サッカー日本代表のデータから読み取るスパイク事情 スパイクマイスター Koheiが指南 後悔しないスパイク選び
【写真:アフロ】
第1回(全4回連載)は、サッカー日本代表選手の着用データから読み取れる、現在のスパイク事情についてうかがいました。
2019アジアカップ日本代表メンバー
【参照:Kohei's BLOG】
U-20W杯日本代表メンバー
【参照:Kohei's BLOG】
2018年ロシアW杯ではナイキのスパイクが躍動
W杯商戦に向けて、ナイキ、アディダス、プーマの3大ブランドのすべてが新スパイクを発表し、W杯本大会では、その3メーカーのスパイクが全出場選手の9割を占めていました。そんな中でもナイキは圧勝でしたね。選手の着用率はもちろん、MVPのルカ・モドリッチ選手(クロアチア)、ベストゴールキーパーのティボー・クルトワ選手(ベルギー)、最優秀若手選手のキリアン・ムバッペ選手(フランス)の3選手がナイキを履いていました。優勝したフランス代表もナイキのユニフォームでしたし、得点王のハリー・ケイン選手(イングランド代表)もナイキのスパイクを履いていました。
ロシアW杯では、MVPのルカ・モドリッチら世界のスターたちがナイキを履いて活躍した 【写真:ロイター/アフロ】
代表クラスの選手はメーカーと4年契約を結ぶことが多く、今年はW杯の翌年ということで、メーカー間での選手の移籍が盛んな印象ですね。2014年のブラジルW杯日本代表メンバーでは、ナイキ、アディダスとも7人できっ抗していましたが、昨年のロシアW杯でナイキが勢力を伸ばし、来年にかけてはプーマがかなり数を伸ばしてくるような気がします。現に日本代表では堂安律選手(フローニンゲン)、遠藤航選手(シントトロイデン)が今年からプーマと契約しました。今後もきっと勢力を伸ばしてくると予想しています。
――ナイキがここまで多くの選手に支持されている要因は?
実際に、天然芝用のモデルに関しては、性能とコンセプトがいいのは間違いありません。例えば、ナイキの「マーキュリアル」というスパイクはスピードに特化したモデルで、日本代表では酒井宏樹選手(マルセイユ)や長友佑都選手(ガラタサライ)、室屋成選手(FC東京)といった両サイドバックの選手が履いています。サイドを激しく上下動する時に、よりスピードが出せるように、ソールに反発を高める素材を使っていて、軽さも抜群。地面を蹴り出すときにソールが屈曲してからまっすぐな状態に戻るときの反発力がより力強い加速・蹴り出しをアシストしてくれて、スピードを引き出してくれます。
長友佑都ら日本代表のサイドバックの選手たちがナイキの「マーキュリアル」を愛用 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】
ナイキのスパイクは「マーキュリアル」、「ティエンポ」、「ファントムビジョン」、「ファントムヴェノム」の4シリーズに分類されます。「マーキュリアル」はスピード、「ティエンポ」はフィット&ボールタッチ、「ファントムビジョン」がボールコントロール、「ファントムヴェノム」は攻撃的&シュート。4つのシリーズのコンセプトが分かりやすいのが特徴です。
ナイキ マーキュリアル 【画像提供:kohei】
カッコいいデザイン、有名選手が履いている。だけども…
アディダスは「エックス」はスピード、「ネメシス」はアジリティ、「プレデター」がボールコントロール、「コパ」がフィット&ボールタッチといった感じの4シリーズですね。2015年に一度、シリーズを2つに絞る大変革を行って「プレデター」も一時期なくなっていた時代もあったのですが、そこから徐々にシリーズ構成を再構築して現在の4シリーズ展開になりました。
――購入の際は自分のプレースタイルを考えて、比較検討するのがよさそうですね。
そうですね。スピードがストロングポイントのプレーヤーなら、ナイキの「マーキュリアル」とアディダスの「エックス」を比べてみたり、ボールコントロールを大事にしたいプレーヤーならアディダスの「プレデター」やナイキの「ファントムビジョン」を店頭で履き比べて選ぶのもいいと思います。
adidas X18 【画像提供:kohei】
プーマは「プーマワン」と「フューチャー」の2つのシリーズをメインに展開しています。プーマも以前まではスピード、ボールタッチ、パワーという3つの柱で展開していましたが、2017年ごろからこの2つのシリーズに集約されました。「プーマワン」は、サッカースパイクに必要なものをすべて追求した“万能型”スパイクを目指しているシリーズ。「フューチャー」は斬新性や、シューレースの結び方を自由にできるといった“革新的”スパイクを追求しているシリーズです。
アンブロのスパイクの良さは機能性やコストパフォーマンスですね。軽くて、フィット感も良く、部活生向けの中価格帯モデルはコストパフォーマンスも非常にいいです。サッカーショップの店員さんからの評価も高いのですが、店頭では、お客さんは先にナイキ、アディダス、プーマなどのスパイクを見てしまう。なかなかアンブロまでたどりつかないのが現状ですね。でも、アンブロは本当にいいスパイクを作っています。最近では、夏場に人工芝が熱くなることで、スパイクの中が熱せられるのを防止するために、中底に「GAINA」という特殊セラミック塗材を使った新しいテクノロジーを取り入れています。柴崎選手もスパイクとしての質の高さを認めて、納得してアンブロと契約した部分もあると思いますので、今後も引き続き期待できるメーカーだと思います。
柴崎岳は機能性が高いアンブロを着用 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】
Jリーグでは履いている選手が結構多いのですが、代表クラスになると3大ブランドに履き替えてしまう現状があります。巨大資本が相手ということで、なかなか難しいところではありますね。契約金のケタが違ってきますし、3大ブランドは露出面や待遇もいい。ビジネス面の実情が代表選手のレベルになってくると出てきます。
――選手が慣れ親しんだスパイクを履き替えるのはリスクがあるのでは?
プロ選手に話を聞くと、彼らは本当に自分自身の技術が高いので、スパイクに頼っていないというか、自分の施術力や適応力の高さでカバーできちゃうんです。どのスパイクを履いても選手の技術で対応してしまう。3大ブランドの場合は2カ月おきぐらいにスパイクのカラーが新しくなって、すぐに新品スパイクに履き替えないといけません。それを何シーズンも続けていたら足自体の適応力が高まってきたり、そういうのに慣れてしまうと、契約メーカーが変わったりスパイクのモデルが変わったりしても比較的スムーズに履きこなしてしまうことが多いです。
あとはプロ選手の場合、モデルが新しくなったりしてスパイクに違和感が出てきたとしても、スパイクを特注して足に合わせてもらったり、所属チームのホペイロさんが微調整してくれるのもプロ選手ならではの特権ですね。なので、プロの選手たちが履いているスパイクと同じものがサッカーショップに置いてありますが、それが一般のプレーヤーの足にも必ずぴったりと合うわけではありません。
――でも実際、憧れの選手が履いているスパイクを買いたい人も多いですよね。
そうなんですよ。僕も中学生の頃はデルピエロ(イタリア)やベッカム(イングランド)に憧れて、デルピエロモデルのスパイクやベッカムモデルのスパイクを買ったりしていました。やっぱりそういう欲や思いが生まれてくるのは必然で、憧れの選手が履いているスパイクと同じモデルを選ぶのもスパイクの選び方のひとつではあります。ただし、その選び方だと自分の足に合うかどうかは二の次になってしまっているので、そこが難しいところです。
――日本代表やW杯でのシェアは、必ずしもアマチュアには当てはまらないと?
そうですね。あくまでも“データ”というだけです。日本代表でナイキが多いから、アディダスが多いからというのは一つの指標。そういったデータも多少は参考にしながらも自分の足型と向き合いながらスパイクを選んでいくのが大事になると思います。やっぱり人の足の形や指の長さ、甲の高さ、かかとの形状などの足型は千差万別ですから。
Kohei プロフィール
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