他競技に学んだ“魅せ方”をボッチャでも 東京で目指す競技運営のベストな形とは
ボッチャが行われる有明体操競技場の工事は順調に進んでいる。3月には日本代表選手が視察に訪れた 【写真は共同】
4月13日で東京パラリンピック開幕まで500日の節目を迎えた。ボッチャを担当する齋藤保将さんにとって、これまでの準備作業は、選手が最高のパフォーマンスを発揮できる“環境づくり”を突き詰めるものだったという。齋藤さんの手記から、ミリ単位で争うボッチャならではの競技運営の奥深さが見えてきた。
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各国視察団が床の状態を気にする理由
16年7月のスポーツマネジャー就任からこれまでの準備期間を振り返ると、苦労したことと言えば、競技日程の調整や競技環境の整備でしょうか。実はボッチャの競技運営には厳密な基準やマニュアルがないのですが、その中でもいかに選手がハイパフォーマンスを発揮できる環境をつくれるかが大事だと思っています。
ボッチャは基本的に、選手自身がボールやランプと呼ばれる勾配具などの用具を用意する競技なので、競技用具の手配や調整も大事なのですが、どんな床材で、どんなレイアウトでコートを並べるかという“環境づくり”のウエイトも大きくなります。
特に自分でボールを投げることのできないBC3という選手のクラスでは、ランプを使用してボールを転がすのですが、空中戦がない分、床の状況はダイレクトに影響します。些細(ささい)なひずみが生じていたり、場所によって状態が異なったりしているのは好ましくありません。各国から訪れる視察団の方々からも、「試合をするコートとウオームアップコートの環境は同じか?」という質問をよく受けます。ボールの転がり方を入念にチェックしたい選手にとって床の状態は、それほど重要なポイントになるのです。
ランプを使うBC3クラスでは、床の状況が競技に与える影響は大きい 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】
最近の国際大会で、高温多湿のために各国選手が持参したボールが膨張してしまい、用具検査を通過できない事態が頻発したと聞いています。ミリ単位の細かいところまでこだわり抜くボッチャだからこそ、選手が快適に競技できるように気を配る必要があります。
東京以後につながる競技運営の形づくりを
ボッチャは粛々と試合が進行する競技なので、これまで試合中は静かにして選手の集中を促すものだと思っていたのですが、体操で試技中に音楽が流れる中、選手が研ぎ澄まされた演技をしている光景を目にし、これはボッチャの大会でも取り入れてみようと、実際に国内大会で使用するようになっています。
競技の演出で「他競技から初めて学べることはたくさんある」と齋藤さん 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】
私は00年シドニー大会と16年リオ大会は現地に行っています。12年のロンドン大会は現地に行ってはいませんが、日本代表選手団として参加したスタッフや関係者から情報収集しています。ただ、過去の大会で参考にできるところは積極的に取り入れたいと考えている一方で、実況アナウンスを入れたり、間近で競技を楽しめる観客席をつくったりしている日本の大会運営の良さもあると感じています。
願わくは、今準備をしている東京2020パラリンピックで、今後の国際大会やパラリンピックで活用してもらえるようなひとつの形をつくりたいと思っています。そのためにも引き続き、いいと思ったものは是が非でも取り入れてもらえるよう積極的に働きかけていきたいです。
プロフィール
埼玉県在住。大学卒業後、当時勤めていた特別支援学校で、授業で取り組んでいたボッチャを知る。以後徐々に本格的に競技に関わるようになり、1999年には日本選手団コーチとして国際大会に初帯同する。2007年には埼玉県障害者ボッチャ協会(現埼玉県ボッチャ協会)の設立に関わり、14年からは日本ボッチャ協会理事として大会運営と審判統括を担当。16年7月より東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会のボッチャ競技スポーツマネジャーに就任する。
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