(ともに3年)らが強力打線を形成。投手陣は今年も継投で臨みそう。3年連続で決勝戦で敗れている前橋育英を、今年こそ倒せるか。両者が勝ち上がれば、今年もこの二校が激突するのは決勝となる。

 ダークホースは元桐生第一の福田治男監督が就任した利根商。主将の高橋晃生(3年)は開会式での選手宣誓を引き当て、勢いをつけて試合に臨む。

 前橋工の黒澤颯斗は最速142キロの好右腕。左腕では前橋商の井上温大(3年)に注目したい。

埼玉

◎春日部共栄
◯花咲徳栄
△浦和学院


 春のセンバツで1回戦敗退の悔しさを味わった春日部共栄はエース・村田賢一(3年)が成長。春の県大会ではノーヒットノーランを達成した。打者としても4番を務める、投打の大黒柱だ。打線は黒川渓と木村大悟(ともに3年)の俊足1、2番コンビでかき回す。6月に本多利治監督が復帰し、5年ぶりとなる夏の甲子園へ視界良好だ。

 5年連続の夏を狙う花咲徳栄はCシード。高校日本代表候補研修合宿に参加したショート・韮澤雄也(3年)、2年生スラッガーの井上朋也ら強力打線が看板だ。

 昨夏の南埼玉代表・浦和学院は34年ぶりのノーシード。永島竜弥(3年)、美又王寿(2年)など昨夏の甲子園を経験した投手陣がどこまで引っ張れるか。勝ち上がれば4回戦でAシードの浦和実と対戦する可能性があり、大会を占う一戦になるかもしれない。

 山村学園は春3位から関東大会ベスト4と実績を積んだ。習志野をコールドで破った打線のつながりを夏も見せたい。

 同じく春の関東大会に出場した東農大三の145キロ右腕・飯島一徹(3年)のピッチングにも注目。好左腕・米山魁乙(3年)のいる昌平に加え、埼玉栄や聖望学園なども侮れない。

千葉

◎習志野
◯木更津総合
△専大松戸


 センバツで3度逆転勝ちし、準優勝した習志野が本命。エース・飯塚脩人(3年)を中心に、左の山内翔太(2年)、アンダースローの岩沢知幸(3年)など豊富な投手陣を擁し、継投を駆使する。野手も角田勇斗(2年)、根本翔吾(3年)とセンターラインの堅守が光る。ベンチの最前列に立って大声でチームを盛り立てる記録員・小杉秀次朗(3年)の存在も欠かせない。

 4年連続出場を狙う木更津総合は2年生右腕・篠木健太郎が成長。昨夏の甲子園で149キロをマークした根本太一(3年)との二枚看板を形成する。

 専大松戸は春の関東大会でベスト4進出が自信になった。サイドスロー右腕・横山陸人(3年)は最速145キロの直球が武器。同じく右腕の杉田智也(3年)など他の投手陣も充実している。

 秋春ベスト4の銚子商は14年ぶりの夏を狙う。成東、千葉商、我孫子など古豪がそろったゾーンを勝ち抜けるか。中央学院はエース畔柳舜(3年)を中心に2年連続出場を狙う。

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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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